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「このおうちは、お父さんが2人いるんだね」母親が子どもに言った言葉。そばで聞いていた作家の思い

お父さんが2人いる家族、おじいさんのカップルーー。イラストレーターのmoriuoさんが、描く理由。

「この絵のおうちは、お父さんが2人なんだね」

カフェに展示された、赤ちゃんとピクニックをする2人の父親のイラスト。

作品を見た女性が、抱っこしていた子どもに笑顔でそう話しかけました。

会話を側で聞いたイラストの作者・moriuoさんは、「すごくほっとした。うるっとしました」と振り返ります。

moriuoさんは、ゲイのカップルや家族などをテーマに描いているイラストレーター。

普段はギャラリーなどで個展を開くことが多く、その場合、ゲイカップルを描くmoriuoさんの作風が好きな人が多く来場します。

しかし時には、より客層の幅が広いカフェなどで個展を開くことも。

「カフェにはストレート(異性愛者)のお客さんがいらっしゃるので、どう反応されるのか、僕も、店主の方も不安でした」とmoriuoさんは明かします。

そんな時に聞こえてきたのが、冒頭の母子の会話でした。

「『男2人で変だね』とかではなく、『お父さんが2人なんだね』とお子さんに優しく教えてくれたのがすごく印象的でした」

「カフェにいてたまたま聞いたのですが、僕が作家とは知らずにお母さんはそう説明されていたと思います」

2人のお父さんがいるおうちーー。「そんな光景がいつか普通になってほしい」とmoruioさんは考えています。

「希望」になるイラストを

タキシードを着て結婚式に挑むゲイのカップル、お父さんが2人いる家族、おじいさんのカップルーー。

男性カップルなどを題材にイラストを描くのは、moriuoさん自身が「たまたま同性に恋をする人だったから」。

moriuoさんがTwitterアカウント(@momomoriuo)で発信するイラストを見た人たちからは「自然体で愛が溢れているイラスト」「あたたかい気持ちになる」などの感想が寄せられています。

同性カップルが人生のパートナーとして一緒に暮らし、時には子どもを迎えるーー。

そんな様子を描くのは「希望の灯じゃないですけど、希望的なものをビジュアルで提示できるのがイラスト」だと信じているから。

「僕は小さい頃からゲイだという自覚があったので、結婚も無理だよね、家族も持たないし、子どももつくらないんだろうなと思っていました。それを嘆くわけでもなく、漠然と受け入れて生活していました」

「でも例えば、LGBTだと自覚している今の若い人が、『もしかしたら将来、結婚や子育てもできるのかもしれない』という認識で小さい時から育っていくのでは、意識が全然違うのかなと思います」

成長する子ども、続いていく家族の物語

子どもと遊ぶお父さん2人のイラストには、実は続きがあります。

数年後、赤ちゃんだった子どもが成長したイラストでは、ダイニングテーブルを囲み食事をとる家族の姿が描かれています。

結婚も子供をもつこともできない、それが当たり前やと思ってここまで生きてきたからこの歳になって僕はもう今更子供欲しいとは思わないけど、もし小さい頃に同性でも結婚できて子供も育てられるって社会で過ごしてきてたなら、そうは思わなかったかもしれへん。分からんけど^_^

Twitter: @momomoriuo

近年、子育てをする同性カップルやトランスジェンダーの人たちが、SNSで発信したり、メディアに取り上げられたりすることも増えてきました。

「子どもも少しずつ成長していって、物語が続いていく。そういう意味をこめて、また家族のイラストを描きました」

いつか同性カップルを広告で普通に見かけるように…

これまで、ゲイコミュニティ関連の雑誌の挿絵やフライヤーを描く機会が多かったmoriuoさん。

「いつかは同性カップルのイラストが広告や雑誌などでも普通に見かけるようになれば…」と願っていましたが、その夢も少しずつ叶いつつあります。

最近では、ゲイコミュニティ以外の企業などからの仕事も増えています。企業のLGBTQ研修の一環として、社内でのイラスト展示を依頼されたこともあったそうです。

ボウタイブランド「BOWTIE BOWYA」とのコラボレーションでは、同性婚をテーマに、タキシード姿でボウタイを着けた同性カップルを描きました。

ファッションブランド「Snails(スネイルズ)」ともコラボが実現。子どもと遊ぶ2人の父親のイラストが、Tシャツとして販売されます。

「ゲイコミュニティにこだわらず、できるだけ様々な人が来やすい場所で展示したり、コラボレーションしたりということを目指していきたいです」

「長年連れ添った最愛の人に花束をもらう。その時には…」

moriuoさんは5月、「IN MY LIFE(イン マイ ライフ)」と題した個展を東京・新宿で開きます。

個展の名前は、幼少期からおじいさんになるまでのゲイ男性の一生を描くようなイラストのイメージからきています。

男の子が好きだと気づき、「ためらいなく好きな気持ちを伝えられていた」幼少期。

小学校高学年になると、それがからかいやいじめの対象になることを知り、「傷つかないように、好きな気持ちを隠すようになっていた」。

それから大人になって、パートナーと出会い、人生を共に歩むーー。

個展のフライヤーには、そんな変遷が描かれています。moriuoさんはTwitterで、こんな風に思いを綴っています。

《男の子にチョコをあげた幼少時代から彼氏にチョコをあげる青年時代、そして未来はおじいちゃんになって長年連れ添った最愛の人に花束をもらう》

《その頃にはおじいちゃん2人が同性婚できていたら、そんな未来は素敵だなぁと》


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LGBTQをはじめとする性的マイノリティの存在を社会に広め、“性”と“生”の多様性を祝福するイベント「東京レインボープライド」。BuzzFeed Japanは2021年4月23日(金)〜5月1日(土)にかけて、性的マイノリティに焦点をあてたコンテンツを集中的に発信する特集を実施します。

特集期間中、Twitterではハッシュタグ「#待ってろ未来の私たち」を使って、同性婚やパートナーシップ制度などのトピックをはじめ、家族のかたちに関する記事や動画コンテンツを発信します。

同性婚の実現を求めて全国のカップルが国を訴えた裁判や、各地でのパートナーシップ制度の広がりなど、少しずつ社会が変わり始めている今だからこそ、「より良い未来に生きる私たち」に向けて、「2021年の私たち」からのメッセージを届けます。

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