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山田孝之はあらゆる人類に侵食する... 密着した2人の監督が語る中毒性

日本で一番不思議な役者の魅力を山下敦弘監督と松江哲明監督に聞く

俳優・山田孝之がカンヌ映画祭の最高賞「パルムドール」を取るべく、自らプロデューサーとなり、芦田愛菜主演、山下敦弘監督で映画を製作する過程を追ったドキュメンタリードラマ「山田孝之のカンヌ映画祭」(以下「カンヌ」)。

フィクションともノンフィクションともいえない独特のタッチで人気を呼んでいるが、その中心にいる山田孝之とはどんなプロデューサーなのか。

「山田孝之の東京都北区赤羽」(以下「赤羽」)、そして今作と山田と仕事をした山下敦弘氏と松江哲明氏の両監督をBuzzFeed Newsは取材。中毒性のある不思議な魅力について語ってもらった。

山田孝之は「ああ見えて人のことを考えるのが好き」

——お2人はそれぞれ映画監督、プロデューサーの経験がありますが、2人が見たプロデューサー山田孝之の評価はどうでしょう。

松江:山田くんがいいなと思うのは掛け算がうまい。監督とプロデューサーの違いは、この人とこの人を組み合わせたらどうなるか、でわくわくできるかどうか。

山田くんは組み合わせる時に安全パイじゃなく、どうなるかわかんないけど新しいことが起きそうな組み合わせをつくる。

「カンヌ」の時には飲みの席で知り合って写真を見せてもらっただけの高橋優也くん(若手の注目カメラマン)を連れてくる。

本当にたまたま飲んでただけ。でも感覚でそれができる。見る目は面白いんですよ。そこはさすが。

「カンヌ」の音楽にしても、山田社長に1回聞いてもらう場合が多いんですけど、社長判断で「あっ、やっぱそうっすよね」となることが多い。

安全パイだけど80点ではなく、わかんないけど100点の可能性があるなら「そっちがいいんじゃないっすか」と。

プロデューサーがそう言ってくれると、監督としてもやっちゃおうかなと思う。そういうタイプのプロデューサーです。

でも楽じゃないですよ。いつも大変な道を行くので。

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山下:山田くんはすごくクールで、世間一般からは何を考えているかわからないというイメージはあると思うんですけど、ああ見えて人のことを考えるのが好きなんですよ。

才能を活かして、自分が楽しめる人なんで。

「カンヌ」を見ている人は「山下じゃなく山田が監督じゃねえか」と感じていると思うんですけど、俺ができないから、山田くんが前のめりになっているだけ。

実はおれをもっと好き放題させて、たまに修正したいと思ってる。人を活かすのが好きな人。

もちろん役者として前に出る、使われる側の人なんですけど、両方もっている。その矛盾が面白い。

山田孝之は「ずっと前を歩いている」

——山下さんは山田孝之の魅力について「変な魔法」とホームページで語ってます。

山下:そうなんですよ。魔法ですね。一緒にいることでみんなに安心感を与える。山田くんが喜ぶことをしたくなる。

大変なこともあるけど、たまにすっと素の笑顔を見るとそれだけでご褒美。女王さまと奴隷みたいな。ぜんぜん年下なんですけど(笑)。

——「カンヌ」の反響はどうですか?

松江:2015年に放送された「赤羽」のときは「なんですか、あれ」という感じの反応でしたけど、今回は映画関係の反響が大きいですね。

「カンヌ」は日本映画界の不自由だなというところを描いているじゃないですか。

だから「面白いですね」じゃなくて「やっちゃってくださいよ」という雰囲気を感じる(笑)。

山下:もう少し掘り下げれば、製作委員会があったり映画界はしっかりしていると思うんですけど、俺らが小学生レベルで「賞ください」と根拠もなく極端に突っ込んでいっちゃう。

松江:ドン・キホーテな感じがあるよね。

山田孝之って、カメラで追っているとずっと前を歩いているんですよ。後ろじゃなくて、いつも先頭

リーダー感があるんですよね。勇者ヨシヒコというかウシジマくんというか。社長、座長、ボス感がある。

カンヌに行っても物怖じをしない。知らないことを恥ずかしがらない。

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カンヌに限らず、日本の映画人に会ってもそう。知ったことに対しては勉強になると言っていて。

カンヌの取材、本編はほんの数分ですけど、撮影素材は3日間、いろんなところに行って、話を各1時間以上聞いていました。山田くんはすごく楽しんでましたよ。

山下:僕なんかは小さいころから映画が好きで、カンヌに行くと黒沢明の手形とかにワーッとなるけど、山田くんはそこに興味ないんですよ。

感覚的にフィットすると、有名な監督、評論家だろうが、そうでなかろうが興味を持つ。

松江嗅覚は正しいですね。山田くんの面白いところは経験をすべて自分に活かしている。

カンヌでも、映画界で普段関わらない人と触れることで、自分の芝居にも活かしていく。

山田孝之はドキュメンタリー作家の人生を変える

——松江さんにお聞きしたいのですが、ドキュメンタリー作家として見る「山田孝之」はどうですか?

