駅や商業施設などにある「多機能トイレ」。
この多機能トイレを、本来の目的以外で利用する人がいるために、このトイレしか利用できない人たちが、扉の前で「待たされている」現実があります。
国土交通省は「一般のトイレを利用できる人が、多機能トイレを長時間利用することは控えましょう」と呼びかけています。
そもそも、多機能トイレとは、車椅子を使う人、人工肛門や人工膀胱を使用する人、乳幼児連れの人などが利用するための設備など、様々な機能が備わっているトイレです。
車椅子を使う人は広いスペースや手すりが必要で、また介助のためのベッド、人工肛門などをケアする設備が必要な人々もいます。
乳幼児連れの人は、ベビーカーで入れる広さ、そしてオムツ替えのためのオムツ替えシートや着せ替え台などがいります。
「多機能トイレしか利用できない人たち」がいるにも関わらず、多機能トイレを必要としない人が、着替えや休憩などに利用し、本当に必要な人が待たされたり、利用できない場合もあるのです。
9割以上が「多機能トイレで待たされた」経験
国土交通省の調査によると、多機能トイレ利用で、車椅子利用者のうち52%が「待たされたことがよくある」とし、42%が「たまにある」と回答。合計すると待たされた経験がある人は9割を超えます。
また、オムツ替えシートが開いたままになっており、車椅子利用者が自分で閉じることができないと、利用できないこともあるといいます。
多機能トイレの役割「知って」
国土交通省は2019年、東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、多機能トイレについて広く知ってもらうための啓発キャンペーンも実施していました。
多機能トイレにある設備には、どういった機能があるのか、みていきましょう。
まず、車椅子利用者は便器に移動するために支えが必要なため、便器の周辺に手すりがついています。車椅子が回転できるように広いスペースも必要です。
乳幼児のオムツ替え用のシートもありますが、それとは違い大きなベッドがあることも。それは、大人用の介護ベッドです。
多機能トイレには、ハンドシャワーがついた流し台のようなものもあります。
それは、ストーマ(人工肛門、人工膀胱)を使用する人「オストメイト」用の設備です。
ストーマとは、手術などで肛門や膀胱が使えなくなった人が、腹壁に人工的に作る排泄口です。
人工肛門には筋肉がなく、排泄物を自分のタイミングで出すことができないために、出てくる排泄物を溜める「パウチ」と呼ばれる専用の袋を付けます。
普通のトイレではパウチ内を処理しにくいため、オストメイト対応トイレがあるのです。
国土交通省は多機能トイレ利用について、このように呼びかけています。
「一般トイレを利用できる方が、多機能トイレを長時間利用することにより、真に設備や機能を必要とする方が利用できないことがあるなどお困りの声が寄せられています」
「多機能トイレの設備や機能を真に必要な方が必要な時に利用できるよう、思いやりの心を持ってトイレを利用しましょう」