ヤングマガジンで連載中の『ギャルと恐竜』は主人公の楓が、酔った勢いで部屋にいれてしまった恐竜と暮らす不思議な共同生活を描く。人懐っこいギャルと無口な恐竜生活は、ほのぼのとしており、ほっこりすると男女問わず人気だ。2020年4月からアニメ&実写で映像化される。
🌟ギャルと恐竜🌟 W映像化決定しました! 🦕 \ アニメ&実写 / 🦕 よろしくお願いします!
原作を森もり子、漫画をトミムラコタが担当している2人は昨年結婚した夫婦でもある。結婚の際、夫である森もり子はこんなツイートをしていた。
今回の結婚に関しては ①結婚の一年前から彼女の家族と同居していること ②彼女の娘の養子縁組を結婚と同時に行った ③男性側である自分が改姓したこと ④お互いフリーランスであること ……など多少の特殊性はあるので、一度どこかでちゃんと流れをまとめておくとニッチな需要はあるのかな
情報量が多い。
妻であるトミムラコタには前夫との間に授かった娘がおり、実家で暮らしていたのだ。そして結婚と同時に森もり子の苗字を「富村」に改姓したのだという。苗字を妻の方にしたものの、婿養子に入ったわけではない。
なお、森もり子は当初はOLになりきってTweetをするアカウントだったため、このような名前で活動しているが、男性である。
何から何まで情報量の多い2人は、どうやって夫婦になったのか?
お義父さんから言われた「家賃もったいなくない?」
名前でよく男だと思われてるけど私は女だし4歳の娘いるし夫はいないし、平成生まれ25歳バツイチシングルマザー、バイセクシュアルの自称イラストレーターだよ。情報量多いね??
──どうやって出会ったんでしょうか? マンガ家さんの出会い、気になります。
トミムラ:私はよくTwitterで絵を描いてる人たちを家に招いて、みんなでゲームしたりご飯食べてダラダラ遊んでいるんです。仕事は関係なく、単純に友達として。そこに彼がやってきた。2年前くらいかな。
森:彼女含めTwitterのフォロワーの人たちが「新年会やろう」みたいな話をしているのを見て「今度、呼んでください」って言ってみた。
それまで人に会わずに過ごしていたので、リハビリ的にコミュニケーションをとろうとしていた時期だったんです。
トミムラ:最初は、彼が全然話さなくて(笑)。徐々に話すようになっていった感じです。
──トミムラさんは、ちょっと複雑なバックボーンを持たれていると思うのですが、それはご存知だったんですか? 離婚して、子供がいて…
トミムラ:離婚して、子供がいて、実家に住んでる。
森:そうですね、知ってました。彼女のバックボーンに関しては、好きになった人には娘がいた。娘がいるから今の彼女がある。それだけの話で。嫌とか引け目みたいな気持ちは全くありませんでした。
トミムラ:シングルマザーが恋愛すると「子持ちで恋愛する?」と言われたり、周りの目が気になってしまう、という話を聞きますけど、あまり気にならないんですよ。
私自身、結婚、出産、離婚っていう、エピソード自体は全然悩みになっていなくて。
ただ、それって彼がどう思うかわからないじゃないですか。自分から「結婚したい」とはちょっと言いづらい。2人の間にいきなり子供という存在がいるのは大丈夫なのか……とか。
──子供との相性もありますしね。
トミムラ:けど、なぜか自然に一緒に住む流れになって。
森:付き合って2か月ぐらいで、彼女の家にほぼいたので。
──トミムラさんの実家にですか?
トミムラ:うちの両親がよく言えば人懐っこいというか、悪く言えばガバガバで。彼が帰る時に父親が「えっ、今日は泊まっていけばいいじゃん」って言う。それが頻繁に続いて、気付いたら住んでいた。
森:2か月目ぐらいそういう状態だったので、彼女の両親に「家賃もったいなくない? うちに住みなよ」「もし別れたら、その時は引っ越せばいいんだし」みたいなことを言われて。
父親からゲイビデオに出たという事を告白された #フォロワーが体験した事が無さそうな体験
──両親の方から言われたんですか?
トミムラ:私の親が言ってましたね……楽観的というか呑気というか……。
──彼女の実家で同棲がスタート。
トミムラ:祖父母、両親、私、娘、彼でひとつ屋根の下。
──娘さんには、どうやって話をしたのでしょうか?
