世界中のセレブが集まる、パリ・シャンゼリゼ通り近くの高級レストランが、アラブ人の客からの予約を断ったり、ベールをかぶった女性に対し「予約が入っていない」と入店を拒否したりしていたことが、BuzzFeed Franceの調査報道で明らかになった。
レストラン側は差別の意図を否定しているが、フランス政府の権利擁護官は報道を受けて調査に乗り出した。
BuzzFeed Franceの調査では、この店は「L'Avenue」。キム・カーダシアンやリアーナら各国のセレブや政財界人を集める有名店で、パリ旅行の際に訪れる日本人も少なくない。
この店で働いていた4人の証言によると、L'Avenueでは、ベールをかぶった女性が店に入ろうとすると、席が空いていても「満席です」と入店を断るようにしていたという。
また、店のマネージャーは「金持ちでもベールをかぶった人よりも、金髪で見栄えのいい白人二人がテラス席に座っている方がいい」と頻繁に口にしていたという。
この店に10年以上勤務した女性は「そういう人が来たら入店を断らなければならなかった。もしだれかがアラビア語の人物名の電話予約を受けたら、マネージャーがその予約を受けたのはだれかを探し、スタッフには実際に客が来たら満席のふりをして追い返せと指示していた」と語る。
こうした客がどうしても入店したいと言えば、目立たない2階席に案内していたという。
予約ノートに書かれた「断るべき国」の国番号
また、客からの予約を書き込むノートに、カタール、バーレーン、アラブ首長国連邦、サウジアラビアの国番号が記され、これらの国番号からの予約電話があったら断っていたという。
記者の「アフマド」名義の予約も断られる
BuzzFeed Franceの記者は取材の過程で、「アフマド」という典型的なイスラム教徒の名前でこの店を予約しようとしたが、断られた。また、ベールをかぶった女性とともに店に行くと、最初は「その名前では予約を受けていない」と言われ、やがて2階に案内された。
店側は、こうした点について「この店には世界中の客が集まる」と述べ、差別していたことを否定した。一方、パリ市のHélène Bidard副市長(ジェンダー・人権問題担当)は、こうした差別を「受け入れがたい」と検察当局などに事実関係の調査を求めたとツイートし、市の文書を公表した。フランス政府の権利擁護官も「外見による差別」に対する調査を始めるとの声明を出した。
政府に調査を求めたことを明かすパリ副市長のツイート
この問題はフランスだけでなく、実際に自国民が差別されていた可能性のあるアラブ諸国で注目を集めており、サウジアラビアの英字紙アラブ・ニュースや、ロンドンで編集され中東各地で販売されているアッシャルクルアウサト(中東)紙などでも報じられている。
GACKTもパリのホテルで似たような経験
日本の歌手のGACKTさんが2015年、L'Avenueとは異なるパリのホテルのビュッフェで、外の景色を見たかったので入り口の席の座ろうとしたら奥の席に行くよう求められ、アジア人に対する差別だと感じて抗議したと明かし、議論を呼んだ。
BuzzFeed Franceの記事原文(フランス語)はこちら。