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【リオ五輪】笑わない女王が見せた精一杯の笑顔  怪我を乗り越えた中村美里

北京五輪以来、2度目の銅メダル。

リオ五輪柔道女子52キロ級、中村美里が3位決定戦で地元ブラジルのエリカ・ミランダに延長戦の末、大内刈りで優勢勝ち。2008年北京大会以来2度目の銅メダルを獲得した。

最年少の19歳で臨んだ北京五輪では、初出場で銅メダルをとったが、「金以外は同じです」とインタビューに答えた。以来、「笑わない女王」と呼ばれるようになった。

笑わないのには、理由がある。

中学2年のときに全国大会で優勝したが、父・一夫さんから「金メダルを目指すなら簡単に笑って喜ぶな」と言われた。中村本人も「金メダルという目標を達成するまでは、本気で喜べない」と、2012年にテレビ番組で明かしていた。

心からの笑顔を目指した2度目のロンドン五輪では、まさかの初戦負け。雪辱を期したリオでは、コソボを背負って戦ったマイリンダ・ケルメンディに、準決勝で敗れた。

時事通信によると、ケルメンディは「日本のレジェンドである中村に勝った時点で、金メダルは私のものだった」と優勝後に語ったという。

金メダルではなかったが、北京とは違う銅の意味

ロンドン五輪の初戦敗退を受け、以前から苦しめられてきた左膝前十字靭帯の再建手術に踏み切った。手術から約1年後の2013年11月、復帰戦となる講道館杯で優勝。

しかし、手術をした箇所のボルトがずれて炎症が起き、再手術でボルト除去。さらに約3カ月のリハビリを経て、2014年に入り、ようやく練習を再開できた。

リハビリ中には、同じケガを持つ他競技の選手の話を聞き、自分を見つめ直した。

3位決定戦。地元ブラジルの大声援を受けて戦うエリカ・ミランダを延長戦の末、優勢勝ちで破り、銅メダルを手にした。

表彰式後のインタビューで、「金メダルがやっぱり欲しいなと思った」と悔しさを見せた。一方で、ケガを乗り越えての銅メダルに「いろんな経験をして獲ったメダルなので、大事にしたい」と話した。

リオの会場には父・一夫さん、母・美智代さんが訪れ、愛娘に声援を送った。

「両親にはロンドンでは1試合しか出られなかったけど、今回は少しでも多く戦う姿を見せられたのはよかった」

そう話すと、中村は涙を浮かべた。

日本では中村さんのメダルと笑顔をたくさんの人が待っている

テレビのインタビュアーに話を向けられると、中村はカメラに銅メダルを見せながら「応援ありがとうございました」と頭を下げた。悔しさをこらえ、精一杯の笑顔で。

所属する三井住友海上のホームページにある将来像は「大勢の人に憧れてもらえるような柔道家」。

結果ではなく、人間性でその目標は達成できていた。