6月1日に公開された映画「デッドプール」。
公開初日は13.6万人を動員。興収は1.6億円を達成し、記録的作品になっています。本作の魅力はどこにあるのでしょうか?
「安っぽいB級映画ではない」
「まずデッドプールは超大作ではありません。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』や『バットマンvsスーパーマン』などと比べると制作費は5分の1以下。格段に安く作られた映画です」
こう話すのはアメコミ事情に詳しい光岡三ツ子さん(@mitsumitz)。光岡さんにデッドプールの魅力を熱く語ってもらいました。
「デッドプールはもともと銃と刀を使いこなすハードコアなキャラで、それを再現するため本作では血がドバドバ出るバイオレンス描写にこだわっており、海外ではお子様は見られないR指定映画」
「そうと聞くと、安っぽいB級映画を想像するかもしれませんが、デッドプールに限ってはそんな先入観を持ってはダメ。主役を演じるライアン・レイノルズは、デッドプールの熱烈なファンで、11年間も映画化のために骨を折ってきました」
「また、やっと夢の映画化実現にこぎ着けたレイノルズの入魂の演技と、原作のおもしろさを知り尽くした脚本家によるストーリー。そして長編映画は初挑戦ながらもVFXとアクション撮影のベテランであるティム・ミラー監督のみごとな映像処理。そこに『マッド・マックス 怒りのデスロード』などを手がけたサウンドデザイナーJunkie XLのサントラが被る本作を見れば、超大作アメコミ映画と並べても劣ったところなど1つも見つけられないはずです」
ほかのヒーローと違うところは?
「また、デッドプールの思い切ったバイオレンス描写や、R指定ならではの"オトナの描写"。振り切ったギャグなどはアメコミ映画に今までなかった要素を付け加え、一段上のエンターテインメントに仕上げていると言っていいでしょう。世界中で大ヒットを飛ばした本作は、その影響で今後アメコミ映画にはこういう路線が流行するだろうと言われているくらいの成功作なのです」
「デッドプールがほかのアメコミヒーローと違う最大の点は、自分がコミックキャラであると知っているところ。原作コミックでも彼はこの特殊能力(?)で異彩を放ち、勝手に読者に話しかけたりする破天荒さで愛されてきました。それが映画でも生かされています」
「それに過去の関連作や、"中の人"のライアン・レイノルズについてのギャグ。監督や脚本家が好きな映画などの話がメタ的なジョークとして大量に登場します。言葉だけじゃなくて視覚的な仕掛けにもなってるので、映画のストーリーを追いつつ、そういうオマケの部分を楽しめます」
「気分がスカッとするカタルシス」
「そういう意味では映画好きな人ほど楽しめる作品と言えますし、2回、3回と観れる作品でもあるのです。デッドプールは、近年複雑化するアメコミ映画の中でちょっと薄くなりつつある『気分がスカッとするカタルシス』が味わえる作品なのです」
「彼は一見、自己中とか無責任とかいう言葉がお似合いのひねくれたキャラですが、映画はそんな正統的なヒーローもののストーリーでもあるのです。そのカタルシスが心地よくて、何度も見たくなってしまうのですね」