ミャンマー国軍が2月1日にクーデターを起こし、アウンサンスーチー氏やウィンミン大統領らを拘束。ミャンマー国内や日本をはじめ世界各地で連日、抗議デモが続いている。
日本では、ミャンマー大使館前のほか、日本政府や国連からもミャンマー国軍に圧力をかけるよう求めるため、外務省前や東京・国連大学前でも集会が開かれている。
国連大学前で2月11日に開かれた集会には、ミャンマー人ら2000人以上が集まった。
国連大学前での集会に参加したミャンマーの人々は、「リーダーの早急な解放を」などと書かれたプラカードを掲げ、抗議の意を示した。
抗議で人々が掲げる3本指のポーズは「抵抗」を意味する。映画『ハンガー・ゲーム』で、独裁への抵抗を表していたポーズでもあり、タイの反体制デモでも3本指が掲げられた。
集会で人々は取材に対し「日本の皆さんに、今ミャンマーで起こっていることを少しでも知ってほしい」と口々に語った。
ミャンマー各地での大規模なデモでは、警察の取り締まりが強まっていて、警察の制圧で被弾し死傷した参加者や、逮捕者も多くでている。
インターネットも断続的に切断される中、人々は、ネットでの発言やデモでの「発言の自由が奪われつつある」と危機感を募らせている。
国連大学前での集会でも、日本をはじめとする国際社会、国連の連帯が呼びかけられた。
集会に参加した、40代のミャンマー人女性は取材に対し「独裁をやめてほしい。民主主義を返してほしいと伝えたい」とし、集会についてはこう話した。
「今日は、アウンサンスーチー氏らの解放を願うために集まりました。キャンドルライトを灯し、プラカードを掲げて、リーダーの解放を求めると共にクーデターへの抗議の意を示します」
「ミャンマーでも毎日、各地で大きなデモが開かれています。日本でも声をあげ、日本の皆さんにも少しでも今ミャンマーで起こっていることについて関心を持って、知って頂きたいです」
ミャンマーでは、1962年に軍事クーデターが起こってから50年以上にわたり軍が政治支配をしていたが、2015年にアウンサンスーチー氏が率いる国民民主連盟(NLD)が勝利。本格的な民主化に向けた希望の兆しが見えていた。
女性は「アウンサンスーチー氏が率いる政府が、民主主義を確立し、国は少しずつ良い方向に向かっていました。国民はミャンマーの将来に希望を抱いていました」と話す。
NLDは昨年11月に行われた総選挙でも圧勝。軍政支持側の政党が敗北したが、国軍は「有権者登録などに不正があった」と主張。2月1日にクーデターを起こした。
女性は「クーデターにより、ミャンマーの民主主義はまた遠のいてしまった」と話す。
警察の抗議デモへの取り締まり強化にも懸念を示した。
「私はヤンゴン出身で、ヤンゴンでは妹が抗議デモに参加しています。ここ数日、平和的に抗議をしているデモ参加者が逮捕されたり、ケガをしたりしています。現地で抗議をしている妹や友人がとても心配です」
コロナ禍での集会「申し訳ない。でも…」
新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、密になる大人数での集会などは控えるよう呼びかけられている。
そのような中で、抗議集会を開くことに「申し訳ない」と話す人も多くいた。
20代の女性3人は、取材に対しこう語った。
「今、世界で一番怖いのは新型コロナウイルスです。私たちも怖いし、心配です。でも、軍人や軍事政権はもっと怖い。コロナ禍でこのように集まるのは悪いことです。本当に申し訳なく思っています」
「しかし、ミャンマーはこのままではいけません。今、ミャンマーで起きていることを日本の方々に知って頂くためにも、今日集まっています」
集会では「日本にいる皆さんには本当に申し訳ございませんが、ご理解とご協力をよろしくお願いします」と書かれたプラカードを掲げる人もいた。
集会入り口では1人ずつアルコール消毒を行い、マスクを必ず着用するといった感染防止対策にも注意が払われた。
今回の集会では、国連大学前の広場に皆が同じ方向を向いて座る形を取った。
主催ボランティアのミャンマー人は、参加者に「沿道の人には絶対に邪魔になることがないようにしてください」「マナーを守って参加してください」と何度も呼びかけた。
ビニール袋を片手に、ゴミ拾いをするボランティアの姿もあった。
(サムネイル:Philip FONG / AFP=時事)