シリアでまたも化学兵器による市民殺害
シリアでまたも、化学兵器によるとみられる攻撃が起きた。
「ホワイトヘルメット」の名で知られるボランティア救助組織、シリア民間防衛隊などによると4月7日、ダマスカス近郊の東グータ地区ドゥーマで、女性や子どもたちを中心に500人以上が呼吸困難などの症状を訴え、少なくとも49人が死亡したという。
この毒ガス被害が起きたのは、反体制派が掌握する地域で、以前からアサド政権軍が激しい空爆を加えてきた。
繰り返される攻撃
「廃棄後」も起きる被害
しかし、OPCWによる化学兵器の廃棄処分がすべて完了したのちも、シリアでは化学兵器によるとしか考えられない市民被害が続いた。
2017年4月3日には、反体制派が支配する北西部イドリブ県ハーンシャイフーンで、80人を超える人々が死亡した。
国連とOPCWの合同調査チームはアサド政権がサリンを使用した「責任があると確信している」とする報告書をまとめた。
アサド政権とロシアは常に否定
トランプはミサイル攻撃で対抗
トランプ政権はハーンシャイフーンでの化学兵器攻撃をアサド政権軍によるものと断定し、4月7日に巡航ミサイルなどで政権軍の基地を攻撃した。
この攻撃はトランプ氏にとって、国際法に反する化学兵器の使用に対して軍事的には煮え切らない態度しかとれなかったオバマ氏との違いをアピールする狙いがあった。
だが、アサド政権軍へのダメージは軽微なものに過ぎず、政権軍はその後も反体制派を圧倒する勢いで攻勢を掛けている。
ロシアの庇護がある限り、国連はアサドに手出しできず
シリアには、ロシア海軍唯一の国外補給基地がある。
また、権威主義体制のロシアにとって、「民主化」の旗頭で権威主義や独裁の親露政権が倒れることは、脅威となる。それだけに、アサド政権をずっと支えてきた。
ロシアは国連の安全保障理事会の常任理事国で、拒否権を持っている。アサド政権に不利な決議案が出れば、拒否権で葬ってきた。
国連安保理は2018年4月10日、東グータで起きた攻撃の加害者を特定する独立調査団設置を決める米国作成の決議案を採決したが、ロシアが拒否権を行使して否決された。ロシアが作成した決議案も採択に必要な支持が得られず、廃案になった。