トミムラ:当時、娘が4歳くらい。彼女の中で「お付き合い」っていう概念がなかったんですよ。でも、わからないからといって放棄するのも違う気がしていたので、大人の言葉も使って説明はしてましたね。
娘がもう少し大きかったら、本人の考えてたことも違ってたんでしょうけど、彼とも普通に仲良く遊んでいて、いい関係だったんだと思います。娘も「一緒に住もうよ」と、ちょこちょこ言っていたので。
森:帰ろうとしたら「帰っちゃうの?」って聞かれたり。
トミムラ:最初は、遊んでくれるお兄さんっていう感覚だったんだと思います。私の家には親戚含めて友達もよく出入りするので。その中で次第に「なんとなく一緒にいる人」っていうのをわかっていったんだと思いますね。
まだ結婚決めてない時に、娘が「結婚しなよ」って言ってたので、「結婚ってそんな簡単じゃないんだよ」と冗談交じりに返したら、「えっ? だって、踊ってキスすればいいんだよ」って言われたりして。
──踊ってキス。可愛いですね。
ディズニーのアニメって、お姫様が王子様と結婚して終わるじゃないですか。結婚式で2人でダンスしてキスして幕が閉じる。彼女の中では、それが結婚というものだった。丁度、ディズニーをよく見ている時期だったので。
彼氏と夫。明確なちがい
──結婚しようと思ったきっかけはありますか?
森:今の社会の制度だと、お互いが死ぬまで一緒にいようと思っている2人は結婚した方が利便性が高いといと思うんですよね。大きなきっかけになったのは、結婚する前に娘が入院したとき。近親者じゃないとお見舞いにも行けないことがわかったんです。
トミムラ:子供の病棟ってセキュリティーが厳しくて、家族じゃないとお見舞いができないんです。家族じゃないと立ち入れなかったりする。
森:娘だけじゃなく両親とか本人とか、こういうことは今後あるだろう。だったら結婚制度を使った方が生きやすいよね、と話し合いました。
トミムラ:結婚しないで、ただ同棲の方がメリットある人もいるかもしれない。ただ、病気のこと考えたら結婚制度を使った方がいいなっていう。
──ある日突然、父親になるのって怖くないですか?
森:「いきなり父親か」「ちゃんと育児できるかな」みたいな不安はもちろんありました。子育ては経験したことがないので……でも、考えてもどうかなる話ではない。母親って1年かけて準備していくと思うんですけど、男の人っていきなり父親ってものになるんですよね。それと同じ気もします。
ただ、一緒にいて愛おしく感じる気持ちは大切にしたいと思いつつ、論理的に自分が育てていくのは収入の面で不安があるとか。だからできる限り、周りの手を借りながら育てていこうとはお互い思ってました。
トミムラ:私も、世間でなんとなく蔓延している父親像を彼に押し付けたくない気持ちがあって。彼もそう思っているし。「お父さんだから」とか「お母さんだから」とか、そういうのはない家庭にしたいという気持ちで、みんなで一緒に暮らしていますね。
──トミムラさんは、一度離婚をされているわけで。不安要素はありませんでしたか?
トミムラ:前の結婚が今の真逆だったんですよね。勢いで結婚してしまったところがあって、夫婦の運用に対する価値観のすり合わせができていなかったんです。前の夫は、家事は女がするものという考え方の人だった。
彼は全くそういうタイプではない。一度結婚したからこそ「私はこういう夫婦の関係性が良い」という意見がはっきりわかったんですよね。なので、付き合ってるときから結婚観をすり合わせて、今に至るという感じです。そこは絶対に丁寧にコミュニケーションを取った方が良い。
妻の苗字の方がかっこいい
──男性側である森さんが改姓したのは、なぜでしょう? 婿養子なのかと思いました。
森:僕は婿養子に入ったわけじゃないんですよ。ただ書面上で名字を「妻の氏」のチェック欄にしるしを入れただけ。
結婚して苗字を変えた話をすると「婿養子になったの?」とか「どうして妻側の名字にしたの?」って聞かれるんですけれど、その状況ってすごくおかしいって思っちゃうんです。
何も聞かずに男の姓にするのが普通っていうのが、すごく嫌だった。
姓を変えるかどうかって、お互いフィフティーフィフティーに選択肢を持っていなきゃいけないと思うんですよ。だから自分たちで体現してみたいっていう気持ちは少なからずありました。
──フラットに考えた結果、トミムラの姓が採用された。
森:娘の名前に僕の苗字を付けてみて「違うか」みたいな。
トミムラ:「富村の方がしっくりくるかもね」と。
森:あと、今は彼女の実家に暮らしているから、全員が富村の方が表札も1つで済む。
トミムラ:彼の両親も「別に姓を引き継がなくていいよ」「それぐらいの自由な選択であるべきだよね」というスタンスで。
