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「職質」された時、警察の態度や言葉使いは? 何を聞かれた? 外国にルーツをもつ人に調査する理由

外国にルーツを持つ人への職務質問をめぐる実態調査がはじまりました。

東京弁護士会の弁護士らが、外国にルーツをもつ人に対する警察の職務質問に関するアンケート調査を始めた。

「不審事由」がないにも関わらず、肌の色など外見や人種・民族などを理由に、職務質問をする「レイシャルプロファイリング」について、実態を把握することを目的としている。

調査の主体となっているのは、東京弁護士会の外国人の権利に関する委員会で、期間は2月10日までの約1カ月間。

調査は日本語、英語、ふりがなつきの日本語、ベトナム語の4種類あり、ウェブ上から回答できる。

過去に職務質問を受けたときの状況や警察官の態度、言われた言葉、回答者自身についてなど35問を尋ねている。

「これまで見過ごされてきた問題」

調査を行う弁護士らが都内で13日、会見を開き、調査の背景などを説明した。

職務質問は、警察官職務執行法第2条に規定がある。

この条文によると、警察官は、

・異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯した者、もしくは犯罪を犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者

・既に行われた犯罪について、もしくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者

これらの「不審事由」の要件を満たす相手に対し、質問することができる。

この職務質問そのものは、日本人、外国人を問わず行われている。

しかし近年は、「特に『不審事由』がないにもかかわらず、警察官から職務質問を受けた」という声が、外国にルーツを持つ人々から弁護士らに多数、寄せられているという。

見た目が「外国人風」だったり、外国語を話しているといった理由だけで、「不審事由」がないにもかかわらず警察官が職務質問をしているケースがあるとみられ、「それはレイシャルプロファイリングにあたる」として、調査の必要性を強調した。

東京弁護士会の古池秀さんは、「これまで見過ごされてきた問題。調査では間口を広げて実態を把握し、問題を浮き彫りにするということが目的です。非常に詳細なアンケートになっている」と話した。

日本での警察の外国人に対する職務質問については、2021年12月に駐日米国大使館が警告する内容のツイートを投稿した。

「日本で外国人に対し、レイシャルプロファイリングが疑われる職務質問があり、所持品検査を受けたり拘束されたりした人もいる」とし、もし米国人が拘束された場合は、すぐ米大使館への連絡を警察に求めることを呼びかけた。

米国では、アフリカ系アメリカ人や中東系などの人たちに対するレイシャルプロファイリングが、大きな問題となっている。

また、国連人種差別撤廃委員会は2020年12月、レイシャルプロファイリングを防止するための勧告を出し、「国際人権法違反」と指摘している。

「見た目以外で職質を受けた理由が思い当たらない」集まった声

弁護士によると、開始から2日間で、すでに1000件近くの回答が集まった。

自身の経験を記入できる自由回答欄では、以下のような声が寄せられているという。

《見た目以外で職質を受けた理由が思い当たらない》

《犯罪者予備軍として扱われていると思う》

《警察はきちんと研修していないと思う》

弁護士の林純子さんは、すでに多くの回答が集まっていることに対し、こう述べた。

「2日間で1000件という、予想を遥かにこえた数の回答が寄せられました。これは、職質により深く傷ついた外国ルーツの方が多くいて、これまでそれを訴えられる場所がなかったということだと思っています」

「警察がレイシャルプロファイリングによって職質をしているのではないか、外国人の人権を軽視し、外国人を『犯罪者予備軍』として見ているのではないかという疑念が浮かんできます」

「外国ルーツの方が日々繰り返し止められて、同じような質問を受ける。そのたびに同じことを答え、毎回傷つくという現状があります。警察には、国際基準に沿った人権教育が必要です」

調査は、外国籍の人たちだけでなく、ミックスルーツを持つ人たちも対象。その理由について、林弁護士はこう述べた。

「外国籍の人だけではなくミックスルーツの人も、見た目を理由に職質を受けることもあります。そのため、調査対象は外国人と限っていません」

「ミックスの子どもたちも、中学、高校くらいになると職質を受けるのが日常的だと聞いています。自分が生まれ育った場所で、自分だけ見た目が違うから職質をされるという経験をしている人たちがいます」

調査の結果は報告書で発表する。

報告書のほかに、年内にもシンポジウムを開催し、詳細をパネルディスカッションで議論する予定。

警察に対しても、報告書を持って行き、改善の申し入れをしたいという。

東京弁護士会では2007年に、「外国人に対する職務質問アンケート」を行い、報告書を発表している。

調査では、職務質問を受けた経験のある人のうち、8割以上が警職法上の「不審事由」がない中で職質を受けたと回答していた。