映画の作り方を変えるのはiPad Pro? シン・ゴジラで使われていたアプリがすごかった
「2014年あたりから映画作りはかなり変わりましたね」
撮影ではiPhoneやiPad Pro、GoProが使われるなど、撮り方まで新しい「シン・ゴジラ」。

戦車にGoProをつけて撮影。背景はCGを合成するカットもありました。
現場スタッフからも「画期的な作品」との声が出るほど、新しい作り方にチャレンジしたそうです。

東宝スタジオにオフィスを構えるピクチャーエレメントにて裏話を聞いてきました。
これは玄関にいるゴジラ像。
話を伺うのは、シン・ゴジラでVFXプロデューサーを務めた同社代表の大屋哲男さん。

ピクチャーエレメントが手がける「PE RUSH!」というアプリが「シン・ゴジラ」で使われました。
「映画の作り方ってここ数年でガラッと変わったんですよ」
映画業界は2013年辺りからフィルムからデジタルにほぼ100%移行しました。
「フィルムで上映しないということは、完成する原盤がフィルムである必要がない。必要な映画館にデータ配信するスタイルですね。映像の扱い方が根本的に変わったんです。それがここ2年くらい」
そこで生まれたのが「PE RUSH!」でした。
「PE RUSH!」って何? チームで映像共有するのが楽になるシステム
「シン・ゴジラ」は東宝スタジオ、スタジオカラー(庵野総監督が代表を務める製作会社)、白組(CGを主に担当)の3拠点をネットワークで結び、編集データの共有ができるようにしました。
各拠点のどこかで編集作業をすると、他の2拠点でも変更点などをすぐに確認できたと言います。
撮った映像に書きこみができたり
「ここ消して」と書いておけば、担当者がすぐに対応できる。
「いいね!」ボタンが押せ、
好きなショットを「いいね!」しておけば、お気に入りして記録しておくこともできます。
「パンフレットで、劇中の写真が使われたりしますよね。そういうときに、『いいね!』の部分だけ集めておけば、すぐにコマのピックができるわけです」
「やっぱやめた」とハートブレイクもできます。
ちなみに、フィルム時代はこの作業がなかなか大変だったようです。
「『このコマが欲しい!』となると、まず一時停止しますよね。この時点で画質がかなり落ちます。さらにその画面をスクリーンキャプチャーしたりデジカメで撮ってみんなに共有します。それが、何十枚も送られてくる……かなりの手間でした」
「スピード感が全然違います。かなり楽になってきたと思いますよ。いろんな仕事をみんなで分担しているので」
なぜiPad Proが映画製作にいいの?

1:色彩感覚を直感的に共有できる
各部隊で作った映像を共有するためにDVDを渡しても、テレビやディスプレイの環境によって色味などが異なることもしばしば。
そのため「この映像暗くない?」「もっと青みがほしい」といった直感的な話は難しかったそうです。
ピクチャーエレメントでは、映画製作現場ではiPadをスタッフにレンタルしています。
「iPadだと色彩環境が統一できるのがいいんです。特にiPad Proって、映画をデジタル上映するためのデジタルシネマ規格をサポートしているそうで、スクリーンに合わせた色味を再現できるんですよ。」
デスクの横にiPad Proがちらり。
2:セキュリティ面も考慮
映画制作中に、劇中の映像が流出してしまうと被害は甚大。開発の際に「セキュリティ面をクリアしないと使用許可は出せない」と映画製作会社から要望が出たため、さまざまな対策を講じた結果、Apple社のiPadシリーズが選ばれました。
「フィルム時代って、DVDにやいてみんなで映像を共有していたので、紛失や流出もあったんですよ。iPadなら、紛失したら遠隔でデータ消去ができますから安心です」