復刊した『CONTINUE』編集長「『ポプテピピック』は『あらびき団』に近いもの感じた」

    『CONTINUE』編集長インタビューの完全版。長文なので注意です。

    ちょうど8年前の2010年2月17発売の50号をもって休刊した雑誌『CONTINUE』(太田出版)が1月23日に復刊した。

    2001年に創刊された『CONTINUE』は、初期はゲーム、その後はアニメ、特撮、マンガなど幅広いオタク系の話題を取り上げ、独自の視点と切り口で人気を博した。

    雑誌業界において休刊=廃刊となる中、なぜ2018年に新創刊することになったのか。BuzzFeed Newsでは、先日、創刊から編集長を務める林和弘さんへのインタビュー記事をお送りしたが、その完全版をお送りする。

    ――復刊おめでとうございます。そもそも『CONTINUE』は2010年になぜ休刊したのでしょう。

    他でも言っているんですが、会社の人事異動で、ウェブ「ぽこぽこ」をやることになったんです。

    『CONTINUE』に関しては僕が創刊からずっと編集長をやっていて、同じコンセプトで続けていくのは無理だろうとなってやめました。

    ――2010年2月売りの50号で休刊しました。区切りが良いところで終わったのは狙いですか。

    いや、たまたまです。社長から呼び出されて「ウェブの立ち上げをお前にやってほしい」と言われて。

    でも、今『CONTINUE』を作ってますよ、と返したら「じゃあ、50号というのは区切りだから一回やめよう」と言われて決まった。

    雑誌の売り上げ的には採算は取れていたし、『saku saku』など単行本は凄く売れていた。プロジェクトとしては辞める理由はない。

    だから「なんで」とは思ったんですけど「社運を賭けたプロジェクトなんだ」って言われて。まあ、その時はウェブでの連載媒体が流行りだったんですよね(笑)。

    ――ウェブ版『CONTINUE』という形もあり得たと思うのですが。

    もともと漫画を連載するサイトにするプランが先行していた話だったのもあって、おそらく『CONTINUE』という冠を使わないとなったんだと思います。

    50号まで作ったので、さすがにやりきったという思いもあって。

    連載をしていたPerfumeに関しては、マネージャーさんにご相談し、メンバーからも「林さんがやめるなら、連載も一緒にやめます」と話があって50号で大団円。

    最後は3人と編集部ですっぽん鍋を食べる、という謎の最終回になりました(笑)。

    ウェブの後には、営業部に行って書店営業もしていました。いわゆるベタな書店営業で、書店員さんの中には『CONTINUE』の読者もいて、名刺を渡すと「林さん、何やっているんですか!?」と言われたり(笑)。

    「いやいや、サラリーマンなんで色々あるんですよ」って話をしてたんですけど、最後には営業部長になっていて、人生いろいろだなと思ってました。

    ――営業部長が再び『CONTINUE』編集長に戻るまでには何があったんですか。

    2005年に『CONTINUE』の別冊として、アニメ『ハチミツとクローバー』の特集本を作って、おかげさまですごく売れた。

    その時、ハチクロの宣伝を担当した方が、映画『3月のライオン』のプロデューサーになっていて、おととしの春ころ、「現場に遊びにきませんか」と電話がかかってきたんです。

    現場に行き、その後にお茶した際に「また『CONTINUE』の別冊として『3月のライオン』の特集本をやってくれないか?」と言われて。

    さすがに休刊からかなりたっていたので、クイック・ジャパンの冠を借りて、ただ『CONTINUE』とライター、カメラマン、デザイナーと同じスタッフで、2017年に『別冊クイック・ジャパン 3月のライオンと羽海野チカの世界』を出しました。

