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「わたしは真実を知りたい」彼女はなぜ死んだのか。遺族や支援者が今、入管に求めること

名古屋入管の施設に収容されていたスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさんが3月に死亡。死因の解明や監視カメラの映像の開示を求める署名が始まりました。

「私は姉の死について真実を知りたい。監視カメラのビデオを見て、自分の目で確かめたいのです」ーー。

名古屋の入管施設に収容中、死亡したスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさん(33)の妹は、そう切実な思いを語った。

ウィシュマさんは収容中に体調を崩し、適切な治療が受けられないまま今年3月6日に死亡した可能性が高く、遺族や支援者は政府に対し、収容されていた部屋の監視カメラの映像開示などを求めている。

ウィシュマさんに面会をしてきた支援団体などは、ビデオ開示と再発防止徹底を求めるオンライン署名を始めた。

署名を始めたのは、入管収容施設で面会活動をする学生らを中心とした支援団体のメンバー。署名開始に際して7月7日、都内で会見を開いた。

名古屋でウィシュマさんを支援していた支援団体「START」や、外国人労働者や難民を支援する団体「BOND」の有志が「ウィシュマさん死亡事件の真相究明を求める学生・市民の会」を結成し、署名を集める。

上川陽子法相や佐々木聖子・出入国在留管理庁長官、佐野豪俊・名古屋出入国在留管理局長ら宛てに、8月中旬ごろをめどに提出する予定だ。

ウィシュマさんの遺族は、5月16日に名古屋市内で執り行われた葬儀に合わせて来日。ウィシュマさんの死因についての徹底的な調査や監視カメラ映像の開示を入管などに対し求めてきたが、入管は「最終報告書を待つように」と伝えるのみという。

ウィシュマさんの妹のワヨミ・ニサンサラさんは会見で、このように述べた。

「一人でも多くの方に署名を頂き、ビデオを開示してもらいたいと思います。入管は、姉の死に関する自分たちの責任を隠すために、ビデオを開示していないのだと思っています」

「日本に来る前、姉の死因などについて日本政府から正確な答えを頂けると強く信じていました。しかし、何の結果も得られませんでした。今日までの間、なんの真実も伝わってこなかったのは精神的にとてもしんどいです」

弁護士によると、入管は監視カメラの映像を開示できない理由として「保安上の観点で、ビデオを開示すれば監視カメラの位置が分かってしまい、収容者に壊されたりする可能性があるため」などと説明しているという。

弁護士は、遺族と議員らのみへの開示も求めているが、それにも入管側は応じていない。

ウィシュマさんの死亡前の健康状態などについて、入管は中間報告書を発表し、現在、最終報告書を作成中だ。

しかし、中間報告書には、ウィシュマさんや支援者が繰り返し、点滴や入院を求めていたことなども記載されていなかった。支援者や弁護士からは「入管自身が、入管の責任を隠すために報告書を作っている」との指摘がされている。

ワヨミさんも「中間報告は信用できず、これから出る報告書も信用できません」と話し、だからこそ、遺族や弁護士らだけにでも「ビデオを開示してほしい」と主張している。

ウィシュマさんは2017年に留学生として来日。日本語学校に通っていたが、学費が払えなくなり退学。在留資格がなくなり、不法滞在状態になっていた。

支援者によると、ウィシュマさんはその間、日本で出会ったスリランカ人男性にDVを受けており、暴力から逃れるために出頭。送還の方向で2020年8月から入管施設に収容されていた。

しかし、ウィシュマさんは、暴力を奮っていた男性から「スリランカに帰ったら必ず探し出す」などと脅迫も受けており、身の危険を感じ、送還後の安全性を不安視するようになったという。

収容中に体調を崩し、嘔吐を繰り返すなどして点滴や治療を求めていたが、点滴などが与えられることはなかった。

中間報告書では、「現時点で未判明(刑事手続における死因解明手続中)」とあり、死亡前日から脱力した様子があり、翌日には呼びかけに応答せず、動けなくなっていたとの記載がある。

その後、ウィシュマさんは救急搬送され、病院で死亡した。

ウィシュマさんと名古屋入管で面会していた支援団体「START」の千種朋恵さん(愛知県立大学3年)は、こう語った。

「2月上旬、初めてウィシュマさんと面会した時、ウィシュマさんはすでに食事もとれず、面会中に何度も嗚咽するような状態でした。この時点で、ウィシュマさんが収容に耐えられない状態であることは、学生の私の目にも明らかでした」

「死亡の3日前、3月3日に面会した学生によると、ウィシュマさんは痩せ細り、目がくぼんで、口から泡を拭いているような状態でした。この面会のあと、すぐに入管の処遇部門に行き、点滴を打って入院をさせてと強く申し入れをしました」

千種さんは、入管が中間報告書でそのような事実を記載しなかったことについて「虚偽、隠蔽は犯罪に近い行為です」と指摘。

また、名古屋入管だけでなく、日本各地の入管で、収容者に十分な医療が与えられていない状況があるとして、早急な改善と再発防止を求めた。