まさに生ける伝説、イチローが達成間近メジャー3000本安打の価値
文字通りの「生きる伝説」
マーリンズのイチロー外野手は31日(日本時間8月1日)、本拠地でのカージナル戦に代打で出場したが、ファーストフライに終わった。

メジャー通算2998安打までは残り2本のまま、本拠地マイアミでの10連戦が終了。偉業達成は1日(同2日)から始まる敵地でのカブス3連戦に持ち越しとなった。
全米から注目を浴びるイチローのメジャー通算3000本安打

メジャーリーグの公式ホームページでは、イチローの3000本安打目がどんなヒットとなるか異例の投票も始まっている。
イチローが達成間近のメジャー3000本安打とはどれほどの偉業なのだろうか。
メジャー140年の歴史で達成者はわずか29人

1876年にナショナル・リーグが設立して以来、約140年の歴史を誇るメジャーリーグだが、3000本安打を達成した選手はこれまでわずか29人しかいない。
球聖と呼ばれたタイ・カッブ(4191安打)、ハンク・アーロン(3771安打)、近年ではデレク・ジーター(3465安打)、アレックス・ロドリゲス(3114安打、現役)などだ。
ベーブ・ルース(2873安打)、ルー・ゲーリッグ(2721安打)、バリー・ボンズ(2935安打)などの名だたる名打者も3000本安打の壁に阻まれた。
日本球界では張本勲(3085安打)だけが達成している。
米国の野球殿堂入りがほぼ確実となる重要な数字

3000本安打達成は、米国の野球殿堂入りがほぼ確実となる重要な数字でもある。
このため2004年には、3000本安打達成し引退した選手が、公式記録の誤りで2997本となり、残り3本のために50歳で現役復帰するというコメディー映画「Mr.3000」ができたほどだ。
コンスタントにヒットを打ち続ける難しさ

3000本安打を達成するためには、20シーズンならば平均して150安打と、数多くのヒットをコンスタントに打ち続けなければならない。
重要となるのが、まず長いシーズンにわたって打席に立ち続ける体力だ。
メジャー15年でイチローが故障者リスト入り(DL)をしたのはたった一度。マリナーズ時代の2009年4月1日の胃潰瘍による出血だけと、筋肉系のトラブルによる欠場とは無縁だった。
それは徹底した体調管理の賜物だ。
イチローのヤンキース時代の同僚カルロス・ベルトランはNewsdayに明かしている。
「ある日、イチローにメジャーリーグに来てからどれだけ体重が増えたか聞いたことがあるんだ。返ってきた答えは『1ポンド(約453.59グラム)』だよ。信じられるかい(笑)」
徹底したルーティーンで磨かれた集中力
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バッターボックスに立った時に常に集中力を発揮できるかも重要だ。
そのためにイチローが大事としているのがルーティーン。
モノマネされるほど特徴的な打席前の"儀式"はもちろん、ランニングやウェートトレーニングは常に変わらず、チームメイトからは時計代わりになると言われたほどだ。

試合後も徹底したルーティーンは変わらない。
2015年、地元紙「Sun Sentinel」の取材には、試合後にはまずグラブを磨き、家に帰った後に夕食を食べ、ウェートトレーニングを行う一連の流れは毎晩同じと答えている。
「次の日のゲームへの準備で、自分ができることはすべてやっている」
こうした毎日の積み重ねがイチローを記録へと近づけた。
アジア人初となるメジャー3000本安打
イチローは日本のプロ野球界を経て、2001年にマリナーズからメジャーデビューを果たしている。
デビュー時の年齢は27歳。加齢とともに力が落ちることの多い野球の世界で、遅いデビューはけして記録達成に有利には働かない。
しかしイチローはデビュー年に242安打の新人記録となる安打を放つと、この年から10年連続で200本安打を達成。その後も凄まじいスピードでヒットを重ね、メジャー16年目で3000本の大台にあとわずかまできた。
記録達成となればアジア人として初の3000安打打者。サンケイスポーツによれば、台湾の野球ファンも記録達成を心待ちにしていると報じている。
日本球界を経験したおそらく最初で最期のメジャー3000本安打達成者

MLBコミッショナーのロブ・マンフレッドは、日本での活躍を経ての大記録について「3000本安打は全てのメジャー選手にとって信じられない成績だ。日本で長年活躍した後での到達はまさに歴史的な快挙だ」と称賛する。
また現役時代、通算2153安打を放ったマーリンズのドン・マッティングリー監督も「私は21歳からメジャーのキャリアを始めたが、イチローは27歳からだ。3000本安打はどれだけ大変なことか」と感嘆した。
メジャーでの3000本安打達成の困難さを考えれば、イチローのように日本球界を経験し、メジャーで3000本安打達成する日本人選手はおそらく最初で最期となる。
われわれは今、文字通り「生きる伝説」を目の当たりにしているのだ。