2月3日、Twitterのトレンドワードに「吉野家コピペ」というワードが浮上しました。
きっかけはソフトバンクの「SUPER! FRIDAY」キャンペーン。ソフトバンクユーザーなら牛丼が無料になるキャンペーンで、吉野家前には客が殺到しました。
そのようすを見たTwitterユーザーが「吉野家コピペ」の改編を投稿。「今の世代には通じない」など話題になりました。
そもそも「吉野家コピペ」とは
吉野家コピペとは、17年前の2001年に流行したテキストのこと。ブログが一般的になるよりも前に、ネットには「テキストサイト」と呼ばれる、文章だけをアップする個人のホームページが流行していました。
そのうちのひとつで公開されたこの文章は、その特徴的なリズムから一躍大人気に。当時のネットの雰囲気を象徴する文化のひとつとされています。
以下、吉野家コピペの全文です。
昨日、近所の吉野家行ったんです。吉野家。
そしたらなんか人がめちゃくちゃいっぱいで座れないんです。
で、よく見たらなんか垂れ幕下がってて、150円引き、とか書いてあるんです。
もうね、アホかと。馬鹿かと。
お前らな、150円引き如きで普段来てない吉野家に来てんじゃねーよ、ボケが。
150円だよ、150円。
なんか親子連れとかもいるし。一家4人で吉野家か。おめでてーな。
よーしパパ特盛頼んじゃうぞー、とか言ってるの。もう見てらんない。
お前らな、150円やるからその席空けろと。
吉野家ってのはな、もっと殺伐としてるべきなんだよ。
Uの字テーブルの向かいに座った奴といつ喧嘩が始まってもおかしくない、刺すか刺されるか、そんな雰囲気がいいんじゃねーか。女子供は、すっこんでろ。
で、やっと座れたかと思ったら、隣の奴が、大盛つゆだくで、とか言ってるんです。
そこでまたぶち切れですよ。
あのな、つゆだくなんてきょうび流行んねーんだよ。ボケが。
得意げな顔して何が、つゆだくで、だ。
お前は本当につゆだくを食いたいのかと問いたい。問い詰めたい。小1時間問い詰めたい。
お前、つゆだくって言いたいだけちゃうんかと。
吉野家通の俺から言わせてもらえば今、吉野家通の間での最新流行はやっぱり、ねぎだく、これだね。
大盛りねぎだくギョク。これが通の頼み方。
ねぎだくってのはねぎが多めに入ってる。そん代わり肉が少なめ。これ。
で、それに大盛りギョク。これ最強。
しかしこれを頼むと次から店員にマークされるという危険も伴う、諸刃の剣。素人にはお薦め出来ない。
まあお前らド素人は、牛鮭定食でも食ってなさいってこった。
このテキストが2ちゃんねるなどの掲示板に貼り付けられるなどブームになりました。
17年前のテキストが、2018年のTwitterトレンドワードになったことに、生みの親はどう思っているのでしょうか。
吉野家コピペの作者である新爆さん(@shinbaku)に会ってきました。
「トレンドでEXILEよりも上になって感無量です」
新爆さんが運営していたテキストサイト「NOTFOUND」で、吉野家コピペは生まれました。
新爆さんは現在39歳。2014年に公開されたライターのヨッピーさんの記事では雑誌の編集とライターをしていると答えていましたが、現在も変わらず編集&ライター業とのこと。
新爆さんは吉野家コピペの話題をどう見ていたのでしょうか。
「話題になっていることは知人から教えてもらいました。知らない人からTwitterで200人くらいフォローされました」
「けど、俺、だいたい競馬と酒のことしかツイートしないから、一回フォローされてもどうせすぐにフォロー外されると思います。『こいつ危ない奴じゃん』って。それが今から嫌で嫌で」
節分だった2月3日のTwitterトレンドワードは1位が「恵方巻き」で、次いで「吉野家コピペ」がランクインしていました。
「恵方巻きの次ってすごいですね。だって、その瞬間は吉野家コピペがきゃりーぱみゅぱみゅに勝っているんでしょ? その瞬間だけは。すごいよね。ぺこ&りゅうちぇるとか、EXILEよりも上ですもんね」
「まぁ感慨深いよね。17年前の牛丼屋の出来事が、ぺこ&りゅうちぇるを抜いているんだもんね」
「嬉しいというよりは恥ずかしいですね。常に牛丼食べて威張っている人みたいで。あと、改編してツイートした人はちょっと炎上しちゃったんですよね? 当時だったら俺も炎上しているんだろうな〜とは思った」
なんで「新爆」っていうの? 昔のインターネットの話
吉野家コピペはブログという言葉もない時代に生まれた新爆さんの日記。「NOTFOUND」にはほかの日記もあるのに、なぜ吉野家だけが話題に?
「それ自分で言ったらイタくないですか? 『こいつまだ17年前のこと言っているぜ』って。酒飲みがら渋い顔して『うん、あれはリズム感がね』とか。どんだけそこに止まっているんだよって。あと俺、なか卯派ですからね」
そもそも“新爆”という名前の由来とは。
「松本人志のファンサイトで『松脳』というのがあって。掲示板(BBS)と大喜利コーナーみたいな。俺は、たけしファンでもあって、松本ファンでもあったんです。そしたら、そのサイトの中で喧嘩みたいになって。『松本、たけし、とんねるず、どれが1番おもしろいか』みたいな。朝まで投稿の打ち込み合いですよ」
「それで大喜利で決めようやと。そこで俺が使った名前が『新・爆笑王』。そして大喜利で全部負けちゃって、向こうが名前をいじりだして新爆になったという」
「今だとあまりないかもしれないけれど、喧嘩から発展して一回会おうとなったんですよ。場所は大阪・梅田。殴り合いになってもおかしくない。結果、ネットでは『ただじゃおかない』とか言っていたのに、会ったらみんな大人しそうな“もやしっ子”で普通に『はじめまして』とか言ってお土産とか渡しちゃって。それで飲みに行こうやってなって、そのうち何人かは今でも仲良いです。結婚式に祝儀包んじゃったりして。まぁそーゆう時代があったんです」
今回の吉野家の混雑をみて
17年前の吉野家コピペができたときも、150円引きのキャンペーンで混雑していたそう。今回の吉野家の混雑を新爆さんはどう見ていたのでしょうか。
「やっぱり当時と変わらず、殺伐としているべきとは思いますね。あそこは僕らみたいなアウトローな連中の行くところで」
「あとそもそも俺、ソフトバンクじゃなくてauなんです。吉野家コピペが話題になった2月3日はミスタードーナツの千駄木店に並んでいました。『三太郎の日』でドーナツ216円分が貰えるんです。そこにしっかり並んでいました」