「お前には、まだ変なプライドがある。バカになれ」 松坂大輔、復活の鍵を恩師が語る

    「平成の怪物」は蘇るのか。

    信じられない光景だった。

    かつて「平成の怪物」と呼ばれたソフトバンク・松坂大輔投手。10月2日、対楽天戦での出来事。10年ぶりの日本プロ野球での一軍登板だった。

    結果は、1回で被安打3、与四死球4、5失点の大乱調。翌日、一軍登録を抹消された。

    「悩める怪物」の復活は、あり得るのか。BuzzFeed Newsは、横浜高校時代の恩師、小倉清一郎さんに会いに行った。

    恩師が語る、松坂大輔の不調

    元横浜高校野球部部長で、中学時代から「こいつは怪物になる」と松坂大輔を横浜高校に入学させた小倉さん。

    高校時代からプロでも通用するように、フォームを改造。牽制やクイックを叩き込み、プロ野球界に送り出した。

    「紛れもなく、松坂大輔は俺が育てた」と小倉さん。

    リリースポイントの後退

    小倉さんは、現在の松坂大輔をこう指摘する。

    「なんと言ってもフォームが悪い。リリースポイント(※球が手から離れる場所)が、好調時より40センチもプレート側に後退している。だから、球に体重が乗らないし、変化球にキレもない。結局、フォームが崩れているからフォアボールを連発する」

    「なのに、コーチ陣が、『大物だから』と萎縮して指摘できてないのでは。俺だったら、助走をつけて投げるよう練習させる。前傾姿勢で投げられれば、幾分、球に重みが乗る。投球後、勢いが余って右足がもっとバッター側までいかないとダメだ」

    93キロ、体重の問題

    「あとは体重の問題。高校時代は、私が絞りすぎてしまったけれど、あの体格だったら多くても85キロまで。それ以上になると、重すぎて理想のフォームが実現できない」

    公式発表では、松坂大輔選手は、現在93キロ。

    「8月に3軍戦で147キロをマークしたけれど、全然遅い。一球出ただけで、コンスタントには投げられないと意味がない。平均で147〜150出さないと、簡単に打たれる」

    小倉さんは、9月に松坂大輔のもとを訪ねていた。その際、松坂は「だいぶ良くなりました。ぼちぼち下(2軍)で投げますよ」と話していた。

    「お前は30歳になったら壊れる」

    「18歳のときは、700〜900球投げても平気だった。しかし、そのころから『お前は30歳になったら壊れる』と警告していた。昔から、ケアをちゃんとしない子だったから」

    「もとの体は強いけれど、一度故障したら慢性化して、戻れないタイプ。昨年の右肩の手術がだいぶ尾を引いている」

    また、小倉さんはこう続ける。

    「俺が育てた中でも、一番思い入れの強い子だから、あまりこんなことは言いたくないけれど、来年はせいぜい5〜6勝したらいい方だと思う」

    指導者、松坂大輔の可能性

    指導者としての松坂大輔は、どうなのか。

    「そればかりは分からないな。俺みたいに鬼軍曹になるか、選手としっかり交流を図って育てるタイプなのか見えてこない」

    「しかし、『野球の頭』は悪くない。打者としても、データから配給を読むタイプ。あいつは相手投手の決め球しか打たないんだよ。相手のプライドをズタズタにして、息の根を止めるタイプだから。そういう考えもできる子だから、指導者としての可能性もあると思う」

    松坂は高校時代、杉内俊哉(現:巨人)のカーブだけを狙い、ホームランにした経験がある。

    「プライドを捨て、バカになれ」

    最後に小倉さんは語る。

    「他校から出ていれば、松坂は3年目から活躍する選手。しかし、プロ1年目で16勝。俺に教わってしまったから、勝ちすぎた」

    「それでプロ野球を舐めてしまい、本当の努力をプロに入ってから一度もしていない。それも寿命を縮めた原因のひとつだ」

    「あいつも意地があるし、このままでは終われないだろう。松坂、お前には、まだ変なプライドがある。プライドを捨て、バカになれ。横浜時代みたいにバカになって練習しろ」

    「野球で稼がせてもらったんだ。少しは恩返ししろ」