リオ五輪柔道男子66キロ級、海老沼匡がロンドン大会に続く、銅メダルを獲得した。3位決定戦ではカナダのアントワヌ・ボシャールに得意の背負い投げで一本勝ち。最後に意地を見せた。

金メダルを阻んだのは、準決勝で戦った昨年の世界選手権覇者で世界ランク1位のアン・バウル(韓国)。
延長戦の末、背負い投げを逆に返され有効を取られる紙一重の勝負。NHKによれば、準決勝の途中から海老沼の下半身にけいれんが起きていたという。
3位決定戦後のインタビューで、体の異変を問われるも「いえ、そんなの関係ないです」。
2013年、同じリオでの世界選手権。反則まがいの執拗な脇固めを受けて、左腕を痛めながら勝利し、相手選手に「あいつはサムライ」と呼ばれた男は言い訳をしない。
「気持ちの部分で僕は負けてしまったので、あそこで踏ん張れなかったのが僕の敗因だと思います」と振り返った。

銅メダル後のインタビューで感情が揺れ動いたのは、4年前との違いとして妻・香菜さんについて挙げられた瞬間だった。
「そうですね。金メダルを獲って一緒に喜びたかったですけど、僕の力不足です」と声を震わせた。
高校時代から交際していた元柔道代表の香菜さん(旧姓阿部)とは2014年12月に結婚。真面目一徹の男が、東京駅に横付けされた白いリムジンの中で、プロポーズ。
結婚と同時に香菜さんは柔道から離れ、海老沼を食事面など献身的にサポートした。
香菜さん自身も世界ランキング3位になった強豪選手だったが、五輪金メダルの夢はかなわなかった。リオでの金メダルは2人の夢でもあった。
「銅メダルだけど、受け止めてほしいというか、一緒に頑張ってきたので、かけてあげたいと思います」
海老沼はスポーツナビの取材に答えた。
