フランスでワイナリーを運営し、添加物などを使わない自然派のワインを醸造している日本人の夫妻が、当局に国外退去を求められる騒ぎが起きている。
地元では「馬鹿げた決定だ」として退去命令の取り消しを求めるネット署名が立ち上がり、すでに5万人以上の署名を集めている。
国営放送フランス24やフィガロなどの報道によると、退去命令を受けたのは、南仏バニュルスでワインを醸造するショウジ・ヒロフミさんとリエさん夫妻。
二人は2011年にそれぞれが渡仏した後に出会った。一緒にフランスでワインを造る夢を温め、農業マネージメントや醸造学を学び、現場で修行を積んできたという。
2017年に自己資金10万ユーロを出し、さらに5万ユーロの融資を受て3.5ヘクタールの農地を購入。ワイナリー「Pedres Blanques」を立ち上げ、ブドウの栽培と添加物などを使わない自然派ワインの醸造を始めた。
ワインには初年度から高い評価
2017年に出荷したワインは評判を呼び、1万本が売り切れた。二人のワインに対する評価は高く、三つ星レストランなどにも納入されたうえ、2018年の出荷予定分も、すでに75%が予約が入っている。
ところが、二人が滞在資格を「労働者」から「農家」に切り替えようとしたところ、地元当局は4月、「月間収入が2000ユーロに満たず、持続可能性がない」などとして国外退去を命じた。
決定は9月に
夫妻は行政裁判所に命令の取り消しを求める訴訟を起こしており、その決定は9月に出る予定だ。
夫妻の弁護士はフィガロ紙に「二人は落ち込んでいる」と語り、「もともと1本12ユーロで販売する計画だったが、すでに価格は26ユーロに値上がりしている。さらに二人は公的な支援も受けていない」と、当局の判断の不当性を訴えた。
フランスで広がる支援の輪
地元では夫妻に対する同情と支援の輪が広がっており、ワインフェアの主催者は地元紙に「もし夫妻が退去となれば、だれにとっても大きな損失だ。日本人の完璧主義がすばらしいブドウとワインを造っているというのに」と語った。
Twitterでは当局を批判するツイートが相次いでいる。