大阪市で11月1日、「大阪市廃止・特別区設置」いわゆる「都構想」をめぐり住民投票が実施されました。
この住民投票に、大阪市に暮らす外国籍の住民は参加できなかったこと、ご存知でしたか…?
市の行方を決める住民投票に「同じ大阪に暮らす外国人住民も投票できるように」と働きかけてきた市民グループがありました。
市民グループ「みんじゅう(みんなで住民投票!)」は、11月に実施された住民投票に外国人住民も参加できるようにと活動を続けてきました。
劇作家の平田オリザさんや絵本作家の長谷川義史さんも呼びかけ人になっています。
みんじゅうの中心メンバー15人のうち、大半は日本人です。
メンバーが活動に加わった背景には「どんな日本社会にしていきたい?」「外国人住民にどう社会参加をしてもらう?」という問題意識がありました。
きっかけは「俺だって大阪市民や」という投稿
みんじゅうは、一人の日本人女性の呼びかけが発端で動き始めました。
活動の発起人となる小野潤子さんがある日、Twitterで「俺だって大阪市民や」という知り合いのツイートを見かけたのです。
都構想をめぐる住民投票で、投票権がない外国籍の住民の記した思いでした。
住民投票に向けては、大阪市では松井一郎市長や吉村洋文・大阪府知事による「住民によって、住民投票で決めましょう!」「住民みんなで考えよう」との呼びかけが行われていました。
「住民」「住民」と繰り返されていたため、小野さんは「住民みんなが投票できるものだと思っていた」と振り返ります。
「国籍で線引きがあるとは思いませんでした。(住民投票の選挙権について)初めて知って愕然としました」
「自分の住む街のことやのに…どうして投票できないの?ほんまの民主主義ってなんなんやろうと思いました」
大阪地域特別区設置法では、日本国籍を持つ人のみが投票権を持つと規定する公職選挙法を準用するとしています。よって、2015年の住民投票と同様に、外国籍の住民は、例え大阪に生まれ育っていても、投票できない状態でした。
2回目となる住民投票が行われることが明らかになった2019年春には、周囲に声を掛け合って、有志を集めました。
みんじゅうのFacebookやTwitter、ウェブサイトなどを立ち上げて発信を続けつつ、大都市法・大都市令の改正を求めて署名を集めたり、大阪市に陳情書・署名を提出したりしてきました。
国会議員にも働きかけて賛同を得て、請願を衆参両議院に提出し、総務委員会にて審議されました。
一方で、松井市長は2月の会見で記者の質問に対し、外国人住民が投票したい場合は「国籍を取得して参加してもらいたい」と答えていました。
「この社会をどうしていきたいか」みんなに考えてほしい
結果としては、今回の住民投票で外国人住民による投票は実現できませんでした。
しかし、みんじゅうのメンバーの劉恭佳さんは、外国人住民の地方参政権の問題は「大阪の問題だけでは決してない」として、「日本人が『この社会をどうしていきたいのか』ということを主体的に考えるべきです」と話します。
劉さん自身、日本国籍を持っていないため、国政選挙も地方選挙も、日本で投票はできません。
しかし、選挙の翌日には悪気はなく「昨日、選挙行った?」と世間話の中で聞かれることもあるといいます。
「『私は韓国籍なので、選挙権ないんです』と返答すると相手は『そうか〜。そうなんや〜』と。そのようなやり取りは日常茶飯事です」
劉さんは、まず外国人住民の地方参政権について知り、そして「考えてほしい」と強調します。
現在、大阪市に在住する外国人住民の人口は14万人を超えていて、全市民の約5%にあたります。
劉さんはこう話します。
「大阪市に5%いる外国人に、どのような社会参加をしてもらうのか、住民自治に参加してもらうのか、ということを考えるのは、マジョリティである日本人なのではないでしょうか」
「そして、その権利を変えることができるのもマジョリティである日本人です。あなた自身が考えてください。感じてください」