海賊版サイト対策 “はしごを外された”NTTグループはどうする?

    中村伊知哉座長は「もう緊急避難に当たらない」と取材に話した。

    海賊版サイトへの対策をどうするか。議論は白熱している。

    内閣府の知的財産戦略本部「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」が6月22日から開かれている。

    事業者や法学者、弁護士など多方面から有識者が出席し、ブロッキングの是非や、正規版サービスの流通などを議論。

    今後は9月に中間報告書をまとめ、関係省庁の対策強化に生かしていく予定だ。

    ブロッキングは緊急避難に当たるか、否か

    政府は4月13日の知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議(本部長・安倍晋三首相)で、海賊版サイトに対する緊急対策を決定した。

    民間事業者(プロバイダー)が自主的な取り組みとしてサイトへのアクセスを遮断する「サイトブロッキング」ができるよう、制度を検討していく。

    ブロッキングに対しては法的な根拠がないとの批判も上がったが、政府は法制度の整備ができるまで、刑法の「緊急避難」を適応すれば、憲法違反には当たらないと主張。

    一方、慎重派からは「緊急避難」の要件は満たさず、電気通信事業法の通信の秘密侵害罪にあたるなどの反対の意見が上がっていた。

    「もう緊急避難に当たらない」中村伊知哉座長

    BuzzFeed Newsは、検討会議の共同座長を務める中村伊知哉氏に取材した。そこで以下のような発言があった。

    「現時点ではっきりしているのは、いまの段階でブロッキングを実行してはいけないということ。問題の3サイトは事実上死んでおり、ブロッキングをしても緊急避難に当たらない。状況は収まりつつあり、今後どうするかを考えていく段階である」

    政府の発表をうけ、NTTグループは4月23日、海賊版3サイトに対して、ブロッキングを実施することを発表していた。

    これは、サイトブロッキングに関する法制度が整備されるまでの短期的な緊急措置とし、準備が整い次第、ブロックする。合わせて、政府に対し、速やかな法制度の整備を行うよう要望した。

    中村座長は、NTTグループのブロッキング実施宣言についてはこう話した。

    「唐突で私も驚いた。政府の発表に反応して実行するのは、おかしい流れではないがそれでも早いなと。総務省にも聞いたが『我々も急に言われてビックリしている』と。緊急避難にあたらないと誘導してあげないといけない気もしている」

    「政府から『もう緊急避難ではない』と言わないといけないかもしれない。宣言を出せれば出すと思うが、状況を見極めているのではないか」

    知財本部からはしごを外されたかたちのNTTグループ。ブロッキングを実施するのか。

    NTTグループ「ブロッキングを実施する意思は変わらない」

    BuzzFeed Newsの取材に、NTTコミュニケーションズ広報担当者が答えた。

    4月23日の方針に変更はあるかと聞いたところ、「ブロッキングを実施する意思は変わりませんが、今後の政府の対応方針等を見ながら準備を進めていく考えであります」と回答。

    中村座長の緊急避難に該当しないとの発言をうけてもブロッキングを実施するかとの問いには、「政府の対応等を引き続き注視していく考えであります」と答えた。