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Updated on 2019年6月2日. Posted on 2019年6月1日

「妊娠したら、どうすればいいかわからない」すっぽり抜けていた外国人の母子保健支援

日本に住む外国人が増えるにつれ、外国人の妊娠や子育てのサポートも必要とされています。神奈川県で母子保健支援に取り組む国際交流財団に話を聞きました

日本に住む外国人が増えるにつれ、外国人が日本で出産するケースも増えている。

4月に施行された改正出入国管理法により、労働目的での若年層の外国人がさらに増える見込みで、必然的に外国人の妊娠、子育て支援が必要となってくる。

県内在住の外国人が21万人と全国でもトップクラスに多い神奈川県で、病院や役所と連携して外国人妊婦らを支援するかながわ国際交流財団を訪ねた。

Sumireko Tomita/ BuzzFeed

同財団の取り組みについて説明する福田さん

すっぽり抜けていた外国人の母子保健支援

同財団は2015年度、県内の外国人妊婦や子育て支援の現状を把握するため、調査を実施。そこで外国人の妊婦や乳幼児への支援が極端に少ないことが判明したという。

調査やその後の支援を中心的に行う同財団の福田久美子さんはこう話す。

「各自治体で義務教育以降の外国人支援は行われているのですが、小学校入学以前の支援をしている団体があまりなく、母子保健などの支援が手付かずになっていました。役所の保健師さんや病院も困っており切羽詰まっていました」

チャートで一目で流れをわかりやすく

Sumireko Tomita/ BuzzFeed・かながわ国際交流財団

外国人住民のための子育てチャート(ネパール語版)

まずは外国人に、妊娠から小学校入学までの日本での「流れ」を理解してもらうことから始めた。イラストで分かりやすく一目で見て流れを掴めるように、7言語版の子育てチャートにまとめた。

日本人でさえも分かりにくい手続きなどは、日本語に不慣れな外国人にとってはさらに難しい。

「妊娠してから小学校入学までの約7年間は、やらないといけない手続きなどがたくさんあるが外国人は知らない人が多い。妊娠をしたところから皆、どうしていいか分からない」。

・妊娠したら、お腹が大きくならなくても産婦人科で健診を受ける

・母子手帳をもらって記録をつける。出産育児一時金の手続き

・産後の1カ月・乳幼児健診や予防接種

・子育て支援センターの存在

など、海外では存在しなかったり当たり前ではない制度やサービスもある。

「これまでは産婦人科やその後の役所など、つながりが見えない状態だったので、チャートを作ってつながりを見せることで『今ここだから次これが来るので準備しなきゃ』ということを見えるようにしたかった」

チャートは県内の母子手帳を交付する窓口や産婦人科、国際交流ラウンジなどで配布しており「チャートを冷蔵庫に貼っている」という外国人もいるという。

現場からの理解を深めるために

Sumireko Tomita/ BuzzFeed・かながわ国際交流財団

「『だから外国人は』と知らないことに憤るのではなく、外国人がどんなことが分からないかを知ってほしい」と、母子健康支援の現場で働く日本人の理解を深めるために今年2月に作られたのが「外国人住民の妊娠から子育てを支えるガイドブック」だ。

「外国出身の妊婦や母親が増えているけど、どう対応したらいいか分からない」という産婦人科や小児科などの病院、保健師を中心とする役所、子育て支援センターなど地域向けに発行された。

日本での妊娠、出産、子育てなど、外国人妊婦が日本で直面する問題と対策を説明している。

「日本人側も助けてあげたいけど『どうやって声をかけたら良いか分からない』という人も多い。外国人も文化や習慣が分からず孤立してしまいます」

外国人の妊婦や母子を支える各セクターがガイドブックを利用することで、何が問題でどう対応できるのかを具体的に理解してもらうことが狙いだ。

Sumireko Tomita/ BuzzFeed・かながわ国際交流財団

福田さんはガイドブックを作ったきっかけをこう話す。

「外国人妊婦が増えている場所では、こういう課題があって、こういう対処やアプローチ方法があるということを紹介できれば」

「チャートなどを作って外国人に渡しても、そこにコミュニケーションがうまれなかったらとても残念。保健師さんや病院の方などに、外国人とどう接したら良いのかということについて伝えられたらと思いました」

ガイドブックが外国人と支援側の「架け橋」となっている。

カラー印刷で全38ページのガイドブックは、神奈川県内の役所などに参考資料として1冊ずつ無料配布する他、県外の機関などには母子保健事業団などを通して販売している。

全戸訪問で双方が感じる「ハードル」

「お産文化」も各国で様々なように、産後の行政からのサポートも国によって違う。福田さんは、保健師が家庭を訪ねて子育て状況などを確認する「乳幼児家庭全戸訪問事業」いわゆる全戸訪問が「外国人と保健師さん双方にとってハードルが高い」と話す。

福田さんが役所で母子保健を担当する保健師に聞き取り調査をした際、保健師からは「言葉や文化が分からず外国人の自宅に行くのはハードルが高い」という声が多く聞かれたという。

一方で外国人側としても、そもそも海外で全戸訪問の行政サービスがある国も少ないことから「役所の人が家に上がってきた」「子どもを連れて行かれるんじゃないか」などと、警戒してしまうのだという。

そこで同財団が作ったのが、全戸訪問について説明するビデオだ。

YouTubeでこの動画を見る

youtube.com

全戸訪問について説明するビデオ

YouTubeで公開されているビデオでは、全戸訪問が子育ての孤立化を防ぎ新生児と母親の健康をチェックする行政の取り組みであることを説明。訪問の日時を電話で決めること、保健師が訪問で行う内容などを紹介している。

「最初に外国人の方がこれを見ていてくれれば、全戸訪問があるというのも分かると思い作りました」

他にも、子育てチャートや役所での母子手帳の受け取り方などについて説明するビデオを掲載。それぞれ、英語、中国、タガログ、スペイン、ポルトガル、ネパール語での字幕がついている。

各地域のコミュニティへのアプローチ

かながわ国際交流財団提供

子育て中のイスラム教女性を対象にした栄養教室

同財団は、神奈川県内の病院や各外国人コミュニティと連携した、それぞれの言語や文化に合わせたアプローチにも取り組んでいる。

綾瀬市では、子育てをするイスラム教徒女性を対象に、栄養ワークショップを実施。日本で手に入るハラル食品などを使った栄養バランスが取れた食事などについて紹介した。

他にも病院や他機関と連携し、大和市でのベトナム人を対象にした両親学級を開いたり、ネパール人コミュニティを対象に、保育園の申し込み方など子育てに関するワークショップも実施した。

福田さんは話す。

「今では全国の自治体から相談の電話がきます。八方塞がりで困っている自治体も多い中、仕掛けの仕方で本当に変わります。地道に支援側と外国人、両サイドに伝えていく活動ができればと思っています」

Contact Sumireko Tomita at sumireko.tomita@buzzfeed.com.

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