    非常に反響があって、おかげさまで売れた。その時にまだこの方法論はいけるなと感じました。

    そんな時、会社からも雑誌をやらないかと言われ、なら『CONTINUE』しかないでしょとなった。

    やるという話にはなったんですけど、その時は営業部長。営業部長やりながら『CONTINUE』をやれるのかなと半信半疑でした。

    そこから2か月くらいたった頃、2号から一緒に『CONTINUE』を編集をしていたプチ林が会社に復帰してくれることになって。

    その瞬間に「あ、これはやれる」と思い、社長に「雑誌をやるなら営業部長をやりながらは無理。編集一本に戻してくれ」といって、編集部に戻りました。

    ――復刊の発表があったのは昨年11月。Twitter上ではかつての読者からの数多くの反響がありました。

    あんなに反響があるとは思わなかったです。びっくりしたのは全巻持ってますと写真をTwitterにあげる人が多くて。僕だって1、2巻は持ってないぞと(笑)。

    ゲーム雑誌で始まり、アニメ、特撮やったりと、ものすごくあっちに行ったり、こっちに行ったりした雑誌だったので、復刊に対する反響は嬉しかったですよね。

    CONTINUE復活本当にうれしいんだよ!俺のコレクションみてくれよ!(全巻ないけど)一番なんども読んだのはエウレカ特集だったなぁ 青山景さんにはまったのもこの雑誌のお陰だし。 そこにとどめのBiSH連載なんだからもう一生ついてい… https://t.co/DZGJeSJGXm

    かつての読者のツイート

    ――当時、ゲームからアニメに移行する時に反発はあったと、編集後記で書いてましたね。

    そうそう。別に僕はゲームが嫌いになったわけじゃなく、言っちゃうとアニメもプロレスもアイドルも好きで、それを全面に出した方がいいのかなと思ってた。

    20号で木村カエラちゃんを表紙にした『saku saku』を特集した号がすごく売れて。そのあたりからゲームと別の路線もありだぞ、と悩みながら作っていた。

    そんな時に『ハチクロ』の別冊がどーんと売れて、もうゲームにこだわらなくてもいいじゃんとなりました。

    ――復刊に関して、以前から関わっていた方の反響はどうでしたか。

    漫画家の田中圭一さんは雑誌をすごく好きでいてくれて、飲むたびに「『CONTINUE』をまたやるべきだ」とずーっとおっしゃっていただいていました。それこそ同人誌として作って、コミケで売れという話もあったり。

    51号に予告は入れたんですけど、52号から漫画を連載をしてもらえるようになりました。

    打ち合わせで京都に行って、飲みながら色々話したんですけど、「復刊良かったね」と言っていただいて、ありがたいなと思います。

    あきまんさんも休刊前に連載していた四コマ漫画『桜田ふぁみりあ♪』をやっていただいてます。

    ついに復活CONTINUE! いきなりデビルマンとポプテピピックの特集だぜ!こういうチョイスはCONTINUE以外有り得ない。だから好き!

