振袖「はれのひ」会見から一夜 被害者の父親が疑問に思うこと

    「自身のしたことを、一生背負って」

    振袖の販売・レンタル業をする「はれのひ」が突然休業し、成人式に晴れ着を着られない新成人が続出した問題。

    横浜地裁は1月26日、同社の破産手続き開始を決定。同日、「はれのひ」の篠崎洋一郎社長が騒動後、はじめて姿をあらわし、記者会見をした。

    篠崎社長は会見冒頭、「はれのひ株式会社の件につきまして、お客さまをはじめ、各お取引先さまに多大なご迷惑・ご心配をおかけしたことをここで深くお詫び申し上げます。申し訳ございませんでした」と謝罪。

    また「お嬢さま、ご家族さまの一生に一度の成人式を台無しにし、本当に取り返しのつかない事態になってしまったことは、代表取締役である私にすべての責任がございます。本当に申し訳ございませんでした」と述べた。

    会見の要点をまとめる。

    • 詐欺の認識は否定し、「精いっぱいやった」と弁明。
    • 一部で「海外に逃亡している可能性」とも報道されていたが、神奈川県の知人宅にいた。
    • 対応に苦慮していた。どのように対応したらいいか分からず、相談するところもなく、対応が遅れたと説明。
    • 現時点では顧客から預かるなどした振袖約1200着は保管されているという。今後、返還を進めると説明。
    • 申請代理人の吉田進一弁護士によれば、債権者は約1600人で、うち約1300人が新成人らとみられる。負債総額は10億円以上になる可能性があるという。


    この会見を中継で見ていた男性がいる。成人式に「はれのひ」で振袖をレンタルしていた娘をもつ父親のAさん。

    BuzzFeed NewsはAさんに、会見をみて思うことなどを聞いた。

    「式典に間に合わなかった」

    Aさんの娘さんが「はれのひ 横浜みなとみらい店」で振袖レンタルの契約をしたのは成人式1年前の2017年1月。

    振袖のレンタルや当日の着付け、ヘアメイク、前撮りを含めたプランだった。草履とバッグはプレゼントという約束だった。

    契約金の約27万円で現金一括で振り込んだ。

    同年6月中旬には前撮りの打ち合わせをして、襦袢や帯などの採寸。7月中旬に振袖の仕立てが終わり、前撮りをした。その際、スタッフからは「各ポーズ1枚ずつプリントしたものと、そのデータを差し上げます。写真は後日郵送いたします」と伝えられた。

    Aさんが不審に思い始めたのは11月頃。草履とバッグが届かなかったことだ。Aさんが問い合わせても、「発送が遅れており、11月中旬から随時発送予定です」との返答だった。

    2018年1月3日に娘さんが再度問い合わせたところ、「(式前日の)1月7日の午前中到着予定です」と回答があったそう。しかし、7日になっても草履とバックは届かなった。

    「これはもうアウト」とAさんたちは判断し、式前日から急遽、自分たちで振袖などの手配を始めた。

    振袖は娘さんの知人から借りることができた。ヘアメイクや着付けなどは地元の美容室や呉服店が特別に協力してくれた。

    娘さんは午後2時30分~午後3時5分の式典に参加予定だった。着付けが終わったのは午後1時30分頃。

    急いで向かったが、式典には間に合わなかった。

    「自身のしたことを、一生背負って…」篠崎社長に思うこと

    Aさんは会見前日の25日、横浜市の「はれのひ特別相談窓口」に行っていた。

    担当した弁護士からは「正直、お金は戻らないでしょう」と言われた。

    「正直、想像していた通りの答えでした。もうここまで来ると、逆に冷静に会見を見ています。ただ、悔しくて。前撮りした写真は結局届いていません。なんとか今からでも、同じ被害に遭ったみなさんに渡して欲しいです」

    Aさんが篠崎社長の会見をみて思ったことは、「嘘が多い」ということ。

    「写真やプレゼントなど、時間的に余裕があったのにも関わらず手に届かなかった。スタッフの態度も疑問に思う部分が多かったです。 もっと早くから逃げるつもりだったのでは? と考えてしまいます。せめて成人式が終わってから、破産するなり、逃げるなりしろと思いました」

    最後に篠崎社長に伝えたいことはあるか? との問いにはこう答える。

    「お金を返してくれとは考えていません。大切な一生に一度の思い出はかえってきませんから」

    「会見では着物を預けた方、購入者、レンタルでも希望者に渡すような話がありましたが、とにかく写真が欲しいです」

    「刑事事件にはならないかもしれません。しかし、社会的制裁は、単に懲役などよりも厳しいと思います。自身のしたことを、一生背負って生きていってほしいです」


    はれのひは、書類の受領を希望する債権者に対して、「債権者連絡先届出書」に必要事項を記入し、はれのひの破産管財人室宛に返送する内容を説明。宛先は以下。

    はれのひ株式会社 破産管財人室

    〒212-0013 川崎市幸区堀川町580ソリッドスクエア西館3階 多摩川法律事務所内

    電話 044-544-8558、044-544-8566、044-544-8570、044-544-8586

    受付 月〜金曜日(祭日除く)午前10時〜午後4時

    対応は1月29日から。

    サムネイル写真=時事通信

    BuzzFeed JapanNews