go to content

「絶対に許されない」 痴漢被害のブラックボックス展 主催者が語る

被害の声は「嘘っぽいと思っていた」。その判断が対応を遅らせた。

痴漢被害を訴える声が上がり、問題になっていた「ブラックボックス展」。主催者のなかのひとよ氏(@Hitoyo_Nakano)が騒動後、初めてメディアの取材に応じ、謝罪するとともに当時の状況を説明した。

BuzzFeed Newsは、当初からなかのひとよ氏(以下、なかの氏)に取材を申し込んでおり、今回、匿名性を担保することを条件に取材に応じた。

なぜ、痴漢被害の訴えに応じ、対策しなかったのか。なかの氏は「痴漢は想定していなかった」「被害の声は嘘だと思っていた」と語った。

以下、ブラックボックス展の開催の経緯から振り返る。

「ブラックボックス展」とは

ブラックボックス展は、5月6日から六本木のギャラリー「ART & SCIENCE gallery lab AXIOM」で開催されたアート展だ。

フォロワー20万人を超えるTwitterアカウント「サザエBOT(@sazae_f)」の運営者として知られる「なかのひとよ(@Hitoyo_Nakano)」の初の個展だった。

内容は、暗闇の部屋に入るだけ。展示物があるわけではなく、暗闇の部屋に入るという体験自体が「アート」だった。

暗闇の中で、来場者同士の顔も見えない。そこで「キスをされた」「胸を揉まれた」など痴漢被害を訴える声が会期中からネット上に多数上がり、批判が広がった。

そもそも、どういう経緯で開催されたのか。

「私が企画案を持ち込み、合意して開催に至った」

待ち合わせをした都内の喫茶店。予定時刻より早くなかの氏は到着していた。アイスコーヒーを口にしつつ、反省した表情で話を始めた。

「今回取材をお受けする前に、一連の騒動につきまして、まずはこの場を借りて再度謝罪を申し上げたく思います。多くの方にご迷惑やご心配をおかけし、大変申し訳ありません」

謝罪の言葉を述べたあと、開催の経緯を話す。

「昨年、アルス・エレクロトニカで賞をいただいたことをきっかけにギャラリーからお声かけいただきました。私が企画案を持ち込み、合意というかたちで開催に至りました」

なかの氏は、ベルリンに拠点を置いている。一時帰国したタイミングで誘いを受けた。企画案へのギャラリー側の反応は「おもしろい」と良かったという。

来場者に渡された「誓約書」が興味を煽った

事前に展示内容は公表されず、来場者は会期終了まで内容を口外することを禁止されていた。誓約書にサインした人のみが入れた。

ただし、「本展覧会を『絶賛する感想』。または『酷評する感想』」の投稿は許可されており、Twitter上には、事実なのか嘘なのかわからないツイートが多数投稿され、人々の興味を煽った。

なかの氏は、こう語る。

「『暗室という環境』『秘密の同意書』には、情報過多の時代だからこそ、外側からの情報を遮断し、内側の心と向き合ってほしいという思いをこめました」

さまざまな感想がTwitter上に投稿される中、痴漢被害を訴えるものがあった。なかの氏は、会期中からそのような声は把握していたという。なぜ中止せず、開催を続けたのか。

痴漢被害は「嘘っぽい」と思っていた

「実際に被害に遭われた方はそのような声はあげないのではないかと。また、直接の問い合わせは会期中、ギャラリーにはありませんでした。私の至らなかった部分です」

「痴漢被害を想定していなかったのも、反省すべき点であります。悪く捉えられるかもしれないが、嘘っぽいというか本当に被害に遭われた方が書いている文章ではないと思ってしまい、開催を続けました」

暗闇で何も見えない空間。内容は秘密で、絶賛か酷評しか許されない。そこから生まれる事実と虚構が入り混じるネットへの書き込み。

その結果、なかの氏自身が痴漢の書き込みは「虚構だ」と判断してしまった。

終了後も痴漢被害を訴える声は続く。それについても「もちろん見ていました。仮にあったとしたならば事件なので、これはTwitter上でどうこうする問題ではないと思いました」と話す。

「疑っているわけではないのですが、被害をあげている方には実際に事情を尋ねていました。しかし、冷やかしだったり、事実がなかなか確認できない状況で心苦しい思いでした」

「真実がわからない間の『想像する行為』は、会場についた後の暗闇の中でも続き、もしかしたら本展について様々な憶測が飛び交う現在も、続いているのかもしれません」

安全面はどうなっていたのか

入場するにあたり、持ち物検査はなかった。極端に大きい荷物は邪魔になるため、一時的に預かったが、バッグ等は持ったまま入場できる。痴漢被害以外にも危険行為は想定できたのはないか。

「痴漢被害以外の危険性については、暗室という空間のため、来場者同士が衝突したり、転倒して怪我をしたりしてはいけないと思い、事前にスタッフと何度もシュミレーションを重ねました。その上で、会場内の段差をなくしたり、壁の角には気泡緩衝材を貼り付けたり、対策を取っていました」

「また、出入り口には常にスタッフを配置し、会場内の巡回や、定期的にカーテンを開けて光を差し込むような取り組みをしていました。大きな物音や声が上がった際には、すぐにカーテンを開けて駆けつけるなどの処置をしていました」