    はぁとふる売国奴こと田中圭一さんのツイート

    ――ライター陣も引き続きですね。

    復刊についてはすごく喜んでくれましたよ。引き続きでいえば、デザイナーの大橋一毅さん。

    変な話、彼がやってくれれば、『CONTINUE』の匂いは出せるので。一番最初に声をかけたのは大橋さんじゃないかな。

    ――吉田豪さん、掟ポルシェさんの連載『電池以下』も引き続き連載しています。

    豪さんは『ハチクロ』の別冊に続いて、『3月のライオン』の別冊でも羽海野チカさんのインタビューを頼んだんです。

    羽海野さんのインタビューは豪さんが一番うまい。”公式カウンセラー”なので。

    その時にお仕事もお願いしていますし、『CONTINUE』が復活する時にも豪さん、掟さんに声をかけました。

    豪さんには、また同じ連載をやってくださいとすごく丁寧なメールでお願いしたら一発「やりますよ」とだけ返ってきて(笑)。

    すごく嬉しかったですね。豪さんらしいなと。

    ――吉田豪さんは今でも『電池以下』での岡本夏生さんの取材の話をされてますね。

    あれは伝説的な回。僕は取材の現場にいなくて、編集部のスタッフに担当してもらってたんですけど、取材のアポイントの段階から、明らかに不穏なんですよ。

    だから僕は「やめたほうがいいと俺は思うぞ。豪さんにも言った方がいいんじゃない」と言ったんですよ。

    そしたら豪さんは「だったらむしろやろう」と(笑)。

    取材当日の夜も不安で、担当編集に「大丈夫?」ってメールを送ったら「吐きそうです」と返ってきて、これはとんでもないことになってるぞと。

    豪さんも掟さんもサバサバした人なので、取材後に編集と一緒に飯を食おうとかいうのは普段はないんですけど、あの取材の後は初めてみんなで飯を食ったらしいです。

    原稿チェックも10回以上あって、最終的には豪さんの痕跡が何一つ残っていないものになった(笑)。あれはすごかったですね。

    ――吉田豪さんもこの8年ですごく有名になりました。

    豪さんは雑誌が休刊になった後に本格的なブレイクしましたね。当時は知る人ぞ知るでしたから。

    ――『CONTINUE』で連載した人は出世します。Perfumeも吉田豪さんもですが、エレキコミックも。

    まさか、やつい(いちろう)さんがあんなになるとは思わなかったですね。

    ――アイドルとも結婚しました。

    本当に。あんた、モテないのが売りの芸人だったじゃんって(笑)。朝ドラは出てるし、紅白は出るし、びっくりしました。

    ――押切蓮介さんも漫画を連載してました。

    そうですね。『ピコピコ少年』はうちで連載しました。そこから『ハイスコアガール』がヒットし、その後大変なことになりましたけど。

    ――休刊前からの連載に加え、51号から新しい連載も加わりました。

    BiSHのアユニ・Dさんは、プチ林が「彼女のセンスはすごいし、文章を書いたら面白いんじゃないか」と言っていたことで、新たに加わりました。

    『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』『渋谷音楽図鑑』で一緒に仕事をした柴那典さん、カレー沢薫さんと『CONTINUE』休刊中に僕が仕事をした方も新たに参加しています。

    ――復活第1号となる51号で表紙、そして巻頭特集を飾ったのはアニメ『DEVILMAN crybaby』でした。

    もともと何をやろうかなと思っていた時、Netflixでデビルマンを、しかも原作通りに最後までやると知って。

    「もしかして、ヒロインの生首までやるの?」と思っていたら、どうやらやるらしいと聞いて、これは特集したいと思ってたんです。

    試写を3話まで見せてもらったら、すごく面白かった。その後、配信開始が1月と聞いて、だったら新創刊号で特集をやりましょうとなりました。

    『DEVILMAN crybaby』、全10話一挙にNetflixで全世界独占配信開始! 永井豪、湯浅政明、大河内一楼、牛尾憲輔、倉島亜由美、押山清高、KEN THE 390。 豪華過ぎるクリエイターによるトラウマ的衝撃を見逃… https://t.co/pXAOqxJHUP

    とはいえ、作品については僕がその場で見ただけ。デビルマンって古典的名作なので、この解釈は違うとか敏感な人が多いのかなという点が心配でした。

    そこでライターの多根(清史)さん、志田(英邦)さんと一緒にもう一度試写に行って、見終わった後に、喫茶店で「僕は第一特集でやるつもりだけど、君たち2人が絶対やめろと言ったらやめる」と聞いたんです。

    そうしたら2人とも「絶対やるべき」と絶賛だったので、この2人が良いというのは間違いないだろうと巻頭の特集に決めました。

    本当に単発で雑誌を売るだけなら、もしかしたらデビルマン以外の特集もあったかもしれない。

    例えば、すでに熱心なファンがいる作品を取り上げるとか。でも今回はそうじゃなくて、僕自身がいいと思う作品で、しかもテレビでも劇場映画でもない、Netflixのオリジナル作品。

    ネット配信の文化って、僕たちが休刊していた8年間でものすごく成長してきたカルチャーなんですけど、ビジネスモデルが新しい分、既存の雑誌ではなかなか大きく取り上げにくいものでもあるんですよね。

