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「こんな時期だからこそ」日本人と韓国人、在日の女性がともに踊る意味

日韓交流おまつりで踊りを披露する韓国伝統舞踊団。日本人、韓国人、在日韓国人が共に踊るグループのメンバーに、思いを聞きました。

東京都荒川区のダンススタジオに、韓国の伝統舞踊を練習する女性たちがいた。

韓国の舞踊だが、踊り手7人のうち5人は日本人。さらに韓国人と、在日韓国人がいる。

この「IRUM金美福舞踊団」は、9月28、29日に開催される「日韓交流おまつり」で、練習の成果を披露する。

「日韓関係は戦後最悪とも言われていて、とても悲しい。けど政治とは別に、舞台では純粋に伝統舞踊を愛する気持ちを表現したいです」

メンバーの1人で在日韓国人の女性は、思いを語った。

踊りが披露される日韓交流おまつりは、両国の友好関係のために2009年から毎年行われてるイベントで、今年は9月28、29日の週末に都内・日比谷公園で開催される。

主催は日韓両国の団体でつくる実行委員会。日本の文化庁が特別協力に入り、両国の外務省・外交部、日本の観光庁や国際交流基金が後援している。

ステージでは、日本のグループが和太鼓や三味線などを、韓国のグループがテコンドーやK-POPを披露する。

IRUMは今年、そこに初参加する。9月28日に登壇し、韓国伝統の「花扇舞(ファソンム)」と呼ばれる踊りを披露する。文字通り、花が描かれた扇を持って舞う。

IRUM代表の金美福さんは「日本人の観客の皆さんに、韓国の伝統舞踊に取り組む日本人の姿を見てほしいと思ったから」と参加の理由を話す。

韓国の踊りを教える教室だが、生徒には日本人が多い。韓国ドラマのファンになり、そこから踊りに関心を持って習い始めた人が多いという。

在日韓国人の女性は「日本の伝統舞踊と似ている部分もあり、違う部分もあります。踊りや伝統文化を楽しんでほしい」と話す。

「文化を知ってもらうことで」

IRUMの金代表は「政治では日本と韓国は難しい関係にありますが、お祭り当日は両国の文化を楽しんでほしい。感動は人をなごますことができます。それが文化交流」と語る。

「文化を知ってもらうことでお互いを理解することに近づき、偏見や色々な問題を超えると思います。1人の人としてお互いに尊重しあえると思います」

金さんは1990年にモダンダンスを学ぶために来日し、日本で大学を卒業した。その後、ずっと日本で舞踊を教えているという。

舞踊団の名前のIRUMは韓国語で「成し遂げる」という意味だ。大学卒業後に何もないところから始めたダンス教室を通じた「日韓友好」への思いを表す。金さんはこう語る。

「1人の力では大きなことはできませんが、1人1人前向きに、できることをやっていきたいと思います。日韓関係の未来は明るいと思っています」

文化交流、お互いを理解するきっかけ

日韓交流おまつりはもともと、2005年、日韓国交正常化40年を記念し、ソウルで始まった。2009年からは両国で開催されている。

昨年の東京でのおまつりには、2日間で最多の8万2000人が来場した。

今年のおまつりの運営委員長は、駐日韓国大使館の黄星雲(ファン・ソンウン)韓国文化院長だ。「このような時期だからこそ、民間交流行事が、両国の関係発展に繋がると思います」と話す。

おまつりは日韓関係が厳しい局面を迎えた時も中止になることはなかった。

「日韓関係が良い時期もあったし良くない時期もありました。メディアからは中止するんですかとたずねられることもありますが、中止することは考えられない。こんな時期だからこそ、頑張って準備をしておまつりを実施します」

黄文化院長は「文化交流はお互いの立場を理解するきっかけになる」と話す。

「直接交流をすると、何か意見が違って立場の違いがあっても、お互いを理解することができる。政治的な意見が違っても、友達でいられると思います」

日韓関係が難しい局面を迎える中で、1人1人にできることについて黄文化院長はこう語る。

「直接、韓国の方に会うことが重要だと思います。旅行に行ったり、イベントに参加したりして、韓国の友達が1人でもいたら、もっとお互いに理解することができると思います」

黄文化院長は「若者からお年寄りまで楽しめるイベントになっているので、韓国を知っていただけるきっかけになると思っています」と話した。

当日は、韓国から来日するアーティストのステージなどの他、会場では伝統衣装の試着や韓国料理の屋台、韓国文学や韓国の紹介などもある。