「もうこれ以上、命が奪われてほしくない」銃撃を目の前にしたミャンマー人男性が語る悲痛な思い

    クーデターから1カ月。ミャンマー各地で当局による抗議参加者への弾圧が激化し、死者も出ています。目の前で起こった銃撃を撮影した目撃者に話を聞きました。

    パン、パン、パンーー。乾いた銃声の音が響く。

    ミャンマーの最大都市ヤンゴンの路上で、クーデターに非暴力で抗議をする市民に対し、当局が銃を向けた映像だ。

    2月28日には、ミャンマー各地で大規模な抗議集会が開かれ、当局は銃撃で制圧。現地報道などによると、少なくとも18人が死亡した。

    動画を撮影した男性は「警察はなぜ非暴力の人々を撃つのか」と悲痛な思いを述べた。

    現地では今、何が起きているのか。撮影者にオンラインで話を聞いた。

    男性が警察が銃撃する動画を撮影したのは、2月27日と28日の2日間。

    2月1日の軍事クーデターから約1カ月、抗議集会参加者に対する当局の弾圧は激しさを増している。

    男性は身の安全を守るため、匿名を条件にBuzzFeed Newsの取材に応じた。

    平和的な集会に響いた何十発もの銃声

    国軍によるクーデターで、アウンサンスーチー国家顧問兼外相やウィンミン大統領らが拘束され、男性も抗議集会に参加してきた。

    動画を撮影した日は、建物の中から目の前の道路で展開される抗議の様子を見ていたという。

    「抗議にはおよそ1千人が参加していました。軍政反対やアウンサンスーチー氏の解放を求め、シュプレヒコールをあげたり、歌を歌ったりして非暴力で抗議をしていました」

    「しかし制圧に来た警察官が銃撃を始めました。まず催涙ガスを放ち始め、その後、30〜40発の銃声を耳にしました」

    動画には、警察官たちが狙いを定めて銃撃する様子や、抗議参加者とみられる男性たちが拘束され連行されていく様子が映っている。

    また、道路沿いの民家の窓から外の様子を伺う人々を威嚇するためか、警察官が民家が並ぶ方向に銃を向ける様子も見受けられた。

    男性が撮影する場所からは、銃撃でどのような弾が使われたのかや、被弾した人がいたのかなどは分からなかったという。

    いつもは平和な見慣れた通りで、まるで「戦場」のような光景が繰り広げられたことに、男性は大きなショックを受けた。

    「抗議参加者が持っていたのは、銃撃から身を守るための盾と、催涙ガスに対処するための、水、バケツ、軍手などのみで、非暴力で抗議の声をあげていただけです」

    「民主主義を取り戻すために平和的に声を上げていた人々が、警察に銃を向けられているのです」

    人々の安全な生活を守ることが仕事の「治安当局」が、非暴力の市民に銃を向け、死者も出ている。

    「何人かの警察官が、抗議参加者に向けて銃撃した後に笑っているのを見ました」と男性は話す。

    動画を撮影した建物の窓にはミラーフィルムが貼られ、外からは見えづらくなっていた。しかし撮影2日目に男性に気づいた警察官は、ガラスに向かって石を投げてきたという。

    「もうこれ以上、人々の命が奪われてほしくない」

    2月28日には、ヤンゴンでも当局の弾圧による死者が出ている。

    ミャンマー各地の若者たちは、抗議集会や弾圧の様子を動画や写真に撮ってSNSで発信している。この日、Twitterなどに、被弾して流血する若者の写真が溢れた。

    Twitterのハッシュタグ「#WhatsHappeningInMyanmar(ミャンマーで起こっていること)」を見ると、こうした映像や写真がリアルタイムで投稿されている。

    当局は放水砲や催涙ガスなどを用いて抗議参加者の強制排除をしており、負傷者も多く出ている。

    日に日に激しさを増す弾圧に、男性はこう語る。

    「命を奪われた人、そして残された家族のことを思うと心の底から悲しく、許せない思いです。軍事政権は非暴力の人々に暴力を用いて弾圧し、基本的な人権を侵害し続けています」

    「もはやミャンマーは安全な状況だとは言えません。当局は抗議参加者を弾圧し、逮捕して回っていて、人々は夜も寝られません。もうこれ以上、命が奪われてほしくないんです」

    ミャンマーでは長年にわたり、民主化活動が展開されてきた。1988年の一連の民主化運動では、学生や僧侶ら数千人が当局による弾圧で命を落とした。

    当時の悲劇を知るからこそ、人々は今後、国軍がどのような手段で人々を制圧してくるのかと危機感を抱いている。

    日本政府は2月21日、次のような外務報道官談話を発表した。

    「平和的に行われるデモ活動に対して銃を用いた実力行使がなされることは許されることではありません」

    「日本政府はミャンマー治安当局に対して、民間人への暴力を直ちに停止するよう強く求めます」

    G7外相も2月23日、「非武装の市民に対する実弾の使用は受け入れがたい。平和的なデモに暴力をもって対応するものは誰であろうとも、責任を負うべきだ」と共同声明を発表している。

    男性は、ミャンマー国軍に対する国際社会の「圧力」の必要性を強調する。

    「国際社会からのさらなる圧力が必要です。国連や米国などの国々が、言葉や紙の上の話だけでなく、実際に行動に移して、国軍に圧力をかけてくれることを望んでいます。国連軍の介入も必要になってくるかもしれません」

    「民主主義を取り戻すため、ベストを尽くします」

    医師や教員など公務員たちは、各地で「市民の不服従運動:CDM(Civil Disobedience Movement)」に参加。ストライキをして抗議している。

    ストライキは抗議のひとつの形ではあるが、CDMを続ければ続けるほど、収入は途絶え、生計を維持することが難しくなる。

    CDM参加者を経済的に支えるための、募金活動も広がっている。

    男性も仲間と協力してTシャツをつくって販売し、売り上げを寄付。合計20万チャット(日本円で約1万5千円)ほどを、CDM参加者に送金した。その人の給料1カ月分に相当するという。

    日本の人々にもミャンマーで今何が起きているか知ってほしい。男性はそう願っている。

    「現状を知ろうとしてくれている人、応援してくれている人々には感謝の気持ちを伝えたいです」

    「私たちは今後も、ミャンマーに民主主義を取り戻すため、ベストを尽くします」

    ミャンマーでは当局による抗議集会参加者への弾圧が日に日に激化しています。 ヤンゴンで撮影されたこちらの動画では、非暴力で抗議をする市民に対し、警察が銃撃する様子が映っています。 撮影者の男性に話を聞きました。記事で詳報します。 (動画:撮影者提供)

    Twitter: @rekopekopako

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