    そんなNetflixの会員しか見れないものを自信満々で表紙にする。僕らはあえてそれをする。だから、ある種の所信表明ではありますね。

    あと、デビルマンは『バイオレンスジャック』が最後の最後にいきなりデビルマンになったり、『デビルマンレディー』であったり派生した作品も面白い。

    そこで古今東西のデビルマンを集める企画にも力を入れたいと、漫画だけでなく、演劇や小説、ゲームブックまで集めた『デビルマンクロニクル』という特集をやりました。

    ――この全編網羅する特集が『CONTINUE』っぽいです。

    ボンボンで5回連載しただけで、単行本化されていない漫画や小説も掲載しています。

    今回の特集では、このデータを集めるのが一番大変でしたね。画像も全部許可を取ったので。

    演劇の『デビルマン』の写真は、じんのひろあきさんという演劇の脚本を書いてた方が、たまたま「当時の写真を見つけた」とツイートされているのを見つけて、直接連絡してお借りしました。

    実写版映画も掲載の許可が取れました。あとデビルマンって絵本もあるんですよ『先生は、デビルマン』。こういう特集をやるのが、うちの雑誌。小ネタなんですけど、全力でやる。

    ――今はウィキペディアがありますが、『CONTINUE』は網羅的な特集をしていて資料的価値の高い雑誌でもありました。

    ウィキペディアの元ネタに特集が転載されていることは多いです。特に連載していた『アーリーコミック列伝』はウィキペディアの元ネタ集みたいになってます。

    『デビルマンクロニクル』については、ウェブでもここまできちんと権利関係をクリアして、網羅的に集めたものはないと思います。

    ――しかも文章が面白い。笑えるものも多いです。

    僕らは『超クソゲー』という本から始まっているので、笑えるものにしたいという思いはあります。それが『クイック・ジャパン』との一番の違いかな。『クイック・ジャパン』は太田出版の看板雑誌なので真面目なんですよ(笑)。

    僕が入社した時、『クイック・ジャパン』は3号で、赤田祐一さんという当時の編集長がいて。

    赤田さんはサブカル馬鹿みたいな人で僕は大好きなんですけど、見ていると真面目だし、サブカルの知識はとんでもないし、同じ土俵では戦えない。

    そんな中『超クソゲー』を出して、いいと言ってもらえて。やっぱり面白い、笑えるというのは自分の武器なんだなと思ったんです。

    ――休刊前と比べ、表現規制が厳しくなっていますが、そのあたりは気にしていますか。

    いや、あんまりないですよ。Twitterアカウントの運用はプチ林なんですけど、内容に関しては完全に任せていますし、『CONTINUE』で特定の個人を腐すことはもともとやっていなかったですから。

    ファミ通の悪口とか『CONTINUE』をパクった雑誌を腐すというのはありましたけど、それはプロレスみたいなもので、会うとちゃんと挨拶しますし(笑)。

    ――第2特集の恒例の「ゲームオブザイヤー」は、クソゲーのランキングもつけます。シャレではありますけど、今のご時世だとマジギレする人が出てくることも。

    マジギレされても、僕らがそう思ったことは事実なので、それは言いますよ。あと、僕らがいうクソゲーはあくまで味のあるゲーム。つまらないものは入れないです。

    初代『龍が如く』をクソゲーと書いたことで、セガの名越(稔洋)プロデューサーがマジギレして休刊したという噂がネットに流れたんですけど、それは明確に違います(笑)。

    セガの人からは「残念です」と言われたんですけど、それは僕らの見識なので。『グランツーリスモ』の山内(一典)さんも、クソゲーに選んだ数か月後に取材をしていて、その話題もぶつけてますからね。

    僕らは、こいつらのゲームは絶対許さないというのはないので。

    例えばディースリー・パブリッシャーのゲームはベストもクソもどっちにも入っていて、しかも、ずっと仲良くしていただいていますからね。

    僕が東京ゲームショウで唯一挨拶に行くメーカーがディースリーですから(笑)。

    ――今回の「ゲームオブザイヤー」では変化がありました。

    今回はPC、スマホを入れて、初めてオールジャンルでいきました。PCを入れるかはでかくて、記事でも言っているんですけどSteamで配信されているゲームがランキングに多くて。

    やはりSteamを無視することはできないだろうとなり、そこまでいくならモバイルも入れました。

    ――裏表紙では現在話題となった『ポプテピピック』を取り上げています。

    キングレコードの方に『CONTINUE』を復刊しますとメールを送ったら、3分後に電話がかかって来て「ポプテピピックを特集してください!」ってものすごい勢いで言われたんですよ(笑)。

