愛媛県南部3市がボランティア受け入れ開始 現地で必要とされているものは

    氾濫や土砂崩れなどで激しい被害を受ける愛媛県南部でボランティアの受け入れが始まった。どうすれば、より地元に根ざしたボランティア活動ができるのか。

    氾濫や土砂崩れなどで激しい被害を受ける一方でメディアでの注目が薄い愛媛県南部の3市が、災害ボランティアの受け入れを始めた。

    4600世帯が床上浸水し、4人が亡くなった大洲市では、市社会福祉協議会が10日から災害ボランティアセンター(携帯:080−5076−9426/電話:0893−23−0313)を開設し、ボランティア希望者の受け入れを始めた。初日は47件の登録があった。

    被災者から求められる作業内容とボランティア希望者をセンターがマッチングし、派遣する仕組みだ。初日は2組が被災者宅などでの作業に出て、残りは福祉協議会の事務所周辺での準備作業などを行った。

    担当者は「いつか起きる災害に備えてマニュアル類を整備し、7月15日にセンターの立ち上げ訓練を行おうと思っていた矢先に水害が起きた。ぶっつけ本番になってしまった」と語る。

    大洲高校3年生の松井陽さん(18)はこの日、授業が午前中で終わったこともあり、午後から友人4人とボランティアに加わった。自宅は無事だが「地元のために何かしたいと思った」という。

    野村町地区の中心部が冠水して大きな被害を受けた西予市は11日朝から、市社会福祉協議会(0894-72-2306)でボランティアの受付を始める。

    市民からは、冠水した家屋の片付けや家具の運び出し、清掃などの要望が寄せられているという。この地区は、高齢者の比率が5割を越えており、若い力が必要だ。

    希望者は野村町地区にある社協で登録する。作業の派遣先は社協から徒歩圏内が中心になるという。

    なお、西予市役所がある同市宇和町地区と野村町地区を最短で結ぶ県道29号は10日現在、通行止めで、大洲市方面から国道441号に迂回する必要があるため、注意が必要だ。

    宇和島市は市民限定で募集

    地滑りなどで大きな被害を受け11人が死亡した宇和島市の社会福祉協議会(0895-23-3711)も、10日からボランティアの受付を始めた。

    ただし、現段階では宇和島市民に応募を限定。特に、被害の激しい同市吉田地区の地理に詳しい人を歓迎している。道路が寸断されているためだ。

    市社協の担当者は「まだ、どれだけのニーズがあるか全体像を把握できていない。すでに宇和島出身で県外在住の方などからお問い合わせを頂いているが、『募集を拡大した時点で連絡します』とお伝えしている」という。

    ボランティアに必要な装備

    ボランティアを希望する人に、3市の担当者が「自力で準備してほしい」と口をそろえることがある。

    • 手袋や作業に適した服装を自分で持ってくること
    • 現地は断水が続くため、水と食事は自分で準備
    • 遠方からの場合、必要なら宿泊先も自分で手配
    • 水害で広がった泥が乾き、粉塵となって舞い散っているため、マスクやゴーグルなどが必要
    • 長袖の服や帽子、タオルなど、暑さ対策

    大洲市災害ボランティアセンターには、水害ボランティアに必要な装備品のイラストが張られている。全国社会福祉協議会などが作成したものだ。全社協は、このイラストを含むボランティアのマニュアルを公開している。

    援助ニーズを調査するため愛媛県に入ったNPO「ジャパン・プラットフォーム」の山崎久徳さんは「瓦礫の片付けから再建、復興に向け、ボランティアの必要性はこれから中長期的に続く。ボランティアを希望する人は、まず各市や市社協のホームページなどの情報をよく確認し、地元のニーズにあわせてほしい」と話す。

    物資は大洲市のみ受け入れ

    愛媛南部3市のうち、援助物資を受け入れている自治体は大洲市だけだ。宇和島、西予両市は「物流そのものは途絶えていないため、自力で賄えている」という。両市の担当者は「物資を送るよりも、復興支援に向けてふるさと納税制度を活用いただけるとありがたい」という。

    大洲市は床上浸水の被災者数が1万人を超えていることもあり、市総合体育館に直接、持ち込むことを条件に、水や衣類、タオル、ボディシートなどの救援物資を受け入れている。

    最も必要なのは水


    現地で最も必要とされているのは、水だ。

    宇和島市吉田地区、三間地区、西予市野村町地区などで浄水場などが被害を受けたため断水が続いており、復旧のめどは立っていない。

    宇和島市立吉田病院は70人余の入院患者を抱える。断水で、65トンの貯水槽が残り7トンにまで減った。病院が一日に使うのは30トンだが、水洗トイレの使用を中止し、災害用ポータブルトイレに切り替えて節水を続けてきた。

    7月9日にメディアを通じて独自に水の提供を呼びかけたところ、各地で反響を呼び、担当者が手一杯になるほどの連絡が入った。

    10日午前にBuzzFeed Newsが病院を訪れると、災害派遣の航空自衛隊春日基地(福岡県)の隊員らが病院への給水を始めた。

    病院の村上幸男事務局長が、佐藤慎一3等空佐に「助かります」と深々と頭を下げると、佐藤さんは「仕事ですから。これからも供給を続られるよう努力します」とさりげない様子で言った。

    同時に、宇和島市の姉妹都市・宮城県大崎市から、500ミリリットル入り飲料水2万2200本が大型トラックで到着。大崎市の担当者らが18時間かけて運んできたという。村上事務局長は「これで一息付ける」とほっとした様子だった。

    現地では各自治体の連携や自衛隊などの活動が広がって、水や支援物資の配布の仕組みなどが、徐々にできあがりつつある。

    被災者宅の片付けなど、行政が手が届きにくい部分を埋めるボランティアの力が適切に発揮されれば、復興に向けた動きは早まるはずだ。