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Updated on 2019年4月26日. Posted on 2019年4月26日

えっ!「銀だこ」はたこ焼きじゃない? ソウルフードを巡るネットの論争、専門家に聞く

揚げてあるたこ焼きは、たこ焼きではないのか...。日本コナモン協会会長でたこ焼き評論家の熊谷真菜さんに聞いた。

みんな大好き。大阪人のソウルフード「たこ焼き」。

Tatsunori Tokushige

「築地銀だこ」のたこ焼き

日本でもっとも有名なたこ焼きチェーンと言えば「築地銀だこ」だ。最近ではアルコールとともに提供する「築地銀だこハイボール酒場」や「築地銀だこ大衆酒場」も増えている。

一方で、Twitterのコメントをまとめる「Togetter」では<関西人「『銀だこ』は邪道」「たこ焼きやない」>と、主に大阪出身のユーザーによる、銀だこについての否定的な意見がまとめられている。

この投稿以外にも、ネットを検索すると「関西人にとって銀だこは異端」「銀だこは認めない」などの言葉が出てくる。どうにも許せない存在のようだ。

本当に「銀だこ」はたこ焼きではないのか。また、なぜ関西人には受け入れられていないのか。

日本コナモン協会会長で、たこ焼き評論家の熊谷真菜さんに聞いた。

Yoshikazu Tsuno / Getty Images

ーーそもそもたこ焼きの定義はあるのでしょうか。

定義としては、小麦粉を使って、一口サイズの球体、たこ焼き器で焼いたものを「たこ焼き」と呼んでいます。

4センチ前後の大きさで、タコが入っているものですが、中にウインナーやチーズ、私のレシピ本の中では野菜を入れたものも、たこ焼きとして紹介しています。

ですので、銀だこさんは「たこ焼き」です。

ーーネット上で「築地銀だこ」は油で揚げていて、たこ焼きではないという声も上がっています。

揚げるたこ焼きですが、アメリカでは非常にポピュラーでして、ラーメン店のサイドメニューのたこ焼きは冷凍を揚げたもの。スーパーなどでもよく売られています。

たこ焼きは丁寧に焼くと、15分から20分かかります。それではお客さんが待ってくれないし、店の回転も悪くなる。

そこで、銀だこさんは、油をかけることで時間を短縮するようになりました。

YouTubeでこの動画を見る

youtube.com

銀だこのプロモーションビデオ

その結果、チェーン店も増えました。チェーン展開は、当時の大阪のたこ焼き屋さんになかった発想です。

関東からの修学旅行生にたこ焼きの講義をすると、銀だこさんしか食べたことがない子がほとんどです。

また、アジアの国々でも、銀だこさんを目にすることは多いです。

大阪には一店舗単位で丁寧に焼くお店もいっぱいありますが、銀だこさんはそれとは別のスタンス。両方含めてたこ焼きだと思います。

ーーたこ焼きへのこだわりからか、関西の方に銀だこを認めていないという声が多い印象です。

実際、銀だこさんは大阪に出店しても撤退されたり、苦労されています。

私はたこ焼きの美味しさを「カリトロ」と表現してきましたが、油で揚げると皮が厚くなり、カリッではなくバリッになっちゃうんですね。

そういう風に考えると、銀だこさんは油をかけているので、大阪人の考える食感とはちょっと違う、というのはあると思います。

だから「あれはたこ焼きじゃない」と言いたくなるんだと思います。

ーー油で揚げる以外で、大阪のたこ焼きと、チェーン展開のたこ焼きで他に大きな違いはありますか。

最近では、たこ焼き器に銅製の鍋を使うところが増えています。

もともと大阪のたこ焼き器は鋳物なんですが、銅製は熱伝導がよく、早く焼け、素人さんでも返しやすい。

鋳物は鋳鉄で作りますから、工程が複雑で店舗の空間に合わせた大きさにしにくい。

一方で、銅製の鍋は銅板を打ち抜いて作るので、お店のサイズに合わせてカスタマイズしやすい。これが銅板の普及する要因です。

時事通信

銅製のたこ焼き器

銅製で焼くと全体にふわっとなる感じで「カリトロ」までいかない。鋳物ですと表面にほどよい皮を張り、カリ感、パリ感が出る。

昔ながらの大阪らしいたこ焼は鋳物が多かったので、「表面はカリッと」「中はとろーり」「最後にタコのプリッ」の3つの食感があり、これがたこ焼きのおいしさの特長だったわけです。

でも、そこまで言っていただけるということは「みんなどんだけ、たこ焼き好きやねん!」っていうことだと思います(笑)

時事通信

大阪のローカルなコナモンが、日本はもとより、世界に広まった一つの理由には、冷凍たこ焼きの普及、銀だこさんなどのチェーン展開の影響があります。

このように論争になることも、たこ焼きがおいしく、コナモン界のアイドル的存在だからだと嬉しく思っています。

銀だこさんが広まることで、大阪のたこ焼きが注目され、興味を持ってもらえるのは、ありがたいことですし、大阪人も改めて、たこ焼きの魅力を再発見ができるでしょう。

万博に向けて、ぜひとも本場の大阪に食べに来てほしいです。


なお5月7日は「コナモノの日」で、前日5月6日には難波千日前、道具屋筋商店街北入口にて前日イベントが開かれる。

イベントでは"ナニワの光速ウクレレ少年"近藤利樹、5人組アイドル「たこやきレインボー」のミニライブが行われるほか、大阪の伝統野菜をつかった道頓堀やきそばや関西限定のキューピー「だしソースマヨ&だしマヨ」のセットが無料配布される。

【熊谷真菜(くまがい まな) 】

食文化研究家。立命館大学の卒業論文でたこ焼の調査を開始し、1993年10年間に及ぶ調査をまとめた『たこやき』でデビュー。初の研究書として話題を呼んだ。たこやき研究20年を機に、テーマの枠を「粉もん」に広げ、2003年5月7日コナモンの日に、日本コナモン協会を設立、会長を務める。インドネシア王女のたこ焼店オープンの協力はじめ、粉もん文化の普及と継承を目的に国内外をネットワークし、食べ歩く毎日。コナモン道場、たこやき教室の受講生はのべ8000人を超える。 全日本・食学会理事。