    会って改めてお話を聞いたら、アニメのプロデューサーをされている須藤孝太郎さんがとんでもなく変わった方で、アニメも15分で2回回して、回ごとに声優さんが変わるという、何だそれ(笑)ってなる、ちょっととんでもない内容。

    それで「わかりました、そこまでブッ飛んだ作品なら喜んで」ということで特集したんですが、まさか、ここまで話題になるとは。

    裏表紙に「大ヒット放映中」と入れてますけど、内容が内容なんで「雑誌が出るときに放送中止になってたら笑えますね」って冗談で言ってました(笑)。

    『ポプテピピック』が放送される前は、特集することを周りの人に色々言われたんですよ。「新創刊なんだから硬派な作品を特集するべきだ」とか。

    けど、僕はやるべきだと思った。キングレコードで話を聞いた時『あらびき団』を思い出したんですよね。あの番組も以前『CONTINUE』で特集したんですけど、あれは僕が好きすぎて取り上げたんです。

    当時周りのスタッフもみんな好きで、バラエティーの特集は『クイック・ジャパン』でやっているのでダメかなと思ったら「そんなに好きならやればいいじゃん」と言われて。取材で話を聞いたらPerfumeも好きだというから「君らも好きだというならやるか」となった。

    『あらびき団』って、ぶさいく芸人の顔面どアップだけを延々放送したり、ネタをオチまで見せないで途中で切ったりして、言ってしまうと実験映像の嵐だったんですけど、『ポプテピピック』にも近いものを感じたんですよね。

    ――復活する際に「伝説のサブカル誌」と取り上げたメディアもありましたが、サブカルを意識されたことありますか。

    昔は意識してたけど、今はないですね。オタクとサブカルは仲が悪いとよく言われますけど、2つは根っこは一緒だと思うんです。

    僕もオタクなのか、サブカルなのかよく分からんという時期はありましたけど。ただ、僕は明確にオタクなんですよね。だからサブカルでも『クイック・ジャパン』とは手つきが違う。

    それは赤田さんという”どサブカル”みたいな人が近くにいたから。この人とは同じ土俵では勝てないなと思ってた。

    だから、『CONTINUE』のことを伝説のサブカル誌とか言われると恐縮しちゃいますけどね。

    ソフトバンクのゲーム誌の編集長と一瞬だけバトッたとき、露悪的に「俺たちサブカルだもんね」って使ったことはありました(笑)。

    デビルマンは不動明が人間か悪魔かでグラグラしますけど、それでいえば『CONTINUE』もグラグラした時期があって。

    例えば、ゲームをやった後にアニメをやった時「どっちか、はっきりしろ」と言われたけど、僕はどっちも好きだからどっちも好きでいいじゃないかと思っていて。

    50号までは揺れながら作ってましたね。今は開き直ってますけど。

    ――雑誌の復刊では、心機一転と再び1号から始める場合が多いのですが、なぜ『CONTINUE』は休刊前のつづきである『51号』から新創刊を始めたのですか。

    僕らは明確に『51号』にすべきと思っていました。実は51号にするのは大変だったんです。創刊号だから買うという人を考えると、0号だったり、1号だったりと新しく始めた方がいい。

    会社からは「そこまでこだわることか」と言われたんですけど、「51号じゃなきゃダメだ。51号ということに意味がある」と言って押し切りました。

    いまでも0〜50号までを大切に持っている人、復刊を待望している人がいる中、全然違う雑誌ですよと1号で再開したら裏切りだと思ったんです。

    同じ雑誌として出すのが大事だし、そこは外しちゃいけない。

    51号であれば、僕がどういう気持ちで『CONTINUE』をまた作るのか、読者には伝わると思った。だから会社には「前の読者を信じて僕は51号にする。だから会社はその僕を信じてくれ」と言いました。

