軍が実権を握るミャンマーで、ドキュメンタリー制作者の久保田徹さん(26)が拘束されてから、1ヶ月が経過した。
拘束が長引く中、都内でこのほど、久保田さんがこれまでに撮ったドキュメンタリー作品の上映会が開かれた。
久保田さんがドキュメンタリー制作者として、何を伝えるために、どんな思いで撮影にあたっていたかということを知ってもらいたいという思いで、久保田さんの仕事仲間や友人らが主催した。
主催者で俳優の今野誠二郎さんは上映会で「ニュースの中での久保田徹でなく、人間としての久保田徹を知ってほしい」と語った。

ドキュメンタリー作品通して「彼の思いを知って」
都内で8月28日に開かれた上映会では、久保田さんがミャンマーや日本国内で撮影した短編ドキュメンタリーを上映。関係者らがドキュメンタリー制作者としての久保田さんについて話した。
国内のドキュメンタリーでは、入管問題を追った『牛久の記憶』や、「森友学園問題」についての『私は真実が知りたい』が上映された。
久保田さんの親しい友人である主催の今野さんは「久保田くんが色々な葛藤の中で現場に赴いて映像を撮っていたこと、その彼の思いを知ってほしい」とし、こう語った。
「久保田くんが撮影してきた国内外の問題について、これまで関心がなかった人にも、自分ごととして知ってほしい。作品を見返しながら考え、より多くの方に、人々の『痛み』を知ってほしいと思います」
「久保田くんが撮影していたデモに参加し、拘束された人もまだ解放されていません。そのようなことを『遠くで起こっていること』と切り離さないでほしい」
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『牛久の記憶』撮影・編集・ディレクター:久保田徹 ©︎Documeme
今野さんはBuzzFeedの取材に、ドキュメンタリーからは久保田さんの「不器用で優しい」人柄も伝わってくると話した。
「彼が撮るドキュメンタリーは人間を描いたもので、被取材者しか映っていません。けど、ドキュメンタリーの中で、カメラの前でも完全にリラックスした素の姿を見せたり、思いを打ち明ける被取材者を見ていると、被取材者と信頼関係を築いた『彼』についても見えてきます」
上映会には、久保田さんの大学時代からの友人もいれば、拘束を期に久保田さんについて知り、足を運んだ人たちもいた。
今野さんは、久保田さんを直接知らず、まだ会ったことがない人にも「帰ってきた時に、会いたいと思ってもらえたら」と話す。
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「私は真実が知りたい」撮影・編集・ディレクター:久保田徹 ©︎Documeme
久保田さんは7月13日に日本を出発し、ミャンマーの最大都市ヤンゴンでドキュメンタリーを撮影していた。
ヤンゴンで7月30日にデモを撮影していた際、現地の警察に拘束された。
報道によると、久保田さんは扇動罪や入国管理法違反などで訴追され、非公開の裁判が行われている。
久保田さんが伝えたかった『今ミャンマーで何が起きているか』ということ

上映会には、昨年ミャンマーで取材中に逮捕され、約1ヶ月間にわたり当局に拘束・一時起訴されたジャーナリストの北角裕樹さんも参加。以前から交流があった久保田さんについて語った。
久保田さんはこれまでも十数回以上にわたりミャンマーに渡航し、ドキュメンタリーの撮影をし、発表してきた。
ミャンマーの人々の思いに真正面から向き合い、撮影を続けてきた久保田さんについて、北角さんはこう話した。
「ネット上には久保田くんに対する心無い言葉も見受けられる。彼がどんな思いでミャンマーに行って、何を伝えようとしたかったのかを知ってほしい」
「久保田くんが伝えたかった『今ミャンマーで何が起きているか』ということについて、知っていただきたいと思います。今でもミャンマーでは、デモをすれば捕まり拷問を受ける可能性もある。久保田くんが撮影していたデモで捕まったミャンマー人は、拷問を受けているという情報もあります」
「独裁者としては、久保田くんのことも、今ミャンマーで何が起こっているのかということも世界に知られてほしくない。でも、今も軍により村が焼き討ちされ、住民が連行されている。ミャンマーで残虐行為、人権侵害が起こっていることを知ること、忘れないことが大切です」