高校生ラップ選手権や、フリースタイルダンジョンなどで世は空前の「ラップブーム」
それはヒップホップシーンにだけでなく、行政にも影響を与えている。
昨年7月の東京都知事選では、都選挙管理委員会が主催となり、ヒップホップイベント「TOHYO CYPHER」を開催した。
自治体のPRにラップが生かされる例も少なくない。
そんな中、3月8日、「第1回地方創生まち自慢大会」があった。これは転職サイトなどを運営するビズリーチが開催したもの。
同社は北海道天塩町、長野県飯綱町、鹿児島県長島町の3町の人材募集を支援することを決定。このイベントはその先駆けとなるものだ。
会場には、それぞれの町の副町長が駆けつけた。
イベント冒頭では、各副町長から町の魅力をプレゼンテーションしたり、参加者との交流会が開かれたりした。
その中で「ラップ大会」も開かれた。これは社会人同士のフリースタイルバトル「ビジネスマンラップトーナメント」とのコラボレーション。
まずは各町の“応援ラッパー”がそれぞれの特産品をお題にフリースタイルバトルをした。
次に副町長自身が町の魅力を伝えるラップを披露。通常、フリースタイルは即興で行うものだが、今回はパワーポイントであらかじめ歌詞を映しながら行った。
天塩町の齊藤副町長は、地元名産品の乳製品「トロケッテ・ウーノ」を用いてこのようなパンチラインを披露。
この命を天塩(てしお)にかけて 町を育てる手塩にかけて
天塩の自慢はトロケッテ・ウーノ 他のやつとはひと味ちがうの
それとめっちゃデカイ淡水魚 「イトウ」という名の幻を
見れるのはまさしく自然の恩恵 試される天塩から地方創生
飯綱町も「地方創生なら飯綱(いいづな) きっと言っちゃう『いいっすな〜』」というライムで会場を沸かした。
ラップブームは地方創生に繋がるか? プロに聞く
冒頭でも述べたが、いまはラップブーム。
行政や企業のPRとコラボする機会を見かけるが、プロのラッパーはどのような見解なのか。
今回、審査員を務めたラッパーのKEN THE 390さんはBuzzFeed Newsに話す。
「本当にフリースタイルが流行っているなと実感しますね。地方活性化にも生かされるなんて昔では想像できないことでしたから」
「ラップはギターとかピアノとかと違ってまったく知識がなくても、言葉をリズムにのせて歌うだけなので、誰でもできるんですよね。そこで起きるミラクルがおもしろいんですよ」
ラップと地方活性化についてはどう思っているのか?
「例えば、自治体がホームページとか演説とかで街の良さを訴えても届く人は僅かだと思うんです。けれど、ラップというひとつのツールを通せば届かない層にも届くと思うんですよ」
「しかも、『ラップやって』という無茶振りに応えるユニークな副町長がいる町だったらなんか楽しそうと思えますよね。私たちの町はいいですよー! と訴えるよりよっぽど効果的だと思います」
イベントに参加していたIT企業に勤める男性は(32)は、感想をこう話す。
「正直、地方移住にも興味ないし、活性化とかどうでもいいけれど、ラップが好きなので観に来ました。今日のイベントで地方に移住したいとは思わないけれど、こんな町があるんだってことはわかったし、旅行で行ってみようかな、と思いましたね」
今後も、ラップは“届かない層に届ける”ひとつのツールとして生かされるのだろうか。