    ――編集長に戻った今、営業部長の頃よりも楽しいですか。

    楽しいですけど、家庭を考えるとちょっと大変ですね。営業は徹夜とかはしないですから。お正月もずっと家で作業をしてました。

    『CONTINUE』をやめた8年間で大きかったのは子供が生まれたことです。

    ちょうど50号を作っていて、最後の最後、編集後記を書く直前に子供ができたっていうことがわかったんですよね。

    その前までは「なんで雑誌は売れているのにやめなきゃいけないんだよ」とか思ってたんですけど、子供ができたってわかったとき、40の直前で『CONTINUE』みたいにマイブームだけで勝負することからは卒業しろってことなのかなと思った。

    その直前までは気分的には荒れてたんですけど、だから50号の編集後記ってすごく穏やかで。

    雑誌をやりきったこともあるし、今後は子供のために生きていくのもいいかと思って。

    その子供が大きくなって、ジョン・レノンじゃないですけど、もう一回雑誌をやってみっか!ってのもあります。

    また子供がいい具合にオタクになっていて、『CONTINUE』のマリオの特集を読んでいるのを見て、やっぱりマリオって偉大なんだなと改めて感じますね(笑)。

    柴さんと一緒に作った『渋谷音楽図鑑』も大きかったです。

    僕、サブカルも好きなのでフリッパーズ・ギターの本をずっとずーっと作りたかったんです。本当にずっと。それを作りたいがためにこの業界に入ったのもあった。

    でも、小沢健二さんも小山田圭吾さんも核心に触れることは絶対しゃべらないですから、フリッパーズのプロデューサーである牧村憲一さんにお話お聞きたいなと思った。

    結局『渋谷音楽図鑑』は、牧村さんが戦後から始まる渋谷と音楽の系譜を語った本になったんですけど、それを作ったのが2017年の6月。

    あれで、ある種自分のやりたい仕事は終わった。もう単行本で作りたい企画はないわ、ってなっちゃって。単行本の編集者としては、そこで一段落した頃に『CONTINUE』を復活する話がきました。

    ――復活した『CONTINUE』で今後やっていきたいことはありますか。

    次から田中圭一さんの連載も始まりますし、漫画や読み物、ノンフィクション的なものとかも取り組みたいですね。

    これは話が少し変わるんですが、僕らが8年ぶりに戻ってきたら、すっかり焼け野原になっていた。

    僕らみたいなことをやろうとした雑誌、『オトナアニメ』や『GAMESIDE』、まさかの『ゲームラボ』まで全部なくなってたんです。

    同じようなことをやろうとしていた人が全員いなくなっちゃったので、そこに戻ってきたからには面白くやれればいい。

    今一番人気があるかはわからないけど面白い。僕らが声を大にして面白いぞと言えるものを取り上げたいです。

    ――Perfumeはどうですか。

    Perfumeもおいおい出てほしいですね。彼女たちは世界的なブレイクを果たしましたけど、あえて以前と変わらず、ユルい企画をやれたらいいなと思います。また浅草の花やしきに遊びに行くとか(笑)。

    ――ベテランライターが多い雑誌ですが、新しいライターさんとの仕事はどうですか。

    巻末でも募集をしているのでぜひ。以前から引き続きのライターは来てますけど、もう少し若い感じも欲しいなというのもあります。

    45号でやった『劇場版エウレカセブン』京田知己監督の7万字インタビューは僕が書いたんですけど、休刊前の最後の方は自分が書くようになっていて、それがドツボの始まりだったのかもしれません。

    ライターさんに良い記事を書いてもらう方がやっぱりいい。雑誌も一回リセットされたので、そっちの方向でやりたいです。

    ――新しいライターはどういう人がいいですか。

    フットワークが軽い人がいいですね。酷い目にあってもへっちゃらな人とか。

    ――岡本夏生さんを取材しても大丈夫な人ですね(笑)。

    岡本夏生さんはもう一回やってもいいんじゃないかという話もあって、豪さんも「やる」というと思うんですけど、現場を仕切る自信がない(笑)。

    人身御供みたいに行く人がいれば、いつでもやれますよ。その取材を乗り越えれば、この業界にいて、それ以上大変な取材はもうないと思います(笑)。

    BuzzFeed JapanNews