北原里英が雪山撮影で涙「頑張れる子だと思っていたけど...」

    「サニー/32」に主演した北原が、白石和彌監督と対談。

    「凶悪」「日本で一番悪い奴ら」など人間の本質をえぐり出す作品で、強烈な存在感を放つ白石和彌監督。その新作「サニー/32」(2月17日)の主役がNGT48の北原里英と発表された際には少なからず驚きを与えた。

    「僕なりのアイドル映画」と語る今作の撮影地は極寒の新潟。過酷で知られる白石組の現場を現役アイドルの北原はどう捉えたのか。ヤバい映画のヤバい撮影を2人が明かす。

    過酷だった冬の新潟。雪の撮影では涙が

    ――白石監督との仕事。最初に聞いた時はどう思いましたか。

    北原:テーマが重かったり、わかりやすくハッピーじゃない映画が好きだったので、白石監督の作品に出られると聞いてうれしかったです。

    白石:僕はAKB48グループの方に会ったことがなかったので、会う前から興味がありました。

    実際に会うとすごく礼儀正しい人で、映画をやりたいという思いが素直に入ってきて、これは戦えるぞと思いました。

    ――白石組の現場はやはり過酷でしたか。

    北原:はい、毎日大変でした(笑)。白石監督には撮影前「そのまま来てもらえれば大丈夫です。ただ寒さには強くなってくださいね」とアドバイスを頂いて、ある程度は覚悟して現場に入ったのですが、想像以上に新潟の冬の寒さは過酷。毎日誰かが死ぬ思いをしていました。

    白石:ふふふ。

    北原:寒い思い出はたくさんあるのですが、一番は雪山で逃げるシーン。寒さと辛さなんでしょう、今でもなぜだか分からないのですが、寒くて泣いてしまいました。本当に不思議な感覚でした。

    白石:新潟は助監督時代によく来ていて、もともと出身は北海道。雪の映画を撮りたかったけど、なかなか撮れず、いつかやりたいと思っていて、ちょうどいいタイミングでした。雪山のシーンは本当に念願で、もっと撮っていたかった。

    北原:雪山で逃げるシーンは、カットがかかる前に足が一歩も進めなくなって。豪雪のため太ももまで埋まってしまうので、一歩歩くのにすごく体力が奪われて。体力の限界でした。

    どこまで行けばゴールかわからないなか「2カメさんに向かってください」と言われたのですが、カメラがかなり向こうの方で、あそこまで歩けないなって(笑)。

    AKB48も経験していますし、自分はどういう状況でも頑張れる子だと思っていたのですが、さすがに立ち止まってしまいました。

    ――大変だった雪のシーンですが、そんなに劇中では使われていません。

    北原:(笑)。全編を通して寒さが伝わる、新潟で撮った意味のあるシーンが多かったので、やってよかったです。

    NGT48での経験が「サニー」に生きた

    北原が演じた中学教師・藤井赤理は、柏原(ピエール瀧)、小田(リリー・フランキー)演じる2人に拉致監禁され「犯罪史上、もっとも可愛い殺人犯」と呼ばれ、ネットでアイドル化した女児・サニーと同一視される。劇中アイドル視される赤理の姿と、現役アイドルである北原が重なり合う様子は、映画の面白さの一つだ。

    ――白石監督は今作を「アイドル映画」と言っています。ネットでアイドル化される存在を演じましたが、アイドルの経験は今作では生きましたか?

    北原:AKB48を10年やってきましたが、私は正統派のアイドルではなかったと思っています。自信がないタイプで「私を見て」というのが苦手。

    だから台本を読んで、最初に不安だったのは映画後半のカリスマ性を出せるかでした。

    ――演じる赤理は周囲の期待によって、ある種アイドルへと変わっていきます。北原さん自身、そういった経験は?

    北原: NGT48に移籍してキャプテンをやらせていただいてからは責任感も生まれましたし、意識がガラッと変わりました。

    それまでは責任を取るキャプテン、委員長、リーダーみたいなタイプになることが苦手だったのですが、NGT48に移籍して、仕事やAKB48に対する姿勢が変わったので、それがすごくサニーに生きました。

    撮影期間中は撮影にほぼ集中できていて、合間にNGT48のメジャーシングルのPVを撮影したのですけが、その時の記憶があまりないです(笑)。そのくらい頭の中はサニーだったので。

    ――ラストには暗闇の中、高い場所からのアクションシーンがあります。

    白石:日中にアクションチームにワイヤをつけて飛んでもらってテストしていたんですが、夜は環境が全然違って。

    寒くて、北原さんはガタガタ震えて、音を録るためにマイクをつけているじゃないですか。そこから音声で「できるよ、できるよ、頑張れ私。私、できるよ、頑張れ」って。もう聞いていられなくて。

    北原:とてもいい経験をさせていただきました。これより辛いことはないと思います(笑)

    ――北原さんの相手として、門脇麦さんを起用したと聞きましたが、キャスティングははまりましたか。

    白石:北原さんに麦ちゃんを当てた時の覚醒する感じとか、やってよかったですね。これまでやってきたことが違う2人だからこそ、ぶつけあった時の化学反応を見たかったんです。

    画面越しに話すシーンは別撮りもできるんですが、あえて別の部屋にセットを組んでリアルに生中継したんです。機械のトラブルで途中止まったりしたのですが、待った甲斐がありました。

    ――映画には「凶悪」コンビの瀧さん、リリーさんもいました。

    北原:優しくて、すごく素敵なおじさまたちでした。『凶悪』が好きなので、最初お会いした時に「本物だ」と思いました。お2人のおかげで、現場の空気がとても良かったです。

    白石:リリーさんの役も本人が思うキャラクター像を聞いて、作り上げていきました。

    あの2人に関しては、お芝居などやることに信頼感も安心感もありますし、あとは僕がどういじって遊べるかというところでした。

    北原里英の次回作は極妻?

    ――北原さんは映画を通して成長しましたか。

    白石:なかなか撮影日数も短くてハードだったのですが、むしろ短かったからこそ、中盤の一番大きなポイントで、弾けてくれた。

    あの弾け方を見た時、成功する映画だと思いました。さすがに肝は座っているなと思いました。

    ――映画はどんな人に観て欲しいですか。

    白石:ネット社会のことや、生きづらい現代の人々がどこに愛を注げばいいかという問いが込められている。生きづらさを感じている方に観て欲しいですね。

    北原:今の世の中にぴったりな内容ですので、若い方々や白石監督ファン、映画ファンの方々が作品を観てどのような感想をもっていただけるのかはとても興味があります。

    白石:NGT48のメンバーは映画を観たの?

    北原:まだです。みんな「観に行きますよ」と言ってくれているので、私が自分でチケットを買って配っています。

    白石:AKB48グループの同期はなんか言ってる?

    北原:同期は逆に何も言わないですね。ある意味、同期は同志なのでそれぞれ自分の道を進んでいるので。お芝居を志している後輩や、みーちゃん(峯岸みなみ)は早く観たいと言ってくれています。

    ――最後に監督が今後、女優・北原里英に期待することは?

    白石:そうですね、極道の女とかやらせます(笑)。

    北原:「次は脱ごう、次は脱ごう」と言われているんです。

    白石:彫り物を入れてね。唾を吐く練習だけはやっておいてください。

    BuzzFeed JapanNews