日韓で軍事情報をやりとりする協定GSOMIAの失効がギリギリで回避された。
そもそもGSOMIAとは
「軍事情報に関する包括的保全協定」のこと。英語の「General Security of Military Information Agreement」の頭文字を取ってGSOMIAと呼ばれる。
同盟関係や友好関係にある国同士で結ぶことで、他国への漏洩を防ぎながら機密性の高い軍事情報をやりとりすることになる。
日本と韓国は「日韓秘密軍事情報保護協定(日韓GSOMIA)」を2016年11月23日に署名し、北朝鮮のミサイル発射情報などを相互にやりとりしてきた。
大枠で言えば、この協定は日本と韓国のためだけでなく、米国のアジア戦略のために存在しているといえる。日韓に軍を駐留させ、中国や北朝鮮、ロシアと対峙する米国にとって、日韓双方の協力が欠かせないからだ。
協定は1年ごとに自動更新され、延長しない場合は3カ月前の通告が必要だ。日韓関係の悪化などから、韓国政府は8月23日、協定を破棄すると通告してきた。
このままでは、11月23日午前0時を持って協定はなくなる状況だった。
11月22日、何が起きたのか。
①韓国政府「いつでも終了できることを前提にGSOMIA維持」
②日本政府「輸出管理で韓国と対話再開」
日韓両国の各メディアの評価は
読売「韓国の破棄見直しは当然」「米国の韓国への圧力が奏功」
産経「日本のパーフェクトゲーム」
韓国左派系紙も「米国が一方的圧力」
韓国・聯合ニュース「日本にも米の圧力」
韓国への米国の圧力が主因というというハンギョレや読売と異なる見方を示したのは、韓国の通信社・聯合ニュースだ。
韓国政府がGSOMIA延長を決めた背景に「輸出規制問題で日本政府の態度変化の兆しがあったと判断したからだ」と伝えた。
その背景として「このように日本が態度を変えたのは、米国の外交圧力が作用した」「韓米日の安保協力を懸念した米国は韓国と日本に圧力をかけ、ぎりぎりのタイミングで両国が譲歩し合った」と分析した。
韓国が米国の圧力を受けて一方的に折れたのではなく、米国の圧力下で日本も譲ったという見方だ。
韓国・中央日報「強硬一辺倒の未熟な策だった」
文在寅政権とは距離を置く韓国・中央日報は社説で「韓米同盟の深刻な亀裂と韓日米安保協力への支障を防ぎ、問題解決のための時間を持つことになった点では幸いだ」と、GSOMIA失効回避を歓迎した。
その背景として「GSOMIAを韓日米安保協力の必要条件と見る米国の強力な圧力があったとみられる」とした。
また、一時はGSOMIA廃棄を発表した文政権を「日本の不当な輸出規制に対抗する措置だとしても、現実はGSOMIAを対応カードとして取り出した政府の意図通りにはならなかった。強硬一辺倒の未熟な対応策が表した限界だ」と批判した。
朝日「日韓に圧力」「韓国の顔を立てた形に」
毎日「両国とも米国にらみ」
続く問題は
日韓双方のメディアが揃って強調したのは、GSOMIA廃棄問題の本質に、戦時中に起きた朝鮮人徴用工を巡る問題があるという点と、日韓の対話継続だ。
朝日新聞は社説で韓国側が協定の破棄通告をしたのは、日本による輸出規制強化への対抗策だったと指摘し、「だが、いくら韓国内の対日世論が硬化したからといって、安全にかかわる問題を取引材料にすること自体に無理がある」とした。
一方で日本政府にも「7月に唐突に打ち出した韓国向け輸出の規制強化は、昨年来の徴用工問題をめぐる事実上の報復にほかならない」「文政権が誤った対抗措置のエスカレートを踏みとどまった以上、日本政府も理性的な思考に立ち返るべきだ」と求めた。
韓国・中央日報は「破局は防いだが、問題が終わったわけではない。輸出規制問題めぐる両国の隔たりを狭め、韓日葛藤の根本原因となった強制徴用問題の解決策を見いだすという宿題が残っている」とした。
産経は「日韓間に横たわる最大の問題は『徴用工』判決による韓国側の国際法違反であり、文政権はその解決も急がねばならない」と韓国側に注文を付けた。