森:「富村、かっこいいよね」とか言ってましたね。
あと、僕は普段「入籍」って言ってないんです。僕が富村家に入ったのではなくて、彼女と僕の2人で新しい3人の富村家を作ったわけなので。世帯主をどっちにするかもじゃんけんで決めました。だから「自分が一家の大黒柱だ」みたいな考えもない。
──いちメンバーみたいな。
森:お互いが個人として対等なパートナーシップができた。
トミムラ:恋愛指南書とかで「男はこうだ」とか「女はこうだ」と、性別のフィルターで語られることって多いと思うんですけれど、彼は「男女差なんてなくて個人差でしかない」と言っていて。
──もともと森さんは、OLに扮してTwitterアカウントを運用していましたもんね。返事をくれない彼氏を追い込む『もっと私にかまってよ!』のLINEスタンプとか、女性陣からすごく共感されていたので、男性だと知った時は驚きました。
森:Twitterは学生のときに、「OLっぽいことつぶやきたい」という軽い気持ちではじめたら、2万フォロワーくらいになっていて。実際に就職して仕事の愚痴を呟いていたんです。
それもレッテル貼りなんですよね。サラリーマンが思っていることとOLが思うことって似てるけど、記号があると全く違って見えてしまう。そういう問題意識はめちゃくちゃ強かった。「女らしい」とか「男らしい」とかがすごく嫌い。姓を「富村」にしたのはその延長線上にある出来事のひとつです。

トミムラ:婿養子は、姓を変えるよりももっと複雑で、ちゃんと手続きしなきゃいけない。私達の場合は、本当にチェックを入れただけなんですよ。「姓をどっちにしますか?」という項目に。
極論ですけど、夫婦でどちらの「苗字がかっこいいか?」を決めるぐらいの気持ちでいいような気もします。
森:現状、どっちかが姓を変えないといけないので、男の僕が妻の苗字を選んでも良い。別姓の方が都合がいい人もいるし、同じの方がいい人もいる。選べることが大事だとは思いますね。
仕事も生活も一緒。夫婦で同業者って息苦しくないですか?

──同業者で結婚するのってライバル心が湧いたり、仕事のスタンスでイライラすることってないんでしょうか?
トミムラ:ライバル心はないですね。
森:描いている内容が違うし、種類が違う。スキルセットも違うので。助け合える。
トミムラ:収入とかも、今や世帯収入なので。どっちが多く…とかより、2人それぞれ多く稼げたら良いというスタンスです。
トミムラ:『ギャルと恐竜』を一緒に作ってて、表現の方法とかでちょっと議論することぐらいはあるかな。
森:変な空気になるぐらい。お互いに譲れないれないところってあるんですよ。
トミムラ:結構、私がイライラしちゃうことが多くて、それに彼が気付いてすぐ謝ることが多いです(笑)
森:なかなか譲れないことって、よく考えたら意外とそこまで譲れないことじゃなかったりしますし。喧嘩すると大変ですよ。仕事も生活一緒だから。
トミムラ:周りに心配されたことある。24時間、仕事も生活も夫婦で一緒だと息がつまるんじゃない?って。
──どうですか、実際。
トミムラ:人によると思いますけど、私たちの場合はないですね。生活の中でついでに仕事の話もできるのが楽しい。ホットケーキ食べていたら、「これ恐竜に作らせたら面白くない?」と会話したりしてます。
森:「ギャルはなんて反応するかな?」みたいな。

トミムラ:同業者のメリットがすごく多い。スケジュールを共有した時に、相手がどれぐらい忙しくて、疲弊してるのかわかるんですよ。
──どうやってスケジュールを共有してるんですか?
トミムラ:うちには大きなホワイトボードがあって、そこに各々スケジュールを書いて共有してます。例えば「ネーム作り」って書いてあると、「2~3日、1人にさせた方がいいな」とか「こもってた方がいいな」と理解しながらコミュニケーションがとれる。
「ネーム作り」とか「原稿」っていう文字を見ても、マンガを書く人じゃないと、何がどう忙しいのかわからない。どんな作業があり、どれくらい労力が必要なのかっていうのを説明するのってなかなか難しいんですよね。
GALS!の原画を見に夫と弥生美術館に行き、なんとたまたま藤井みほな先生にお会いできて、会話もしちゃって、サインまで頂き「連載がんば!」って別れ際に握手もしてもらい、帰りのタクシーの中で泣いている私です😭😭
──悩むポイントもだいたいわかる。励ますというか。
トミムラ:褒め合いますね。ネームとか原稿を見て「いいねいいね」って。
森:ここ可愛いね、とか。
トミムラ:褒めるのって超大事で、それをお互いできているのはいいです。
──親友みたいな感じですね。
トミムラ・森:最強の親友です。
