おじさん、おばさんには見えない 若者だけが知ってるヒット音楽のサイクル

    あなたは他のサブスクのランキングを見たことがありますか

    おじさん、おばさんにとってサブスクといえばApple MusicとSpotifyだが、サブスクの一つ「LINE MUSIC」では聞かれる曲が全く違うのを知っているだろうか。

    Apple Musicのデイリーランキング(9月27日付)

    LINE MUSICのデイリーランキング(9月27日付)

    重なっていたのはレコード会社の知人曰く「今年唯一の流行歌」と言われる「U.S.A」がAppleで2位、LINE MUSICで6位に入っていたくらい。

    Apple Musicのエド・シーランは、かれこれ1年くらいずっと入っているんじゃないかというくらいの印象で、ランキング全体的に驚きは少ない。

    一方、LINE MUSICには知名度がそこまで高くない歌手も並ぶ。若い、というか変化にあふれている印象だ。ユーザー層に違いはあるが、見ていてワクワクするランキングは個人的にはこちらだ。

    「LINE MUSIC」の若いユーザーが多い理由

    実際、LINEに取材すると「LINE MUSICは10〜20代の方が約7割を占めていて、特に15〜19歳に支持をいただいています」と中心ユーザーは10〜20代前半の若い世代だという。

    LINEの関連サービスであることに加え、学割で半額になることもポイント。

    1か月480円。Apple Musicは980円、Spotifyは980円だからおよそ半額だ。社会人にとって月々500円は痛くないだろうが、中高生にとっては確かに大きい。

    若いユーザーを獲得しているもう一つの理由が「LINE MUSIC」をインストールしていれば、プロフィール画面に好きな曲を設定できるBGM機能で、こちらは無料会員でも可能。利用ユーザーの7割が10〜20代の若い世代だ。

    LINEの調査によれば、LINEプロフィール上の「LINE BGM」を高校生、大学生の半数以上となる59.5%が「チェックする」と回答。自分の好きな音楽、アーティストを伝えるなど、自己表現ツールの一つであり、新たな音楽発見の場となっている。

    「LINE MUSIC」と「Tik Tok」で生まれるヒット

    このLINE MUSICと相性が良いサービスが、若い世代に人気のリップシンクアプリ「Tik Tok」だ。

    アプリで人気になった曲が、LINE MUSICのランキングで一気に上昇することがよく見られ、7月31日からは毎週、Tik Tokの話題の楽曲を集めたプレイリストを配信している。

    「象徴的なのが、倖田來未による『め組のひと』カバーのヒットです。Tik Tokでこの曲が気になり、フルで聴きたい、オリジナル音源で聴きたいという動機から、LINE MUSICで再生したユーザーも多かったと思います。ユーザーさんはプロフィールBGMや着歌に設定してくれるので、Tik Tokが更に盛り上がるという循環もあるのかもしれません。10〜20代前半のユーザーにご利用いただいている、LINE MUSICならでは動きかと思います」(LINE広報)

    め組のひと💕 @rika62dance ♡ @riko6622

    Tik Tokで流行した「め組のひと」。

    シンガー・ソングライター足立佳奈の『私今あなたに恋をしています』もTik Tok経由でヒットした曲の代表例だ。

    7月に配信がスタートしたが現在、Tik Tok上では18万本以上この曲を使った動画が投稿され、LINE MUSICを含むストリーミングサービスでは楽曲再生100万回を突破した。

    足立の曲のヒットには、Tik Tokに加えてAbemaTVで人気の恋愛リアリティーショーの影響もある。

    AbemaTVの視聴コア層は10〜30代。特に10代から支持を集めているのが、「オオカミくんには騙されない」「今日、好きになりました。」「恋する週末ホームステイ」の3大恋愛リアリティショーだ。

    この3番組を一度でも視聴者した女子中高生の数は100万人を超え、これは日本全国の女子中高生のおよそ3人に1人にあたる規模だ。AbemaはNetflixのような有料サービスでないことも大きい。

    足立の楽曲は「今日、好きになりました。」の主題歌。番組の出演者が曲に合わせて「今日好きダンス」をTik Tokに投稿すると、Tik Tokの人気投稿者や足立とドラマで共演した土屋太凰、新木優子も動画を投稿し、一気に曲が知られるようになった。

    土屋太凰、新木優子の動画

    Tik Tok上で「今日好きダンス」が人気となった7月16日のLINE MUSICのデイリーランキングでは『私今あなたに恋をしています』は1位を獲得。その週のランキングでも5位に入った。

    アーティストはこうした流れをどう捉えてる?

    足立自身もTik Tokからのヒットを喜んでいる。

    「リアルの後輩から『佳奈ちゃんの曲、本当に好きです。Tik Tokを見て知りました』と言われました。私もみんなが真似してくれてると聞いてTik Tokのダウンロードしたんですけど、こんなに聞いてくれてるんだって嬉しくなりました」

    Tik Tokで使われる曲はテンポアップしている上に15秒に切り取られているが、抵抗感はないという。

    「テンポが早くなることで実際の曲とはまた違った雰囲気で、可愛らしくなってる。みんながより良くしてくれているなって感じますし、気にならないです。歌を早送りして遊ぶことは私もあるので、すごくよくわかります」

    自身も18歳だけに、変化にも柔軟。「LINEでBGMになってたから曲知りましたと良く言われます」と肌感覚で、現在の音楽の状況を理解している。

    一方、レコード会社はこれまで考えてこなかったTik Tokを使ったPRに大わらわ。

    大人が知らない間に、若者たちで完結するヒットのサイクルができていた。