男性同士のカップルが街中で手を繋いだりキスをしたり、子どもを連れてピクニックをしていたりー。
ゲイのカップルを題材にイラストを描き、SNSで発信し続けている男性がいる。イラストレーターでグラフィックデザイナーのmoriuoさん(@momomoriuo)だ。
「街中で同性カップルが手をつないでる光景が、日常の景色としてそこに存在する。そんな日々になればいいな」。そのような思いでイラストを描いているとmoriuoさんは話す。
「ぼく自身がたまたま同性に恋をする人だったから」
moriuoさんが10代の頃からカップルのイラストを描いている理由は、いたってシンプルだ。BuzzFeed Newsの取材に対しこう語る。
「相手が異性でも同性でも、誰かと恋に落ちて、恋愛を育むその光景ってほんとに微笑ましいなってぼくは感じるので。そんな場面を描くのが好き」
その中で男性カップルを題材に描くのは「ぼく自身がたまたま同性に恋をする人だったから」という。
雑誌などに同性カップルのイラストを描いていたmoriuoさんは、2012年ごろからFacebookにもカップルのイラストをアップしていた。
moriuoさんが6月、自身のTwitterアカウントでイラストをアップすると、5千以上リツイートされ、1万以上のいいねがついた。
Twitterでは「愛し合っているなら異性愛でも同性愛でも微笑ましい」「素敵な絵だ」と多くの反響が寄せられた。
自身の経験も交えイラストに
同性カップルが引っ越しをする様子を描いたイラスト。Twitterにこのイラストをアップした時にはこのようなキャプションが添えられた。
男性カップルの同棲はNGという物件が賃貸はまだ多かったりするんですよね。今回は同棲を始めるカップルを描いてみました。幸せなお引っ越しです。
他のイラストをアップした際に添えた「男女のカップルのように人前で手を繋げる日が、いつかくれば」「ゲイだってもちろん淡い片想いの思い出とかあったりするわけで」という思いは、描き手のmoriuoさん自身の思いや経験でもある。
同棲に関しても、実はmoriuoさん自身が体験したことだった。8年ほど前にmoriuoさんがパートナーとの同棲のために物件を探した際、男性同士が同居するということを不動産屋や管理会社に伝えると、入居不可になることも多く、希望の物件を見つけるが一苦労だったという。
moriuoさんは「現在は理解ある不動産屋さんも増え、同性カップルの部屋探しも以前よりはしやすくなりつつあるのかも知れません」と言う一方で、同性カップルに理解のない人もまだ多いと言い、心境をこう語る。
「まず不動産屋さんに自分たちは同性愛者で、カップルであるということをカミングアウトすることからはじめなければいけないので、それが気が重く、ハードルと感じる人もまだまだ多いのではないかと思います」
想像できないのは「実際に目にしたことがないから」
男性カップルが、子どもと公園でピクニックをしている。やわらかいタッチで描かれたイラストにも、moriuoさんの「こういう風景が当たり前に描けるな日がくればいいな」という思いが込められている。
以前、オーストラリアに移住して同性婚をした友人から「企業先の家族向け行事に、当たり前に同性パートナーが参加する」や「子どもを持つ同性カップルも多く、そろそろ自分達も考えている」といった話を聞いたという。その際に抱いた心情をmoriuoさんは「全然イメージができなくて、まるで絵空事のようなお話で、全く現実の話ではないようにしか思えなかった」と表す。
しかし、だからこそ子どもを持った同性カップルを描いた。
「そんな光景を実際に目にしたことがないからだなと思ったから」。moriuoさんはそう語る。
「イラストでその光景を描いて、その絵をいろんな人が目にすれば、今までイメージすらできなかったことも、すこし具体的に感じることができるんじゃないかなという思いがありました」
同性カップルのイラストを雑誌や看板で
広告などでは、まだ同性カップルが描かれることは少ないのが現状だ。
夢は、mouioさんが描いた同性カップルのイラストが「広告などで街中のポスターや看板や雑誌などで普通に目にできるようになること」という。
「自分の世代はカミングアウトひとつとっても困難だった」というmoruioさん。若い世代に対し、イラストを通して託したい思いをこう語る。
「若い10代、20代のLGBTQの皆さんは多様性ということに柔軟で、広い視野がある世代だと思います。それでも、それぞれの環境や暮らしの中でセクシャリティによる悩みを抱えてる方もまだまだいると思います」
「僕ができることは、同性カップルのイラストを通して、こんな風に恋したいな、とか、結婚したいな、とか、そういう『希望』を抱けたり、幸せの一例をイメージできたり、そういうものを描いていくこと。間接的ですがイラストを通して将来のビジョンを思い描けるお手伝いができたらと思っています」