三宅という大樹が、銅メダルという果実を実らせた。リオ五輪・重量挙げ女子48キロ級、三宅宏実が合計188キロを挙げ、銅メダルを獲得した。ロンドン五輪の銀メダルに続き、2大会連続のメダル獲得となる。
重量挙げという競技について「一本の木というか、下からのエネルギーをとにかく上に爆発させる」とNHKのインタビューで語っていた三宅。成功がなかなか出ない中で、最後のクリーン&ジャーク3本目、107キロのバーベルを天に挙げる美しい姿は、まるで大樹のようだった。
バーベルを挙げた瞬間、三宅の口からは「やったー」と喜びが漏れる。下ろしたバーベルを愛おしそうに撫でた後、16年間、二人三脚で進んできた父・義行さんとハイタッチを交わした。
「一日一生」
三宅が大事にしている言葉だ。2013年に亡くなった天台宗の酒井雄哉氏の著作にある。一日を一生のように精一杯生きるという意味だ。
2012年12月、この競技では致命的ともいえる腰痛を発症。半年間、練習もままならないころにこの言葉と出会った。
2015年4月には左膝の痛みを悪化させ、それをかばう内に再び腰痛を発症。それでも、三宅は全力で過ごす一日を重ねリオ本番へと向かった。
大会直前の8月3日には、12年ぶりとなる痛み止めの注射を打った。体は満身創痍だった。その中で得た銅メダルだからこそ、ロンドンの銀メダルとは違う輝きがある。
三宅は晴れやかな顔で表彰台に上がり、一日一生の結果であるメダルを受け取った。