深夜アニメ20本視聴がノルマ!? 近畿大学の講座が話題に

    目的はいったい?

    近畿大学の講座が、ガチアニオタ向けだと話題になりました。

    近畿大学 / Via kindai.ac.jp

    上記は同大学の平成28年度文芸学部日本文学専攻の「映像・芸術論1」の講義要綱。

    深夜枠を中心に週に20本以上アニメを視聴しておくこと」が宿題として設定されていることに、「ハードルが高い」などの反応が寄せられています。

    BuzzFeedは、同講座の担当者・町口哲生(@tetuomachiguchi)さんに講義を開いたきっかけなどを聞きました。

    町口哲生

    町口哲生さん

    「ハードルが高いとは思いません」

    ーー「深夜アニメ20本」という課題に驚きの声も上がっていますが。

     

    現在、アニメは月間80本くらい放映され、深夜アニメはその半分くらいではないでしょうか。深夜アニメを中心に20本はそんなにハードルが高いと私は思いませんね。

    真面目にアニメを論ずるにあたり、ある程度の本数を観ていないとトレンドがわかりませんから。

    たとえば 2010年代は、2011年の「TIGER&BUNNY」にはじまり、「サムライフラメンコ」や「ワンパンマン」。現在放映中の「コンクリート・レボルティオ 超人幻想」や「僕のヒーローアカデミア」など、ヒーローものが多い印象があります。

    超人やヒーローが活躍するなんてすごく単純なプロットなんだけれど、各作品を観るとそれぞれが独自色を出して視聴に耐えうる。でもこれらを観てないと、どこに独創性があるかがわからないんですよね。

    したがって、 10本では物足りないので、 15本か20本くらいが適切な本数だということです。

    それにハードディスクでアニメを録画して観た場合、 CFをカットして本編を観るなら1本あたり20分強だし、1.3倍速とかいくらでも時間を短縮する機能がありますよね。

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    コンクリート・レボルティオ 超人幻想

    http://www.amazon.co.jp/dp/B009TWJ7HM

    少女革命ウテナ

    多文化を横断した芸術のなかにアニメを置いたら

    ーーこの講座を開こうと思ったきっかけは?

    もともと私の所属は文芸学部の文化学科で、思想史、現代思想といった堅めのものから、サブカルチャー論、カルチュラル・スタディーズ購読といったサブカルチャー寄りの講座を担当していました。が、学科の改編で現代文化コースがなくなったため、文学科(日本文学専攻)へ移籍。

    本講座の前任者がいとうせいこうさん、その前がたしか島田雅彦さんが担当していた講座で、私は4年前からこの講座を担当しています。したがって島田さんやいとうさんが取り上げてこなかったであろうポップカルチャーを含めた映像・芸術をテーマにしようと考えたわけです。

    ーーこの講座の目的はなんでしょうか。

    1回生向けの映像・芸術基礎の延長に、2回生向けの本講座があります。基礎の方の前期では欧米のアート・アニメーション(本年度は諸事情でアニメ)。後期では欧米の映画史をテーマにして教えています。

    他方、本講座の前期では日本のアニメ、後期ではハリウッド映画を取り上げてます。したがって特権的にアニメを題材にしているわけではなく、4つの講座で総合的に映像・芸術を学ぶという趣向ですね。段階を踏んで、基礎の方はわりとオーソドックスな映像・芸術、本講座の方はポップなそれという順番で学習していく案配です。

    ーーなるほど。

    目的は何かというと、日本のアニメが好きな学生は、たとえばチェコの人形アニメーションやドイツの抽象アニメーションを知らない人がほとんど。

    同じようにハリウッド映画の好きな学生も、イタリアのネオレアリズモやフランスのヌーヴェル・ヴァーグの作品を観たことがない人が多いです。

    それでは現代のアニメやハリウッド映画がいかに特異な表象スタイルを有した映像・芸術であるかがわからない。

    要するに、多文化を横断した映像・芸術のなかにアニメやハリウッド映画を置いてみよう。そうしたらもっと異なった観点から作品を観られるのではないかという問いかけがあります。

