アメリカのセレブ、キム・カーダシアン・ウエストさんが補整下着の新しいブランドを立ち上げ、「Kimono」という名で商標登録の手続きを行った問題。
「着物」という日本の伝統文化そのものを下着のブランド名に使うことに対し、「文化の盗用だ」という批判が上がっている。
「文化の盗用」とは、本人の出身や所属とは違う国・地域の文化や伝統を、自己流に利用したり、盗用したりすることを意味する。
また、例えばキムさん以外が「Kimono」の名で服飾用品を売るのが難しくなる可能性も指摘されている。
「着物市長」が抗議
この問題で、京都市の門川大作市長が6月28日付で、キムさんに対し、「着物」の名を商標登録することをやめるよう求める書簡を送ることを公表した。
門川市長は常に着物姿で公務を行うことで知られる。
書簡では着物を「日本人の美意識や精神性、価値観の象徴」と位置づけたうえで、「KIMONO」「きもの」「着物」の名称について「きものやきもの文化を愛するすべての人々共有の財産であり、私的に独占すべきものではないと考えます」として、ブランド名として商標登録しないよう求めた。
門川市長がキムさんに送る書簡の内容は、次の通り。
「きもの」は、日本の豊かな自然と歴史的風土の中で、先人たちのたゆまぬ努力と研鑽によって育まれてきた日本の伝統的な民族衣装であり、暮らしの中で大切に受け継がれ、発展してきた文化です。また、職人の匠の技の結晶であり、日本人の美意識や精神性、価値観の象徴でもあります。
さらに、近年、日本人はもとより、日本を訪れる多くの外国人旅行者が、きもの姿で京都のまちを、また日本のまちを散策される光景も増えています。これは、まさしく、日本が誇る伝統文化である「きもの」が、世界の人々に愛されていることの表れであります。
そして、今、私たちは、すべての国民の皆様とともに、日本のこころや文化の象徴である「きもの文化」を、ユネスコ無形文化遺産への登録を目指す取組も進めています。
私たちは、「KIMONO」「きもの」「着物」の名称は、きものやきもの文化を愛するすべての人々共有の財産であり、私的に独占すべきものではないと考えます。
是非私たちの思いをお汲み取りいただき、ブランド名としてのご使用についてお考え直しいただきたく存じます。
キム様には,私たちの強い思いを御理解いただくためにも、「きもの」をはじめあらゆる日本の文化を守り育ててきた京都にお越しいただき、「きもの文化」の神髄に触れていただければ幸いです。
経産相も反応
また世耕弘成経産相も、Twitter上で質問に答えるかたちで「着物は日本が世界に誇る文化です。しっかり審査してくれるよう、アメリカ特許商標庁にも話をしたいと思います」とツイート。米国での商標登録を疑問視し、米国政府と接触する考えを示した。
一方、キムさんは
米紙ニューヨーク・タイムズの報道によると、カーダシアンさんは同紙宛ての声明で「私は日本文化における着物の重要性を理解し、深い尊敬の念を持っています」と日本文化への理解を強調した。
また「伝統衣装である着物に不名誉をもたらしたり、類似するものをデザイン・発表するつもりはないです」とし、なお、Kimonoというブランド名を変えるつもりはないという姿勢を示した。
商標登録の出願に関してはこう説明している。
「商標登録の出願は、私の補正下着などに(キモノという)言葉を使えるようにするためのもので、誰かが着物を作ったり、伝統衣装である着物という言葉を使ったりすることを制限するものではありません」