プロデューサーが明かす「秘密のケンミンSHOW」のヒミツ

    これまで約1950ものネタを扱う

    「日本って全然ちぃっちゃくないなと思います。本当に場所で魅力が違うので」

    日本全国の知られざる魅力を発掘してきたバラエティー番組「秘密のケンミンSHOW」(読売テレビ)でプロデューサーを務める株式会社ハウフルスの清水紀枝さんはBuzzFeed newsの取材に笑顔で話す。

    2007年の番組スタート当初は1年続くのかという声もあったというが、この10月で番組は10周年を迎えた。

    読売テレビとハウフルスは1997年から2006年まで放送された「どっちの料理ショー」でもタッグを組んだ。後番組を考える会議の中で、県民性を取り上げるアイディアが出た。

    「うちには100人ほどスタッフがいるんですが、会議でネタを募る中で福井県出身のディレクターがテレビの砂嵐のことを『ジャミジャミ』と呼んでいることに驚いたんです」

    「私は群馬出身なんですが『運動会って山で分かれますよね』と言っても誰もわからない。群馬では赤組、白組じゃなくて『あかぎ団』『はるな団』『みょうぎ団』『あさま団』と山の名前で分けるんですよ。本人にとっては普通のことでも、周りから見ると面白い。47都道府県あるし、なにか県民性でできないかとスタートしました」

    ネタ一つひとつに地道な裏付け取材

    番組の魅力はなんといっても、知られざる県の習慣、食べ物だ。これまで約1950個のネタを扱ってきた。

    毎週2回、定例会議が開かれ、スタッフやリサーチ会社により毎回50〜60個のネタが集まる。そこから実際に使うネタを精査していく。

    「会議でいけるとなったネタはスタッフが人海戦術で電話をかけ、徹底的にリサーチします。たとえばグルメだと、実際に県民の方に電話をかけてフラットな声を聞き、知らないという声が多いと取り上げません」

    「一つのネタに対し、ディレクター1人とスタッフが2人。電話帳を片手に商店だったり、美容室だったり、1か所でいろんな方の意見が聞けるところに電話します」

    ネット上のデマ情報をそのままテレビで放送されることもある中、地道で確実な裏付け作業で得た信用性が、10年続いた理由の一つといえる。

    ネタ切れは起こらない!?

    番組で食べ物を紹介すればTwitterのトレンドに上がるなど、影響力は絶大。視聴者に女性が多く、ネットで取り寄せられるものは特に反響がいいという。

    6月29日の放送でご当地パンとして取り上げたのが、パンに甘い味噌を挟んだ群馬の「味噌パン」。放送翌日には銀座にある群馬のアンテナショップからパンがあっという間に消えた。

    兵庫県に本社があるケンミン食品の焼きビーフンを取り上げた際、事前にケンミン食品ではかなりの在庫を確保していたものの、放送後には全国のスーパーから問い合わせが殺到し、大変だったという。

    食べ物を取り上げるのにもルールがある。

    「われわれは『おこし系』と呼んでいるんですけど、町おこしのために2015年からスタートしましたという、にわかに流行り始めた名物はなるべくネタとして取り上げないようにしています」

    撮影タイミングと放送時期が合わず、翌年まで寝かせるネタも多いという。

    「山形県民はだだちゃ豆が大好きなのですが、スーパーに出回る時期が短く、ロケとオンエアの時期がずれるのでできなかったです。北海道民も、ただのシャケでなく、秋ジャケを特に楽しみにしていて好き。そういうできなかった季節ネタを集めた来年やるネタリストはけっこうありますよ」

    日本全国にはまだまだ扱っていないネタがある。15周年、20周年に向けて、ネタ切れとは無縁のようだ。