    また文学科(日本文学専攻)の講座なので、文芸評論家になりたい人が何人かいますよね。したがってどのような学問的な観点から作品を読み解けるかといったノウハウを伝授する目的もあります。

    そう考えると、文芸評論家になりたい人向けの講義なのかもしれませんね。もちろんオタクや映画狂、あるいは普通のみなさんも楽しんでもらえるとは思いますが。

    「輪るピングドラム」で映像表現の独自性を学ぶ

    ーー講座で取り上げる作品はどういった基準ですか。

    人気があり、しかも論ずるに値する作品ですね。たとえばアニメだったら「少女革命ウテナ」で有名な幾原邦彦監督。

    彼の作品は基本的にメタフィクションなので、さまざまな仕掛け、たとえば色彩設計、演劇的手法、バンク(変身シーン)や止め絵を多用してテンポよく物語を展開させますよね。

    講義では11年の「輪るピングドラム」を取り上げて、いま述べたような映像表現の独自性の話をしたり、文学や芸術からの引用をします。

    たとえば宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」における「蠍の炎」が少年2人の自己犠牲の象徴として最終話で使われているとか、クリムトの「接吻」やモネの「日傘の女」がどこで使われ、どのような効果を作品に与えているかといったことを指摘しています。

    あとは地下鉄の車内で丸囲みで「95」の赤い文字が表示されますが、この作品がオウム真理教が起こした地下鉄サリン事件への応答と解釈することができる。したがって「何者にもなれない」私たちが、どのように主体を変革することができるかという問いかけがあるといった堅い話もします。

    ーー映画はどのような選定?

    映画だったらJ.J.エイブラムスの「ミッション :インポッシブル3」。「えー、なんで?」という声が聞こえそうですが、シド・フィールドらが確立したハリウッド映画の脚本術を見事に踏襲した名作という読みができる。ハリウッド映画は三幕構成でできています。

    第1幕の設定の30分では、観客を映画の世界に引き込むため、引き金となる出来事が起こり、主人公の状況が良い方向か悪い方向へ転換する。

    次の第2幕の対立の1時間では、物語がどんどん進んでゆき主人公が引き返せなくなり、最後に必ず不幸な出来事が起こる。この作品の場合、ローマ編で敵と戦う部分が該当しますが、主人公の婚約者が誘拐されます。そして第3幕の解決の 30分では、物語が終局に向かい盛り上がり、ハリウッド映画の場合、最後は大抵ハッピーエンドです。

    ネタばれご免ということで本作の解決はここでは言及しませんが、上海編のパートが第3幕で、しかもひと捻りを効かせたところがエイブラムスらしいといった話をします。

    あとは「ラビットフット」というマクガフィンの謎をスラヴォイ・ジジェクの「ヒッチコックによるラカン」を使って記号内容をもたない記号表現であるとちょっと難しい話を振ったり、他の監督の「ミッション :インポッシブル」、ブライアン・デ・パルマやジョン・ウーのそれとの違いもテーマにします。したがって語ることが多いので、あっという間に講義が終わっている感じですね。

    ーー学生からの反響はありますか?

    来年以降はちょっと影響が出るかもしれませんが、今のところ「話題になってるよね」みたいな感じですかね。履修登録に関していえば、この話題が出回る前に登録は終わってますし、第1週目が暴風警報で休講になったんですよ。したがってほとんど影響はないと思いますよ。

    大学では授業評価アンケートが毎年7月と 12月に実施され、集計結果を観させて頂いてるのですが、ほかの教員の平均値よりかなり上の平均値なので、アニメや映画を使った講義という流れは既定路線ではないかと思いますね。

    私の講義目当てで受験したよというオタクや映画狂の学生さんが今後現れたら、金一封くらいのことを近畿大学はやってくれるはずだと信じて止みません。まぁここら辺はすべて冗談ですが(笑)。

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