「政治家になりたいとは思わないけれど、やりたい仕事はある」ロンブー・田村淳が吠える理由

    そろそろ選挙ですが

    テレビに出ている芸能人がネットで自分の意見を述べる。10年前までは考えられなかったことだ。

    ロンドンブーツの田村淳さんは、その1人。ツイキャス、Twitter、LINE LIVEで積極的に活動している。安保法案選挙についての言及からか、「政治家になるのでは?」と囁かれることもある。実際どうなんだろうか。

    民間の総務大臣になりたい

    ――田村さんはネットなどで、社会的な発言をしていますが、いつごろから興味が出てきたのですか。

    テレビのつくり手として、息苦しさを覚えたのがきっかけですね。深夜番組は、若手の実験場で、そこで多少無茶して楽しい番組を作る流れがあったのに、自主規制みたいな雰囲気が出てきたんですよ。

    原因を調べたら、「総務省が電波をテレビ局に渡している電波免許制だから」だとわかった。アメリカはそんなことない。国が電波免許を与える制度じゃないから、各テレビ局は自由に番組を作れるんですよね。余計な政治が生まれないから、水の流れ方がキレイ。

    でも、日本のメディアは国から免許を取り上げられるのが怖くて萎縮しちゃうんですよ。さらに、テレビ局のプロデューサーたちは、出世欲があるから安全な番組を作るようになってきた。クレームがあると出世が遠のくんでしょう。だからもう…気持ち悪いっていうか、面白いものが生まれないじゃんって。

    政治家になりたいとはひとつも思わないですけど、民間の総務大臣にはなりたいです。大臣は指名が来ればなれますからね。それで、テレビの免許事業と記者クラブを開放したい。でも、総務大臣って電波事業以外にもやることが山ほどあるらしくて……それじゃ無理かって(笑)。

    ネットニュースはもっと信頼性が必要

    ――田村さんは、ウェブメディアにも「吠えている」印象があります。

    ネットニュースは、もっと信頼性を作った方が良いなと思っています。本人の声を実際に聞いて書いたものなのか、(テレビやラジオのコメントの)コピペなのか。それって見てる側からしたら一緒。その違いがわかるのは、取材された側しかないんですよね。取材されてないのに自分が記事に出てることもある。だから僕は極力訴えるようにしています。

    電話でもいいから、ちゃんと質疑応答の上で、記事を載せる分にはいいんですよ。聞き手の解釈もあるから、意図しない方向になってもしょうがない部分もある。

    この前は、会見に来ていないのに、いかにもその場にいるように、しかも悪意があるように書いていたから、怒りましたね。「会見には来ていないようですが、そういう報道姿勢なんですか? 逆に取材させてください」って言いました。

    取材してない上に、情報元が「芸能関係者」とか、署名が記者名じゃなくて「〜編集部」とか。それっぽい単語だけど、何も答えてない。

    でも、流し読みをしてる人って気づかないんですよね。

    ――読者に「もっと賢くなれ」と思いますか。

    賢くなれとは思わないけど、自分が得ている情報に信ぴょう性があるのかないのか、自分で判断しないと。全部が正しいと思って食べちゃってたら、食あたりを起こしちゃう。

    テレビだって、新聞だって嘘をついてるし。比べればわかるんですけど、1つの情報源しか見ないと、流されていっちゃいますよね。

    匿名でも、社会は変えられる

    ――電波事業以外に、政界に入らなくても社会は変えられると思いますか。

    前に話題になった「保育園落ちた」の話がいい例だと思うんですよね。

    この意見が、匿名で信ぴょう性がないからといって「相手にしない」のは、政治家失格だと思いましたね。似たような声が世の中にはたくさんあって、待機児童の問題もすごく深刻化している。

    そんな現実があるのに、匿名とはいえ、すごくパワーのある言葉に向き合わないのは、国民の声を吸い上げようと思ってないことだと思うんですよ。

    今回の件は、信頼できる政治家とできない政治家を区別するいい「ふるい」になったと思います。

    ただ、「保育園落ちた」の根底にある問題は、保育士の労働環境や福利厚生が間に合ってないから、保育士自体が少ない、とか、すごく複雑ですよね。「日本はここにお金を投入できるのか?」ってことになる。

    ――税金がさらに増えてもいいのか、みたいなことが問われる?

    そうそう。結局この問題は、「自助と公助どっちですか?」ってところに行き着くんですよね。個人の貯蓄でなんとかするのか、国民全員で財源確保するか、って話。僕は、自助でもいいと思っているけど、みんなが公助の方がいいっていうんだったら、従う。たぶん選挙ってそういう感じなんだと思う。

    言葉のセンスを磨こう、燃えたり間違ってもいい

    やっぱり、政治って「票数」が大事だから、若い人たちが悩むべき部分ってあまり相手にされないんですよね。たくさん票をいれてくれる世代に向けて政治家は動いちゃう。その1つの例が、待機児童の問題だと思うんです。

    だからこそ、若い人たちが声を上げるしかない。1人の主婦が匿名ブログで挙げた声によって政治が動き始めているってことは、本当にいい例になった。

    あと、やっぱり今回の場合は辛辣な言葉だったからこそ、これだけ世の中が動いたんだろうなって思います。「保育園落ちた。やっぱり日本おかしいよ」というタイトルだったら流されていた。こういう言葉のセンスは、ネットに言葉を投げる以上、磨くしかない。

    ――炎上は恐れるなってことですか。

    うん、そうですね。僕自身、炎上しながらも発信して行動してきたし、逆もある。燃えたり、間違ってもいいんですよ。ちゃんと謝れば。炎上しても死なないんで。

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