トランプ氏、安倍首相に米カジノ業者の日本参入を要請か 米報道

    トランプ米大統領が、巨額の寄付を受けてきた米国のカジノ業者の要請を受け、日米首脳会談で売り込みを図っていたという調査報道が、米国で公表された。

    米国のトランプ大統領が、2017年2月の日米首脳会談で安倍晋三首相に対し、自らの支持者であるカジノ業者の実名を挙げて、日本市場への参入を求めたとする記事を10月10日、米メディア「プロパブリカ」が公表した。

    日本での民間業者によるカジノ運営を可能にする統合型リゾート(IR)実施法は2018年7月、国会で成立した。

    国内での根強いカジノ反対運動を押し切って与党側が法案を成立させた裏に、トランプ米大統領や、トランプ氏に巨額の寄付を行ってきた米国のカジノ業者の働きかけがあったことを強く示唆する内容だ。

    調査報道を専門とする米国のネットメディア「プロパブリカ」の記事によると、トランプ氏を経由して日本でのカジノ解禁を強く働きかけてきた一人は、米ラスベガスなどでカジノを運営する企業「ラスベガス・サンズ(LVS)」を経営するシェルドン・アデルソン氏。

    世界的な富豪として知られ、2016年米大統領選でトランプ氏を支持。プロパブリカによると、選挙運動に2000万ドルを寄付し、さらにトランプ氏の大統領就任式に向けて500万ドルを寄付し、式では閣僚より上席に迎えられたという。

    ワシントンで安倍氏とトランプ氏の初の日米首脳会談が開かれる前日の2017年2月9日、アデルソン氏はホワイトハウスでトランプ大統領や女婿ジャレド・クシュナー氏、ティラーソン国務長官(当時)らと夕食をともにした。

    翌10日朝、安倍首相は全米商工会議所などが主催する朝食会に出席した。プロパブリカによると、朝食会に同席したアデルソン氏は、安倍首相に対して直接、カジノの件を話題にしたという。

    さらにその後の首脳会談で、トランプ大統領が安倍首相に対し、アデルソン氏の経営するLVSなどの名を挙げて、日本市場に参入させるよう強く求めたという。

    この記事によると、同行者らはトランプ氏が唐突に切り出したことに驚いた様子をみせたが、安倍氏は「情報をありがとう」とだけ述べ、トランプ氏に直接は答えなかったという。

    「シンゾウ、こういった企業を知っているか」

    日経新聞は2017年6月、この時の会談の様子を日本政府関係者への取材を引用し、以下のように報じている。

    「シンゾウ、こういった企業を知っているか」。米国で開いた2月の日米首脳会談。トランプ大統領は安倍晋三首相にほほ笑みかけた。日本が取り組むIRの整備推進方針を歓迎したうえで、米ラスベガス・サンズ、米MGMリゾーツなどの娯楽企業を列挙した。政府関係者によると首相は聞き置く姿勢だったが、隣の側近にすかさず企業名のメモを取らせた。

    プロパブリカの報道内容は、同じ会談を米国側からの視点と取材を通して記事にしたものといえるだろう。

    安倍氏は国会で「トランプ氏から要望は受けていない」

    一方で、安倍首相は2018年7月6日の国会審議で「トランプ大統領との間において、米国の企業からの要望等に関する会話をしたことは一切ございません」と述べ、トランプ氏から要望は受けたことを否定している。

    この日、安倍氏は日本のIR構想について「新たなビジネスの起爆剤となり、また、世界に向けて日本の魅力を発信する、まさに総合的なリゾート施設であり、観光や地域振興、雇用創出といった大きな効果が見込まれる」と説明している。

    安倍首相は2014年5月、LVSが運営するシンガポールのマリーナベイ・サンズを視察し、統合型リゾートは将来の経済成長の柱になるとの考えを示している。