「五輪の神が池江選手の体を使って..」橋本聖子氏の発言 評価が分かれたわけは

    橋本聖子参院議員の発言は、問題含みなのか。それとも「エール」なのか。報じ方が分かれた背景は。

    日本オリンピック委員会副会長の橋本聖子氏が講演で行った発言が波紋を広げています。

    時事通信

    元五輪選手で参院議員(自民・比例区)の橋本聖子氏は2月16日の講演会で、白血病であることを公表した競泳の池江璃花子選手について、以下のように語りました。

    「私はオリンピックの神様が池江璃花子の体を使って、オリンピック、パラリンピックというものをもっと大きな視点で考えなさい、と言ってきたのかなというふうに思いました」

    「あらゆる問題が去年からスポーツ界に起きた。池江選手が素晴らしい発信をしてくれたことにより、スポーツ界全体がそんなことで悩んでいるべきではない、ガバナンス、コンプライアンスで悩んでいる場合じゃない、もっと前向きにしっかりやりなさい、ということの発信を、池江選手を使って、私たちに叱咤激励をしてくれているとさえ思いました」

    報道陣は講演後に「真意」を確認

    複数の報道をまとめると、報道陣は講演の終了後、橋本氏に発言内容の「真意」を尋ねています。

    わざわざ尋ねたのは、「この発言には問題となり得る」と、その場にいた複数の記者が感じたということを意味しています。

    朝日新聞によると橋本氏は報道陣に「今、大臣の発言とか、いろいろ言われており、変なことは言ってはいけないことは理解しています。スポーツ全体の問題としてとらえてしっかりとやっていくべきなんだ、ということを彼女の頑張りから私たちスポーツ界が教えられた、ということです」と説明しました。

    橋本氏の発言に、野党からは批判が

    池江さんのことを政治家があれこれ言うのはもうやめるべきだと思います。 静かに治療に専念していただくことが何より大事なのだから。 橋本聖子氏「五輪の神様が池江選手の体を使って…」:朝日新聞デジタル https://t.co/v74KPnU7af

    報じ方への疑問符も

    論議を呼んでいる #橋本聖子 議員の発言。 きょうの朝日新聞がネットの記事のまま載せている。 真意を聞いてはいるが、やはり発言が何を言っているのか何度読み返しても分からない内容になっていないだろうか。 記事にはしないという選択もあったと思うが…

    一般紙の伝え方の背景

    複数の一般紙や通信社が橋本氏の発言を取り上げたのは、すでに桜田義孝・五輪相の池江選手に対する発言が問題となっていることを受け、橋本氏の発言に対して政界や社会全般から何らかの反応が出てくることを想定したためと考えられます。

    一般的に政治家は、言葉にさまざまな思惑を込めて発言します。

    二重、三重の意味を込め、発言への反応とそれに対する防御策、さらなる反論まで何手も先読みしたうえで練った発言をメディアに乗せることは、政治家にとってはごく基本的な戦術だからです。

    このため、政治家の発言内容を額面通り受け止める人は、政界にも、政治報道に携わる報道関係者にも、まずはいないと言っていいでしょう。

    そして「裏読み」や「真意の確認」が行われるのです。「失言では?」という受け止め方も出てきます。

    その文脈の上で橋本氏の発言を読み解けば、「スポーツ界のガバナンスについて『悩んでいる場合じゃない』と、スポーツ行政に影響力を持つ政治家が語ること」「スポーツ選手の政治利用」といった点が問題視される可能性があることが想定できます。

    「池江選手へのエール」として報じたスポーツ紙

    一方、スポーツニッポンやスポーツ報知は橋本氏の発言を、池江選手への「エール」という形で報じました。

    橋本聖子氏 白血病公表の池江にエール「頑張って欲しいし、彼女ならできると信じている」

    (スポーツニッポン)

    JOCの橋本聖子副会長 白血病の池江へエール「何とか頑張って欲しいし、彼女なら出来ると思う」

    (スポーツ報知)

    五輪を経験した先輩スポーツ選手としての立場、そして池江選手と同年齢の娘を持つ女性としての立場からの発言として読み解き、この見出しをつけたと思われます。

    スポーツ紙として、橋本氏のアスリートとしての側面に焦点を当てたと言えるかもしれません。逆に、スポーツ行政等に影響力を行使しうる橋本氏の政治家としての立場には触れていません。

    なお、橋本氏自身も病気と闘った経験があります。

    小学3生の時には腎臓病で入院し、その後も2年間、運動を禁じられました。

    このころのことを、橋本氏は自らの公式HPでこう記しています。


        ◇
    私のいた小児病棟には、ベッドから全く起き上がれない子、不自由な体に生まれついてしまった子など、しっかり養生すれば治る私とは比較にならないぐらい大変な境遇の子ども達が何人もいたのです。今でも忘れられないのは、自分と同じ3年生の友達が亡くなるときの言葉です。

    「私の分まで生きてね、がんばってね」

    小学3年生ぐらいで、どうしてそんな素晴らしい言葉が言えたのか、何と凝縮した人生だったのかと、今でも胸が締め付けられる思いがします。健康である事は何よりの幸せです。幸運にも生かされた自分は、その子達のためにも頑張らなければなりません。

        ◇

    1984年のサラエボ冬季五輪の前年には、腎臓病が再発。さらにストレス性の呼吸筋不全症という病気にもなり、肺活量は一時、800CCまで落ち込みました。

    この時、橋本氏は高校3年生。今の池江選手と同じ年でした。

    どの角度から焦点を当てるかで、見方は変わる

    橋本氏は、生まれた1964年に開かれた東京五輪の聖火から「聖子」という名を付けられ、スピードスケート、そして自転車競技の選手として計7回の五輪に出場し、「五輪の申し子」と呼ばれる存在になりました。

    自民党からの出馬要請で1995年に参院議員となり、1996年のアトランタ五輪にも、現役の国会議員として自転車競技で出場を果たしています。

    橋本氏は努力でさまざまな苦難に打ち勝って五輪出場を続けたアスリートであるとともに、日本オリンピック委員会副会長という公職にあります。そして同時に、自民党から参院比例区で立候補し、議員生活が20年を超えるベテランの与党政治家でもあります。

    橋本氏は、いくつもの立場を持っています。

    どの立場からの発言かに焦点を当てるかで、発言への評価は大きく変わってきます。

    池江選手は、Twitterでこんなメッセージを出しています。

    時事通信

    競泳コナミオープンの会場で、白血病を公表した池江璃花子選手への寄せ書きをする人たち=2月16日午前、千葉県国際総合水泳場

    Contact Kando, Yoshihiro at yoshihiro.kando@buzzfeed.com.

    Got a confidential tip? Submit it here