ロシア軍が撤退したウクライナ・キーウ近郊のブチャで、多数の市民の遺体が見つかった。市内の教会敷地内で、「集団墓地」とみられる穴が掘られている衛星画像も公表された。
世界は、日本は、この事態にどう反応したか。そしてロシアの主張は。
ウクライナ検察「410人の遺体発見」
ウクライナ軍とロシア軍の戦闘が続いていたキエフ近郊の情勢を巡っては、ウクライナのハンナ・マリャル副国防相が2日(現地時間)、「イルピン、ブチャ、ゴストメルと全キーウ州を解放した」と発表した。
その後入った報道陣などが撮影した、ブチャで路上のあちこちに遺体が転がる映像がSNSなどで相次いで公開され、その凄惨さが世界に衝撃を与えている。
CNNは「市内にある教会の敷地に、これまでに150人の遺体が埋葬され、その多くが同市周辺での戦闘に巻き込まれた市民」と伝えた。
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は4月3日、ロシア占領地域で戦争犯罪が起きている、と報告書を発表。目撃者の証言をもとに、ブチャなど各地で、ロシア軍兵士による市民の殺害やレイプなどが相次いだとした。
BBCによると、ウクライナ検察庁はブチャなど近郊で410人の遺体を発見した、と発表した。
国連事務総長「深い衝撃。調査を」
この事態に、国連のグテーレス事務総長は、以下のようにツイートした。
「私はブチャで殺害された市民の映像に、深い衝撃を受けた。独立した調査を行い、説明責任を果たさせることが不可欠だ」
市民の殺害に強い怒りを示したうえで、事実関係を調査して殺害の実行者を探し出す必要性を訴えた。
ゼレンスキー大統領「これはロシア軍の戦争犯罪だ」
ウクライナのゼレンスキー大統領はFacebookでの声明で、「これまで世界はさまざまな時代に、様々な地で戦争犯罪を目撃してきた。今はロシアの戦争犯罪を止めるためにあらゆる手を打つ時だ。関与した全ての人間は特定され、処罰を受ける」と語った。
ブリンケン米国務長官「責任を追及する」
アメリカのブリンケン国務長官は、以下の声明をツイートした。
「我々は、ブチャとウクライナ全土におけるクレムリン軍(ロシア軍)による明らかな残虐行為を強く非難する。私たちは実行者の責任を追及するため、あらゆる手段を用い、情報を共有している」
英外相「プーチンが関与を隠すことは許されない」
英国のトラス外相は「ロシア軍による蛮行の責任者を追及しなければならない。プーチン政権が、この残虐行為への関与を隠そうとすることは許されない」とツイートした。
日本政府「ロシアの責任を問う必要」
首相官邸のTwitterアカウントは「民間人の殺害は、国際人道法違反であり、断じて許されず、厳しく非難します。ロシアは、その責任を厳しく問われなければなりません」と、ロシアによる犯行としたうえで強く批判した。
一方、ロシアは「でっち上げ」「ウクライナ側の犯行」
世界中の非難が高まるなか、ロシア外務省の公式アカウントは「キーウ政権がブチャについて公表した全ての写真とビデオは、新たな挑発に過ぎない。キーウ政権が西側メディアのために新たな捏造を行った」としたうえで、ロシア国防省の声明文の画像をツイートした。
声明文は「ロシア軍は3月30日にブチャから完全に撤退した。ロシア軍の管理下にあった時期、ブチャの市民はだれも、どのような暴力にも苦しんでいない」
「ブチャでの『犯罪の証拠』なるものは、ウクライナ情報機関と報道機関が市内に入った(撤退から)4日後に出てきたが、死後硬直などがみられない」
などとして、「ウクライナ政府のでっち上げ」と主張している。
また、ロシア国連代表部のポリャンスキー次席大使は「ブチャでのウクライナ人過激派の凶悪な挑発行為に鑑み、ロシアは4月4日に国連安全保障理事会の開催を要請した」とツイート。「ウクライナ側の自作自演」としたうえで、国連安保理の開催を求めた。
【お知らせ】
日本政府がウクライナ政府の要請に基づき、ウクライナ各地の日本語呼称をロシア語由来のものからウクライナ語由来の表記に改めたことに伴い、BuzzFeed Newsもウクライナの地名表記を変更します。
今後、ウクライナの首都はキーウと表記し、各地の地名も同様に改めます。