ハリル会見で見えた協会の機能不全「組織刷新されない限り、もう海外には二度と追いつけない」

    「協会にはKPIもPDCAもなく、未来へのビジョンもない」

    サッカー日本代表の前監督バヒド・ハリルホジッチ氏が4月27日、都内で記者会見を開いた。

    93分に及んだこの会見をサッカーの専門家はどう見たのか。

    BuzzFeed Newsではサッカーサイト「フットボールチャンネル」編集長の植田路生氏、サッカー雑誌「フットボリスタ」編集長の浅野賀一氏に話を聞いた。

    本音と建前、日本式コミュニケーションによる問題が浮き彫りに

    まず2人が挙げたのが日本サッカー協会( JFA)の機能不全だ。

    「今回の記者会見を聞いてわかったのは、コミュニケーションに問題があったのは協会側ということです。選手の不満は普段代表を取材していれば分かることですが、それがまったくハリルホジッチさんに伝わっていない。協会で多くの時間をすごしてコミュニケーションをとる時間があったのに」(植田氏)

    「ハリルが雇い主であるJFAサイドから『危機シグナル』を出されていなかったのはテストばかりの選手起用からも想像していましたが、本人の証言で確証が取れたなと思いました。田嶋会長からメッセージがなかったのは予想していましたが、技術委員長の西野さん(朗=現代表監督)からも『危機シグナル』がなかったのは意外でした。ハリルをサポートする体制がまったく整っていなくて、外から見えていた以上にハリルは孤立していたんだなと。ただ、本人は何も言われないのでそれを自覚していなくて、いろんな場所でボタンのかけ違いが起きていたんでしょうね」(浅野氏)

    さらに浅野氏は、コミュニケーション文化の違いによる問題であるとも話す。

    「協会とのコミュニケーション、選手とのコミュニケーション、双方に言えることですが、自身のビジョンを説明できなかった責任はハリルにもあります。ただ、今日の会見からもうかがえましたが『うまくいっていると思っていたので、説明する必要がない』と感じていたら、不幸なすれ違いですし、本音と建前の日本式コミュニケーションの問題、あるいは異なる文化を持つ人間同士を繋ぐ間に入っている人の機能不全もあったのでしょう。そこは組織体制の問題とも言えます」

    ハリル解任は「旧時代的な決定」

    またこの会見では、ハリル氏が11月、3月の欧州遠征をあくまでテストと捉えてたことがはっきりした。

    「サッカー的にはブラジル、ベルギー、マリ、ウクライナの欧州遠征4試合はあくまでW杯への準備試合で結果にこだわっていなかったと明言していたのがトピックでした。自身のことを『最後の詰めが得意な監督』と見ていて、『ここまでのチーム作りはうまくいっていて4週間の準備が楽しみ』とも話していた。解任は本当に寝耳に水だったんでしょうね」(浅野氏)

    「あらためてハリルホジッチさんの解任は残念です。W杯に向けて入念な準備をしていて、そのための種まきをしていたのに収穫の手前で追放されてしまった。ハリルホジッチさんのサッカーは日本サッカーにこれまでなかったもの。いわゆる『戦術家』で、相手があり、そこにどう勝つかを戦略的に考えられる人だった。解任でその知見を放棄してしまった」(植田氏)

    植田氏はハリル氏解任という事態に至った、日本サッカーの未来も危惧する。

    「日本サッカーをレベルアップさせることよりも、印象論で重大な決定をしてしまう旧時代的な決定をしてしまった。KPIもPDCAもなく、未来へのビジョンもない。このような体制では日本代表の目標は永遠にW杯ベスト16進出。運がよければベスト16、悪ければ敗退。それを永遠に繰り返すでしょう」

    「日本より強い国は、日本より速いスピードで進化している。協会の体制が刷新されない限り、もう二度と追いつけないでしょう」

    BuzzFeed JapanNews