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宅配を受け取れない人は、だらしない人? 再配達軽減キャンペーンで物議

「受け取れる時間に帰れる労働環境が必要なのでは」といった声が上がった。

環境省が地球温暖化対策として推進している「COOL CHOICE」。

その一環として、政府と宅配業界などが組み、宅配便を1回で受け取るよう呼びかけるキャンペーンが3月29日からスタートした。その中での「表現」をめぐり、物議が起こっている。

同キャンペーンは、長時間労働が深刻化している宅配便の再配達軽減だけでなく、再配達によってトラックから排出されるCO2を削減するのが目的だ。

環境省、国交省、経済産業省の3省のほかにも、宅配や通販、コンビニ、鉄道業界などから約100社・団体が賛同。配達日時の指定サービスの利用やコンビニ、宅配業者の営業所での受け取りを呼びかけている。

荷物を受け取れない人=だらしない人?

キャンペーンでは動画を使って啓発。物議を醸しているのは以下の動画だ。

YouTubeでこの動画を見る

youtube.com

主人公の君野イマは、ぐうたらで不摂生な女子高生。身長158センチ。アイスクリームが好きで、節約やエコには興味がない設定だ。

対して君野ミライは、クールで知的なしっかり者。並行世界「クールワールド」からやってきて、ぐうたらなイマを「COOL CHOICE」の伝道師にするのが目的である。

ネット通販を頻繁に利用する若者向けに“萌えキャラ”を起用した。

話題の動画内では、イマが溜め込んだ宅配便の不在票の束を指し、「自分で頼んだものくらい時間指定して一回で受け取りなさいよ」とミライが指摘することから始まる。

また、再配達によって排出されるCO2やドライバーのコストなどを説明し、「何度も配達してもらうのはドライバーの人たちと未来に対する罪よ」とコンビニでの受け取りを促している。

これに対し、ネット上で疑問視する声が上がった。

この絶望的なポスターが国のワカッテナサを象徴してる。「だらしないから1回で受け取れない」と言いたいのだろうが、逆だよ。仕事してるから受け取れない。右の子が左になれば受け取れるの。/「宅配便、1回で受け取りを」 再配達抑制へ国呼びか… https://t.co/AZR8AUehlx

▲「仕事しているから受け取れない」という意見が拡散された

こんなことに政府がキャンペーンやって予算使うってのはどうなんでしょう。技術とアーキテクチャで解決する方法の開発にお金集中投下した方が良いのでは。/「宅配便、1回で受け取りを」再配達抑制へ国呼びかけ https://t.co/VKvAPTziAm

▲ジャーナリストの佐々木俊尚さんも苦言を呈した

だらしないキャラが不在票を溜め込んでいることから、「だらしないから1回で受け取らないといいたいのだろうか」「そもそも受け取れる時間に帰れる労働環境が必要なのでは」といった意見が主である。

環境省の見解は?

これに対する環境省の見解は? BuzzFeed Newsの取材に対し、担当者が答える。

「そのような声が上がっているのですね。決して、だらしない人が荷物を受け取らないと言っているわけではありません」

「動画では『不在票を溜め込まないこと』『再配達を減らすこと』を啓発しています。さまざまな捉え方があると思いますが、違った捉え方をされているかと」

仕事をしているから受け取れないといった声もあることについては、こう話す。

「宅配ボックスや一部の駅構内、コンビニなどでも受け取ることが可能です。ご自身の仕事のケースにあった受け取り方法を選んでいただければ」


国土交通省によると、再配達の割合は全体の約2割に上る。

ヤマト運輸は3月17日、再配達受付時刻と配達の時間帯指定枠の変更を発表。当日の再配達の受付締め切り時刻の変更は、4月24日から適用される。

セールスドライバーやサービスセンターの受付は19時までで、インターネットでの受付は18時40分までと1時間短縮。再配達自動受付は18時40分までになり、現在よりも1時間20分ほど早く締め切られる。

また、日本郵便とネットショッピングサイト「楽天市場」を運営する楽天は4月5日、再配達の削減に向けた連携強化を発表した。

受け取り人が不在でも楽天市場の商品を指定の場所に置けることや、初回の配達で受け取った利用者に楽天ポイントを付与。年内にも始める予定としている。