平成最後の日となった4月30日の「退位礼正殿の儀」で、安倍晋三首相が読み上げた「国民代表の辞」。
あれから1カ月近く経った5月24日、首相官邸の公式アカウントが、「国民代表の辞」で首相の漢字の読み間違いはなかったというツイートを連続でアップし、ネットでざわめきが拡がっている。
首相官邸のツイート
首相官邸アカウントが連投したツイートをまとめると、以下のようになる。
一部の報道に、4月30日に挙行された「退位礼正殿の儀」での国民代表の辞の最後の部分を、安倍総理が「・・(前略)・・。天皇皇后両陛下には、末永くお健やかであらせられますことを願って『い』ません」と述べた、との記事があります。
国民代表の辞は、同日の閣議で決定されたものであり、安倍総理はそれに従って述べています。
閣議決定された国民代表の辞の当該部分は、「・・(前略)・・。天皇皇后両陛下には、末永くお健やかであらせられますことを願って『や』みません」とひらがなです。
これらの報道にある漢字の読み間違いなどは、ありません。
さらに、5つ目のツイートで退位礼正殿の儀の様子を伝える官邸のページを紹介。「どなたでもご覧いただけます」と結んだ。
官邸のホームページにある「国民代表の辞」の原文は「天皇皇后両陛下には、末永くお健(すこ)やかであらせられますことを願ってやみません。ここに、天皇皇后両陛下に心からの感謝を申し上げ、皇室の一層の御繁栄をお祈り申し上げます」となっている。
官邸がYouTubeにアップしている退位礼正殿の儀の動画を確認すると、安倍首相は「天皇皇后両陛下には、末永くお健やかであられますことを願って」と読み上げたところで間違いに気づき、一瞬止まる。
そして、「あらせられますことを願って」と読み直した。それに続く「やみません」という部分の発音は早く不明瞭で、聞き取りにくくなっている。
「漢字の読み間違い」は憶測
官邸がツイートした通り原文がひらがなであれば、「やみません」という部分で「首相が漢字を読み間違えた」という見方は憶測に基づいており、誤りだ。
読み間違いは、その前の「あらせられますことを」という部分で発生している。そこも、官邸の発表した原文ではひらがなだった。さらに間違いに気づいた首相は言い直している。
一方、続く「願ってやみません(原文)」という部分の発音は、曖昧だ。記者が聞き取る限りでも「やみません」とも「いません」とも聞こえる。官邸のツイートは、そのあたりは明示的には触れていない。
なお、毎日新聞によると、安倍首相は2018年7月、面会した中国人の若者の日本語の発音の良さに、「私自身、国会で滑舌が悪いという批評を受けるので見習いたい」と、自分の滑舌の悪さをネタにして笑いを誘っている。
ネットでは連ツイで改めて注目が
ネットではむしろ、退位礼正殿の儀から1カ月近く経ってから官邸の公式アカウントが連続ツイートで弁明したことに対して注目が集まった。改めて議論が加熱している。
官邸の「これらの報道にある漢字の意味間違いなどは、ありません」というツイートには600を超えるレスが付いている。この1カ月の官邸アカウントでは最多だ。
Twitterでは「わざわざ公式アカウントが連続ツイートするのは、よほど総理も気にしていたのだろう」という意見や、「(読み間違い問題は)フェイクニュースだった」といった「漢字読み間違い」説への批判が出ている。