松江:あの人ってすごく純度が高い。ピュアな人。

あんなに本心が見えないし、東宝に「今まで僕が出た東宝作品の興行収入を合わせると500億円くらいだから1億円ください」と無茶苦茶なことを言う人なんですけど、心の中にたんぽぽが咲いているのが見えたりする。そこがすごい。

商店街で豆腐を作り続けている職人みたいなときもあれば、すごくスターな時もある。その両方を持っている人はなかなかいない。

以前、妻からは「あなたは役者が嫌いなのね」と言われていたんです。役者って本音を出さないで、何かに守られている人じゃないですか。

「情熱大陸」を見ていると、事務所が間に入っているなというのがわかるんですよ。

ドキュメンタリーとしては、もっとはがして素を出せれば面白いのにと思う。

妻からは「あなた、そういう人嫌いだよね」と言われていたけど、でもその妻が、山田孝之と関わって僕が変わったと言うようになりました。作るものが変わったと。

役者をドキュメンタリーで撮っても面白いと気づいたのは山田孝之が最初ですね。僕の作り方が変わったのは山田くんのおかげです。

山下:俺にとっても「赤羽」が強烈でした。山田くんが赤羽で1か月暮らしていて、朝に赤羽に向かって彼のインタビューを何回もとるんですけど、山田孝之に完全にやられちゃった。

気づいたら、あんまり築いたことのない役者との関係になった。普通に映画を撮れるのかなとお互い不安になるくらい。不思議ですよね。こんな関わり方。

山田孝之はあらゆる人類に侵食する

——お2人への山田孝之の侵食度が凄いですね。

松江:ほかの人もそうじゃないですか。ほかの監督もそうだし、山田孝之が気になる人はみんなそう。モニター越しに見ている人もみんな同じだと思う。

山下くんのいう変な魔法にかかってる。山田孝之の目から出るビームにあてられている。

山下:色気がある人、人間くさい人。いろんなタイプの役者がいますけど、山田くんはそこに薬物が入っているんです。中毒性がある。

映画で撮影している時、出演する女優に対して、ずっと仕事しているのでかーっと思い入れが出るけど、撮影終わるとすっと抜ける。でも山田くんは男なのに抜けない。

「赤羽」終わったと思ってテレビを見たら、ジョージアのCMで魔法を出しているから「ああ、社長だ〜」となる。ジョージアのCMをやっていること自体がおかしくって。見ると、疲れるんですよ(笑)。

何にでもなれるんですけど、何にもなじめない。

代表作はあるんだけど、代表作すらもツルッと抜ける。変な人ですよね。

松江:「カンヌ」も「赤羽」も冠がついて代表作もあるんだけど、ぜったい代表作とはならない。

山下:これを足場にして次にいく。「次はこれできるな」とぜったい考えている。それが怖い(笑)。

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松江:何をやっても(笑)がつく。そこが怖い。

今回「カンヌ」をやって、山田くんの新しい素顔を撮ったなという手応えがあるんです。だてに僕もドキュメンタリー監督を18年やってませんから。

でも、手応えはあるんだけど、時間がたつにつれて「あれ、もしかしたら(笑)の方かな」という感じが出てくるかも。

山下:いまだに俺らは毎年、赤羽の忘年会にいくんですけど、みんな山田孝之の魔法にかかってますからね。

松江:忘年会で山田くんの話ばかりしてるんですよ。山田くん自体は忘年会にいないのに。山田くんをあてに飲んでいる。

先週、赤羽いっても「赤羽みてました」と社長の影響が残っている。ワニダさんもそれをネタに話しているし。

それは素敵なことで、ドキュメンタリーの力。現実に作用する。

芦田愛菜は山田孝之だけを見ている

——「赤羽」と違い、今回は芦田愛菜さんが新たに加わっています。

山下:芦田さんがいるといい意味で安定感、大人の予定調和感がない。なんというか妖精っぽい。

ただの子供ではなく芦田愛菜がいるんですよ。独特の存在でしたね。

松江:芦田さんがいることで、常に「大人たち何やっているの」というツッコミが入る。

山下:大人たちとちゃんと距離感をもっている。ただ山田くんを信じたばかりに…。そこだけは道を大きく間違えたなと(笑)

——番組では山田さんに山下さんは振り回されますが、芦田さんはぶれません。

山下:芦田さんは変わらないです。僕はカンヌの人参をぶらさげられて欲が出て、山田くんとぶつかる。

芦田さんは最後まで山田くんしか見ていない。

山田孝之との旅は終わらない

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——「カンヌ」の今後の見どころを教えてください。

松江:最終話まで、ぜったい想像できないです。1週ごとに何が出るかわからない構成になってるとは思いますが。最終話を編集していて、泣きましたから。

山下:今回はロードムービーです。映画製作という旅をしてきたなと思う。旅だから何が起こるかわからない。その記録なので、ロードムービーとして見応えがある結果になった。

そして、その旅がまだ終わってない。ぜんぜん終わってない(笑)。ひとこと言っておくと、ドラマが終わっても、僕らの旅は終わらない。

松江:視聴者の人に言いたいのは、カンヌ映画祭は今年も5月に確実にあるんですよ。冷静に考えてください、2月の今、僕らがなにをしているか。

みんなシャレだと思ってるようですが、冗談では出来ないんですよ、山田孝之とは。真剣にドキュメンタリーを作っているんですから。

山田孝之は言ってるんですよ。カンヌでパルムドールを取るって。冒頭で言っているんですよ。

カンヌが誰でもエントリーできること忘れていませんか。ただ、全部現実なんですけど、いろんな現実が侵食して、いま僕らの頭おかしくなってます

山下:療養したいですね。

——すべてが終わったら、山田さんと一緒に温泉とか良いかもしれませんね。

松江:(必死の形相で)いやいやいやいやいやいや、一緒に行きたくない。

山下:勘弁してください。バラバラにいきますよ。

松江:領収証だけ合同会社カンヌで切ってほしい(笑)




テレビ東京・テレビ大阪ほか

毎週金曜 深夜0時52分~

出演:山田孝之、芦田愛菜 ほか

監督:山下敦弘、松江哲明

構成:竹村武司

(C)「山田孝之のカンヌ映画祭」製作委員会

公式サイト:http://www.tv-tokyo.co.jp/yamada_cannes/

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Tatsunori Tokushigeに連絡する メールアドレス:tatsunori.tokushige@buzzfeed.com.

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