1995年1月17日早朝に発生した、阪神淡路大震災。6434人の死者を出した震災で、神戸を中心とする兵庫県南部の街は、大きな被害を受けた。
しかし震災から25年が経過し、多くの10、20代の若者にとっては、直接の記憶がない「歴史上の災害」になっている。
近い将来に東南海トラフや首都直下型地震などが想定される中、若者の防災学習に役立てもらおうと、朝日放送グループホールディングス(本社・大阪市福島区)が1月、震災当時の映像をまとめたアーカイブをウェブ上で公開した。
BuzzFeed Newsは、アーカイブ作成に携わった関係者に話を聞いた。
この企画のディレクターを務めた、朝日放送テレビ報道ニュース情報センターの木戸崇之記者は、「防災や減災についてテレビに何ができるのか」「過去の災害のさまざまな教訓の中、過去の記録を公開できないか」という思いを持ち、長年、この映像アーカイブを立ち上げる構想を抱いていたという。
木戸記者は、防災などについての施設「阪神・淡路大震災記念、人と防災未来センター」(神戸市中央区)のリサーチフェローで、2014年から同センターに関わり、メディアの立場からの防災や減災について模索してきた。
今回、震災から25年という区切りで、報道局や総務局が連携し、アーカイブ立ち上げが実現した。
アーカイブでは、震災当日の倒壊した建物や火災、救助される人々などの映像のほか、人々が復興に向けて模索する姿が収められた映像が公開されている。
公開に際し、テレビ局としての葛藤も
25年というタイミングで、映像を公開することには、葛藤もあったという。
被災をした人の中には、震災当時の映像を見たくない人もおり、「公開すべきかということについてジレンマに陥っていた」という。
一方で、震災の記憶が風化したり、若者の中には、この震災でどのような被害があったのか知らない世代も増える中、「震災の記録をこのまま押し込めていていいのだろうか」「使われない古文書と同じではないのか」との思いがあった。
25年前はスマートフォンなどもなく、残っている当時の映像は、メディアが撮影したものが大半だ。
「この区切りを逃すと、この震災の記録は社会に発信する機会を逸するのでは」という思いもあり、「若い世代に伝えたい」という思いでアーカイブ作成に乗り出した。
「25年前、困難な状況だったにも関わらず、多くの被災者の方々は、取材で投げかけられた質問に対して真摯に答えてくださった」「だからこそ、今も教訓を拾い上げることができる」という。
若い世代に映像で「伝える」
同社では、映像の公開にあたり、震災後に生まれた大学生に映像を見てもらったという。すると、大学生からはこのような反応が返ってきた。
「語り尽くせないほどの悲しみの中で、生きようとしているのがよくわかる」
「被災者のみなさんが語る言葉や表情に、今も活かせる教訓が詰まっている」
東南海トラフ地震など、大型の震災が発生する可能性がある中で、若い世代にどう震災を語り継ぎ、防災に役立ててもらうかということも大きな課題になっている。
都市直下型地震は、近い将来、首都圏などで起きるといわれている。
「都市直撃の大震災」そのものだった阪神淡路大震災について、若い世代に映像を通して学んでもらい、防災に役立ててほしいという狙いだ。
朝日放送グループホールディングスは、1月10日に映像アーカイブをCSR活動の一環として立ち上げ、今後も持続的に公開していく。
映像は、撮影された場所別に、地図から見ることができる。また「記者リポート」や「空撮」「インタビュー」などの映像の種類を分けたり、「避難所」「救助」などのキーワードでの検索、撮影・取材日を指定して検索することもできる。
2月2日には、ABCホール(大阪市福島区)で、映像から都市災害について学ぶ、上映イベントも開催する予定だ。