沖縄は6月23日、「慰霊の日」を迎えました。
20万人を超える沖縄戦の戦没者を追悼し、平和を祈る日です。
コロナ禍で迎える2回目の慰霊の日となり、オンラインで沖縄戦について伝える動きが広がっています。
特設ウェブサイトを作った「琉球新報」と、子ども新聞をオンラインで無料公開した「沖縄タイムス」に話を聞きました。
琉球新報デジタル編集グループの嶋野雅明さんはBuzzFeed Newsの取材に、サイト開設の背景をこう説明しました。
「開設の理由として一番大きいのは、コロナ禍の影響です。例年、沖縄ではこの時期になると、戦争を経験したおじいさんやおばあさんの話を聞いて、戦争を見つめ直そうという平和教育があります」
「しかし休校などコロナの影響で平和学習ができない状況が続きました。ウェブを通じて、少しでも知ってほしい、改めて考えてほしい、という思いです」
ネットで情報収集する若い世代、そして県外の人たちにも伝えたいという思いもあります。
「これまで沖縄戦について紙面での報道を続けてきましたが、『今の時代の人たちに届くものを』とウェブサイトをつくりました」
「全国の方にも知ってほしいという思いがあります。なんとなく知っているけど、実際どのようなことが起こったの?という人にも伝えたいです」
モーショングラフィックスのページ「どんな戦争だったの?」を担当したのは、編集局編成グループデザイン班の相弓子さん。
米軍の沖縄侵攻の流れなどを、モーショングラフィックの動く図解で説明しています。
相さんは「動く解説」や図解にこだわった理由を、以下のように話します。
「沖縄戦について記憶をつないでいくためには、子どもたちに伝えていかないといけません」
「子どもたちにより分かりやすく沖縄戦について伝えるために、モーショングラフィックスを使いました」
琉球新報ではサイトのほかにも、小中学生新聞「りゅうPON!」の沖縄戦特別号を7月15日まで、オンライン上で無料公開しています。
オンライン授業、家庭での平和学習に
沖縄タイムスでは、こども新聞「ワラビー」の沖縄戦についての特別号をオンラインで無料公開しています。
同社では2014年から、学校などでの平和学習に活用してもらおうと、ワラビーの特別版として「タイムスワラビー沖縄戦を学ぼう特別版」を発行。
今年も、タブロイド判全16ページの特別版を制作。約17万部を県内の4年生以上の小中高生、特別支援学校の児童・生徒に無料配布しました。
沖縄でも新型コロナウイルス感染が収まらず、慰霊の日を目前に学校が臨時休校となりました。
オンライン授業や家庭での平和学習に役立てられるよう、8月31日までのオンライン公開を決めました。
沖縄タイムス学芸部副部長で子ども新聞「ワラビ-」を担当する高崎園子デスクは取材に対し、こう話しました。
「戦後76年がたち、沖縄戦体験者は県人口の1割と減っています。『記憶の継承』は大きな課題で、弊紙でも沖縄戦報道に力を入れています」
今年のワラビー沖縄戦特別版は、「戦争からさらに遠くなった世代へ」をテーマにリニューアルオープンした「ひめゆり平和祈念資料館」を地元の中学生と巡り、「戦争とは何か」を考えたといいます。
「戦争体験者に戦前の暮らしから取材した連載記事なども掲載しています。現在の生活と戦争が地続きになっていることを知ってもらえたらと願っています」
沖縄タイムス社デジタル部では、コロナ禍で県外から沖縄に帰省できない人などのために、「オンライン礎参り」もしています。
沖縄戦の全戦没者約24万人が刻銘された碑「平和の礎」には毎年、慰霊の日に多くの遺族や関係者が訪れます。
コロナ禍や高齢化で参拝がかなわない遺族にかわって、沖縄タイムスの記者が礎を訪れ、戦没者を慰霊する様子をオンライン配信。遺族の思いを伝えています。
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記事の一部を修正しました。