「#剃るに自由を」「ムダかどうかは、自分で決める。」
シェイバーやカミソリなどを製造・販売する貝印株式会社が、こんな広告を出しました。
なぜ、毛を剃る道具を売る会社が、体毛についてこのようなメッセージを発信するのか、BuzzFeed Newsは同社の担当者に話を聞きました。
8月17日から、東京都渋谷区のSHIBUYA109のビッグボード、そして東京メトロ半蔵門線の地下鉄電車広告に掲出される広告には、体毛について、このようなメッセージが書かれています。
ムダかどうかは、自分で決める。ムダ毛を気にしない女の子もカッコいいし、ツルツルな男の子もステキだと思う。ファッションも生き方も好きに選べる私たちは、毛の剃り方だってもっと自由でいい。 #剃るに自由を
同社の担当者は、剃るのも剃らないのも「自由」というメッセージを発信した理由をこう話します。
「体毛も髪型と同じように、剃らない、剃るという選択肢があってもいい、というメッセージです」
「弊社はカミソリなど刃物全般を100年以上、製造・販売している会社で、消費者の意識や動向を見てきました。脱毛に関しては『女性は(体毛を)剃るべきで、男性は剃るべきでない』というような固定観念や風潮に対して、違和感を感じたりする人もいるのでは?多様性を重視する新しい価値観を持つ人もいるのでは?と考え調査をしました」
7月末に全国の15〜39歳男女600人を対象にオンラインで実施した、剃毛・脱毛に関する意識調査によると、「ファッションや髪型のように、剃ること(ヒゲ・体毛処理など)は自分自身で自由に決めたい」と答えた人は、90.2%に上ったといいます。
女性も男性も関係なく、体毛を「剃るのも剃らないのも自由」というメッセージを、シェイバーやカミソリを販売する会社だからこそ、発信しているといいます。
担当者は「勇気がいる発言ではありましたが、今回、このようなメッセージを発信しました」とし、「あくまできっかけを提供させて頂いて、議論がスタートすれば」と語ります。
ポスターのモデルは、バーチャルヒューマンのMEME(メメ)さん。
MEMEさんはCGで作られた架空のキャラクターです。「そばかすと、額と顎にやや目立つあざがあり、コンプレックスに感じているけど、それをポジティブに個性として捉える側面もある」といいます。
MEMEさんはInstagramなどでも発信していて、今回の広告については、Instagramにこんな思いを投稿しました。
「こうじゃなきゃいけない」がどんどん変わっていってる。当たり前のように剃ってた、けど、自分に気持ちいいようにすればいいじゃん。
海外だとふつーに生やしている人もいるけど、日本だと女子は剃らなきゃダメみたいな変なプレッシャーあるよね。毛まで愛してくれる人がいつか現れる
女性は「剃るべき」なの?調査で浮き彫りになった意識
貝印の担当者によると、同社は昨年初めごろからSNS上での意見などを中心に、体毛に関する若者の意識の変化について注視していたといいます。
7月に実施したオンラインでの意識調査では、「気分によって毛を剃っても剃らなくても良い」と答えた人も80.5%だった一方で、男性の体毛に対する意見と、女性の体毛に対する意見では、差異もありました。
「男性が体毛を処理しても良いと思いますか」という質問に対しては、女性は65.3%、男性は56.3%が「思う」と答えていました。
男女共に「思う」が半数を超え、「やや思う」を入れると男性が80%以上、女性が90%以上と、大半が男性の体毛処理に対して寛容的な意見だったといます。
一方で、「女性が体毛を処理しなくても良いと思いますか」という質問に対しては、男性の体毛への意見と比べて、厳しい意見が目立ちました。
女性で「思う」と答えた人は17.3%、男性で10.7%にとどまりました。「やや思う」を含めても男女共に、女性が体毛処理をしないことに関しては半数以上の人が否定的だったことがわかります。
また、男性の体毛処理に関しては、女性は寛容的な意見を持っていたのに対し、女性が体毛処理をしないことに対しては、男性は厳しい意見を持っていました。
この結果に対し、同社の担当者は「脱毛サロンなどの広告の影響や、SNSやYouTubeなどへの(脱毛に関する)広告により『ツルツルが美しい、正しい』といったメッセージが伝わっているのではないか」と指摘します。
YouTube上では、体型や体毛に関して卑下する内容の動画広告が散見され、これについては以前から問題が指摘されていました。
オンライン署名サイトChange.orgでは、このような動画広告に反対する署名が立ち上げられ、これまでに3万2千筆以上が集まりました。
貝印株式会社は今後も引き続き、体毛に関するメッセージの発信を検討していくとしています。