国土交通省主催の街づくりに関する講座で、講師25人全員が男性だったことから、批判が相次いだ問題。
国交省は8月22日、講師陣に女性の専門家15人を加えることを発表した。
寄せられた批判にはジェンダーバランスの問題のほかに、障害者や外国人、子どもをめぐる街づくりの視点も欠いているという指摘もあったため、今回の講師の追加では、バリアフリーや外国人との共生などのテーマが加わった。
国交省の担当者を取材した。
経緯を振り返る
問題となっていたのは、自治体や行政機関の職員向けの講座「公務員アーバニストスクール」。9月から始まる予定だ。
国交省が公式Twitterアカウントに7月19日、25人の男性講師陣の顔写真が並ぶポスターの画像をアップして告知すると、批判が相次いだ。
Twitter上では「街を使う人の半分は女性なのに」「講師に男性ばかりを選ぶことに異論はなかったのか」「令和の時代にこれは…」といった指摘が殺到した。
国交省は当時、BuzzFeed Newsの取材に「複数人の女性講師による講義を追加できるように検討する」と回答。斉藤鉄夫国交相は7月22日の会見で、「講師に女性が含まれていなかったことは適切ではなかった」「まちづくりを含めて、国土交通行政を推進していくには、多様な視点が重要」と発言していた。
国交省担当者「真摯に受け止めより良いカリキュラム探った」「多様な視点を加えた」
女性講師を15人追加したことについて、国交省都市局まちづくり推進課の担当者は8月22日、BuzzFeedの取材に対し以下のように説明した。
「1ヶ月前に情報を公表した際に、様々なご意見をいただいておりました。女性だけでなく、バリアフリー、外国人の観点なども欠いているとメディアの報道等でも指摘があり、大臣の会見でも女性に加え多様な視点が重要という発言もありました」
「(講師の追加では)足りなかったバリアフリーや多文化共生、循環型経済などの観点を加え、それぞれの分野で第一人者として活躍する方に講師を依頼しました」
「頂いた色々な意見を真摯に受け止め、より良いカリキュラムの内容を探り、多様な視点を加えました。今後も、その都度、社会情勢を見て対応していきたいと考えています」
福祉・保育のテーマでは横浜市立大学の三輪律江教授、外国籍住民との共生ではNPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)」の崔洙連さんが講師に加わった。
講師の大幅追加により、受講者の定員も200人から400人に倍増。申し込みの締め切りも9月5日までに延長された。
国の審議会では女性が4割、指導的地位では3割の目標も
近年、行政機関・民間企業・団体共に、イベントの登壇者や審議会のメンバー構成では、ジェンダーバランスを考慮する流れが強まってきている。
日本政府は、あらゆる分野での女性の参画拡大の目標を掲げており、第5次男女共同参画基本計画に基づき、国の審議会では2025年までに女性委員の割合を40%以上とすることを成果目標として設定している。
目標達成に現状が追いつかず、目標が先送りされつつも、各分野での指導的地位に女性が占める割合も、30%程度になるよう数値を設定している。
国交省の担当者によると、同省の審議会などでの人選では、女性、障害者、高齢者など様々な立場からの視点を取り入れることを重視し、委員の3割以上が女性になるようにしているという。