万一の事態に備え、同意書にはあらかじめ『会場内において発生した一切の事故や怪我・病気などの責任を負いかねますことをあらかじめご了承ください。上記内容に同意し、署名を行った方のみご入場可能となります』と掲載し、サインした人だけが入場できた。

口頭でもスタッフから『お気をつけてお入りください』と注意を呼びかけていたという。

なかの氏は続ける。

「しかし結果として、今回のような騒動が起こってしまった。すべては私の配慮の足りなさ、未熟さゆえの結果です。深く反省しています」

会場は事前検査・点検をしており、消防法など法的な問題がないことは確認していたという。会場の内側には二重カーテンを設けるかたちで暗室が作られており、誘導灯も設計上の空間内に設置されていた。

しかし、部屋の中を監視するための暗視カメラなどは設置していなかった。

同展は、6月13日より「本展覧会に適した精神・態度基準に達する者でなければ入場することができません」と、バウンサーと呼ばれる“門番”によって入場者の選別が始まった。

選別基準は、バウンサーの独断で平等に判断すると公式サイトでも告知していた。また、同日から入場料1000円の徴収もはじまった。

その理由を話す。

「会期途中から床を剥がすなどの迷惑行為をする人たちが現れました。バウンサーによる選別や入場料はいずれも、入場の敷居をあげることを目的にした施策です」

同展には多くの人が並び、5〜6時間待ちの日もあった。近隣店舗から苦情が入ったとのこと。選別については、バウンサーの独断と平等に判断と告知していたが、実際は違った。

「もともと展示は個々と向き合うことを目的としているので、学生の部活帰りなどの集団は基準外にしました。会期中、集団の来場者が会場内で騒いでしまうという報告も挙げられたため、それ以降は個人での来場者を優先的に入場させる基準に変更をしました」

女性を優先的に選んで入場させていたという指摘もあがったが、「男女という基準での選別が行われていたという疑いは、まったくの誤解です。女性を優先的に選んでいたことはありません」と否定した。

痴漢はとっさのものだったのか

個展終了後、なかの氏は管轄の警視庁麻布署に何度も出向いて、捜査に協力。個人的にも、ネット上で何か手がかりがないかと調査を続けているという。

犯人はどうやって痴漢に及んだのか。仮に暗闇と知らずに展示に来たとして、咄嗟に「痴漢ができる」と思ったのか。

なかの氏が痴漢被害の声に対して、疑いを持った理由はそこにあるようだ。

「男性か女性かもわからない。容姿もわからない空間です。疑うわけではないのですが『可能なことなのか?』という。真っ暗なので、ぶつかることはあり得ます。そこから痴漢に発展するというのは想像しがたいです」

「常習犯が現れたのか。だとしてもバウンサーの遠別がありますので、それも考えにくい。(部屋の中にいる)制限時間を設けてなかったので、ずっと中にいたのか。しかし、定期的に巡回したり、光を差し込んでいたりするのですが、本当に考えにくい。それも暗視カメラがあれば確認できたことなのですが」

共犯説は完全否定

個人投資家で作家の山本一郎さんが書いた記事には、ブラックボックス展関係者の次のような証言が書かれている。

「暗闇で、女性の来場者に接触をしたり、場合によっては腕をつかむなどの『演出』をしてはどうかという企画がありました。実施されたかは存じません」

つまり、女性に触るような行為は展覧会の体験の一部であり、それが「痴漢」と判断されたのではないかという指摘だ。

これについては真っ向から否定する。

「私が黙っていたことが原因かもしれませんが、有る事無い事書かれていて、山本一郎さんが書かれていたことはすべて嘘です。情報提供者が嘘を言っているのか、その情報提供があったのかどうかわからないですが」

「私は過去にも度々炎上しており、賛否両論な活動をしてきて、よく思われていない方もいらっしゃいます。あえて否定することもしなかったんですけれど、ネットだと実際に来ていない方がある意味妄想的に、そうあってほしいバイアスでそうなったのか。なので、いわゆる共犯説は100%否定します。悲しいです」

来週のイベントには予定通り参加

また、8月19日から開催されるイベント「インフラ INFRA 2017」には予定通り参加するとのこと。

当初は、主催者側に辞退を申し出たが、主催者側から「このような状況だからこそ、出てほしい。起こってしまったことは起こってしまったこと」と説得された。

「私もそれなり覚悟を持ってやってきたことですから、このような状況だからできる表現を慎重に行っていきたいと思います。もちろん反省を踏まえた上でできることを」

被害を受けた女性に「全力で寄り添った活動を」

被害を受けたとする女性らは近く、主催者らに対して、損害賠償を求める裁判を起こす。

なかの氏は「事実の究明を急ぎます。本当にあったことならば私も許せないことですし、できる限り協力したいです」と話す。

「声をあげて下さっている方の思いに寄り添い、慎重に対応を進めていきたいと思います。敏感に扱われなくてはいけない問題でもあるため、公での発言は極力控えさせていただきたですが、今後も声をあげてくださった方の思いに第一に寄り添い、対応については丁寧に、個別で進めていきたいと考えております」


Takumi Harimayaに連絡する メールアドレス:Takumi.Harimaya@buzzfeed.com.

Got a confidential tip? Submit it here.