CBCテレビ「イッポウ」にBPOが要望 杉原千畝の出生地めぐる報道で

    杉原千畝の出生地をめぐる特集について審議入りしていた。

    放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会は11月7日、名誉毀損にあたるとしてBPOに審議を求められていたCBC、テレビ(中部日本放送)で放送された杉原千畝を巡る特集に関する見解を発表し、「名誉毀損にはあたらない」としたうえで、CBC側に申立人の反論を聞くのが望ましかったとする要望を出した。

    「命のビザ」杉原千畝の出生地をめぐる特集

    ナチス・ドイツの迫害から逃れようとした多くのユダヤ人にビザを発給し、リトアニアの領事館の領事代理として命を救った外交官・杉原千畝。

    CBCの報道番組「イッポウ」では、2016年7月12日から2017年6月16日にかけて、千畝の出生地をめぐる特集を10回にわたり、放送した。

    特集では、岐阜県八百津町が千畝の手記などをユネスコの世界記憶遺産への登録を申請をしたが、「八百津町で出生」という通説が揺らいでいるとし、千畝の戸籍謄本の検証や出生地が書かれた手記の筆跡鑑定などをした。

    千畝の親族が取り寄せた戸籍謄本には、出生地として「武儀郡上有知(こうずち)町」(現在の美濃市)と表記されていたことも含め、「八百津生まれ」の通説に疑義が生じているとし、八百津が世界記憶遺産の申請をしていることを疑問視する内容になっていた。

    一連の放送について、千畝の手記を管理しているNPO法人「杉原千畝命のビザ」とその理事長らが、BPOに「手記は偽造文章であるとの印象を一般視聴者に与え、さらに申立人らがそれの偽造者であるとの事実を摘示するもので、社会的評価を低下させる」とし、名誉毀損にあたると申立ていた。

    BPOによれば、これに対してCBCは「一連の報道は、出生地の疑問やその根拠を再検証したもので、手記が真正か偽造されたものかという判断には踏み込んでいないし、申立人らが偽造したという印象を一般視聴者が抱くとは思えない」と主張していたという。BPOは2月に審議入りを決定。

    見解では、「本件の各放送は名誉毀損にあたらず、放送倫理上の問題もないと判断」とした。

    しかし、番組内で放送された手記が千畝の自筆によるものであるかどうかについて、鑑定事務所の意見と申立人のコメントを対比的に放送するのであれば、申立人にも反論や説明を聞くことが望ましいとし、委員会は今後の取材・報道にあたってこの点を参考にすることをCBCに要望した。