朝日新聞が記事の盗用で謝罪 記者は「本の著者への取材だから大丈夫と思った」

    北海道新聞社刊の本から引き写し。記者は調査に「本の著者が取材相手だからいいと思っていた」と答えたという。

    朝日新聞社は1月31日、朝日新聞の北海道版のページで1月12日と19日に連載した連載記事「ひと模様 大道芸人 ギリヤーク尼ケ崎さん」の2本に、北海道新聞社の出版した本から引き写した部分が多数あったとして、連載を中止したうえ、これまで出た記事2本を取り消した。北海道新聞社に謝罪し、関係者も処分するという。

    朝日新聞の発表によると、函館支局の男性記者(42)が、函館市出身のギリヤーーク尼崎さんを取材し、連載記事にしようとした。この際、参考資料として写真集「ギリヤーク尼ケ崎 『鬼の踊り』から『祈りの踊り』へ」を図書館で借りた。

    この写真中のギリヤークさんの記述は、北海道新聞が2003年に夕刊で連載した記事をもとにしていた。記者は2018年11〜12月、ギリヤークさんに3回会って取材した。

    初回の取材はギリヤークさんの体調も思わしくなく、あまり進まなかったことから、次回からはこの写真集をもとにした「下書き」をつくった。会ってその内容を確認しつつ、新しい情報を加えていく方法で取材したという。

    この結果、写真集の内容と重なる記述が連載1回目で約4割、2回目では約8割あったという。

    1月23日に、北海道新聞社から「似通った表現が多い」という文書が朝日新聞社側に届き、社内で調査を始めたという。

    調査に対し記者は、写真集の著者名にギリヤークさんの名があったことから、「ギリヤークさんの承諾を得て記述を使うことは問題ないと思った」と答えた。

    一方、この写真集の随想が北海道新聞夕刊の連載の記述をほぼ再掲載したものであることは見落としていたという。

    朝日新聞社は「こうした記事作成の方法そのものが問題であり、事実上の盗用と言わざるを得ないと判断した」としている。